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2014年10月23日 (木)

「神様の裏の顔」藤崎翔

【内 容】

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神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。
享年六十八。教育者として自らの全てを捧げ、万人に慕われた神様のような男。
その通夜には、彼を慕う多くの人々が押し寄せ、悲しみの涙を流す。坪井の娘、晴美は、その様子をうちひしがれながら見つめていた。
坪井と不仲だった晴美の妹・友美、後輩教師でゴリラに似た初老の男・根岸、坪井の教え子で男盛りのアラフォー・斎木、不登校の過去を持つ今どきギャルの茉希、ご近所の元気なおばあさん・広子、そして坪井が大家をしていたアパートの住人でお笑い芸人の寺島。
通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙したーと思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり・・・。

聖職者か、それとも稀代の犯罪者か---驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

【感 想】

2014年度の横溝正史ミステリ大賞受賞作です。
作者は、元芸人(漫才師)で、2010年まで、「セーフティ番頭」というコンビで6年間お笑い芸人として活動していたそうで、コンビを解散後、創作を始めたと言うことです。

さて本書は、亡くなった元教師・坪井誠造の通夜に集まる7人の視点から、それぞれの思いが語られていきます。
まず感心したのが、この7人がキチンと書き分けられているし、しっかりとした文章なので、とても読みやすく、しかも面白く読めて楽しめました。全くの新人が書いた文章だとは思えませんでした。
気取った文章もなく、わかりやすい言葉で読みやすいし、ところどころに思わずクスリとなるような話も入っていて、好感の持てる内容でした。
このところ、クセのあるミステリばかり読んでいるからなのか、読んでいてホッとするような書きっぷりでした。

読みながら、「通夜振る舞い」の場から、控え室に移動した7人だけで話が展開していくので、映像にすれば面白いだろうなぁとふと思いましたが、最後のトリックのところでは、映像化はちょっと難しそうな感じがしました。

ただ、この話の持って行きどころとしては、良くありそうな話なので、それほど驚くことはないのですが、テンポ良く書かれて居るし、どうしても故人の生前の話に気持ちが行ってしまうので、最後のトリックを上手く使っているのではないかと思います。

ちょっと脱線しますが、「通夜振る舞い」に、一般の会葬者も参加するというところは、関西ではあまり見かけませんので、これは関東での慣習なんでしょうか?
親族が少ないので、一般の方にも・・・と言うことなので、流れとしてはそれほど違和感がありませんでしたが、チョット気になりました。

また、賞に「横溝正史」の名前が入っているので、そのようなミステリを期待してしまいますが、そういう意味では、少し物足りなさを感じました。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

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