2016年1月1日になりました。
明けまして おめでとうございます。
本年も、よろしくお願いします。
昨日の「映画の部」に続き、私が選んだ2015年度「年間ベストテン・ミステリの部」を発表します。
このベストテンは、2014年12月から2015年11月末までに刊行された(広義の意味での)ミステリの新作が選出の対象です。
なお、下線があるのは私のBlog記事にリンクしています。感想等が書いてありますので、一読してみてください。
① 「赤い博物館」大山誠一郎
本書を読んだときには、この作品は今年度の(私が選ぶベストテンの)ベスト3には入ってくるだろうと思って居ましたが、それ以降に、気に入った長編ミステリがあれば、それを1位にして、本書は2位か3位ぐらいに・・・と考えて居ました。
ところが、さほど感心する長編にも巡り会えなかったと言う事で、今年度の1位になったと言うわけです。
警察小説と言う事ですが、そう思って手に取るとがっかりされるかも知れませんが、是非読んでみてください。
② 「中野のお父さん」北村薫
「安楽椅子探偵」ものですが、事件を扱うのではなく、ちょっとした「日常の謎」を解決するという話になっています。
何でも無い普通の話から、その世界が広がっていくというのは、読んで居ても楽しいです。
出版社につとめる女性の視点で書かれている話で、毎回、彼女の父親に謎を持ち込むというパターンなのですが、いつの間にか父親に感情移入してしまいました。
この本は、表紙の絵がイマイチ好きになれませんでした。
③ 「化石少女」麻耶雄嵩
一昨年あたりから、この作者の本を読み返しています。
以前は、肌に合わないところもありましたが、最近は興味深く読めるようになりました。
本書は、京都にある高校で続発する凄惨な殺人事件を扱った話で、探偵役として、化石オタクというユニークな女子高生が登場しますが、なかなか一筋縄で解決しないところが面白いところです。
最初から、この話は最終話にどんな仕掛けが待って居て、どう展開していくのかと楽しみながら読んで居ましたが、期待通りの展開でした。
④ 「さよならは明日の約束」西澤保彦
ミステリとしては、さほど良く出来た話では無いと思いますが、この話の世界観が好きです。
ミステリ好きの高校生が、祖父母の時代の話を推理したり、本棚に囲まれたコーヒーショップが登場してきたりと、楽しませてくれます。
若い方が読めばさほど面白くないのかも知れませんが、シニア世代の青春小説と言った所ではないでしょうか?
タイトルの意味もよくわからないまま読み始めていきましたが、私にとっては、ちょっと素敵な話でした。
⑤ 「謎解き広報課」天祢涼
田舎の役場に就職した都会育ちの女性が、広報を編集する部署に配属されたということで、街に出て、記事を集めに行くところで出くわす謎を解いていくと言う連作短編集です。
それ程面白い話ではないとは思いますが、かつて自分自身が「通信」などと言うものを、しこしこ作っていた時期があったので、共感するところも多々ありました。
各話はちょっとバタバタした感じですすみ、最終話に、それまでの総括のような話が登場して、なんとかまとまった感じはしますが、あまりオススメできる本ではないです。
でも、なぜか気に入って居る作品です。
⑥ 「忘却探偵シリーズ」西尾維新
初登場となる「掟上今日子の備忘録」は去年(2014年)出版されましたが、今年度になって立て続けに、「掟上今日子の推薦文」「掟上今日子の挑戦状」「掟上今日子の遺言書」と出版され、原作にほぼ忠実にテレビドラマ化されたのも楽しんでみていました。
12月に新作・「掟上今日子の退職願」が出版されました。持っては居ますが、未だ読んで居ません。どうやらこれでこのシリーズも終わるのかと言う感じがするのですが・・・。
ちなみに、シリーズの中では、「備忘録」と「遺言状」で語り部となって居る「隠館厄介」のキャラクターが気に入って居ます。
⑦ 「柳生十兵衛秘剣考 水月之抄」高井忍
男装の女剣士・毛利玄達と柳生十兵衛が、語り伝えられている剣豪の逸話についての謎に取り組むという、ちょっと面白いミステリです。
二人の掛け合いもなかなか面白いので、剣豪のことを知らなくっても十分楽しめますし、剣術小説として読んでも、興味深い話です。
柳生十兵衛についても、今では伝説となっているいろんな事も、作者なりに解釈して、二人に語らせているのも興味深い所です。
ちなみに、本書は「柳生十兵衛秘剣考」の続編になって居ますので、剣豪の逸話などに興味がある方は、合わせて読まれると面白いと思います。
⑧ 「夕暮れ密室」村崎友
長編ミステリです。本作は、著者のデビュー前の作品で、第23回横溝正史ミステリ大賞で、惜しくも受賞を逃したミステリです。
ちなみに、この年は「受賞作なし」という事でしたが、翌年、「風の歌、星の口笛」で第24回横溝正史ミステリ大賞を受賞され、デビューされました。
話の展開としては、気になる所も多々ありますが、それでも、章を追って、同じ場面がいろんな生徒の目から再現されて語られていく構成は面白かったし、高校生たちの人間関係や学校生活の様子などは良く書けているのじゃないかと思います。
⑨ 「メビウスの守護者 法医昆虫学捜査官」」川瀬七緒
本書は、法医昆虫学を題材としたミステリ・「法医昆虫学捜査官シリーズ」の第4作になります。
新刊のモニターに応募したところ、プルーク版が送られてきたので、一足先に読ませていただきました。
4作目とも成ると、ハエや蛆の幼虫の様子にも慣れてきたのか、そういう描写にも気持ちが悪くなくなり、引いてしまうことも無く、面白く読めました。
最後には、意外な犯人も用意されていて、良く出来た作品だと思いますが、謎の部分がすべて解明出来ないまま終わってしまったのは、ちょっと残念でした。
⑩ 「サナキの森 」彩藤アザミ
第一回の「新潮ミステリ-大賞」の受賞作です。
まず、冒頭から驚かされました。
旧仮名遣いで書かれたホラー小説ような章(しかも最終章)に、思わず引きつけられてしまいました。
二つの異なった文体を、上手くかき分けているのは、新人とは思えない筆力だと感心してしまいました。
しかも、良く出来た密室が登場します。
怪奇ミステリのような話の流れですが、読後感は爽やかでした。
【特別賞】 =こちらは、ミステリ以外の作品を・・・=
「蓮花の契り 出世花」高田郁
高田郁さんの第1作目・「出世花」の続編・完結編です。
「三昧聖(ざんまいひじり)」としてその湯灌場に立ち、死者の無念や心残りを取り除くように、優しい手で亡骸を洗い清めることを、これからの人生の生業とすると決意した、お縁さんの話です。
ずいぶん前に一作目を読んで、待ちに待った二作目が完結編だというのは、ちょっと残念ですが、十分楽しませていただきましたが、年を取ったからなのか、涙無くしては読めませんでした。
興味を持たれた方は、第一作目の「出世花」から読んでみてください。
「短歌しましょ」高橋悦子
自費出版された短歌の本です。
出版されたすぐ後に、メールで購入する旨を伝えたところ、ご丁寧に一冊贈呈していただきました。今ではAmazonや楽天、hontoなどのネットストアでも購入出来ますので、興味のある方は読んでみてください。
真っ白な紙・1ページに、一首または一句ずつ書かれていますが、読んでいると、いろんなカラーが鮮やかに浮かんで来ますし、詠まれた情景が脳裏に浮かんでくる様な感じがします。難しい言葉を使わず、わかりやすい言葉で書かれているのも良いのでは無いでしょうか?
短歌・俳句の入門書にぴったりです。
=ワースト=
「ラプラスの魔女」東野圭吾
これまでこの著者の作品は、何か一冊は毎年ベストテンに入って居ました。しかし、今年度は単行本が二冊出版されましたが、どちらも入って来ませんでした。
その上、本書は久々に落胆した作品です。
話はそれなりに面白いのですが、視点がたくさんあって、読んで居て疲れてしまいました。
テレビドラマにでもしたら、面白いのかも知れませんが、視点がたくさんある話は、誰に感情移入して良いのかわからないので、読みにくいですね。
「王とサーカス」 米澤穂信
購入した当時、一度読みかけて、三分の一ほどのところで辞めてしまいました。でも、12月になって、各紙のベストテンで上位(1位~3位)に入っていたので、頑張って再度読み直しました。
後半部分からは、それなりに面白くなってきたので、なんとか読み終えましたが、私としてはこの本はオススメできません。
「ためしに図書館で借りてきて読めば・・・」とは言うかも知れませんが、普段ミステリを読まない人に、本書(1836円)を購入してまで読んでみて・・・とは言えないですね。
【総 括】
今年度も、残念ながら長編にオススメできるような本があまりありませんでした。
この数年、ライトノベル的な本の出版がふえ、よく知らない新人作家の本を、店頭で見かけることが多くなりました。時々手に取るのですが、イマイチ面白くありません。
そんな事もあって、知らない作家の本を購入することが少なくなりました。
私のベストテンで、各誌のベストテンに入って居るのは、「赤い博物館」の一冊だけでした。
たまたま、三誌でベスト1となって居る「王とサーカス」は購入して居ましたが、途中で挫折してしまい、読みかけのまま積んでありました。
つい最近になって読み終えた今でも、なぜこの本に票が入るのかがナットクできません。
このようなベストテンに票を投じている方々は、おそらく自分のサイフから、お金を出して本を購入して居ない人ばかりなのだろうと、毎年のように思ってしまいます。
一冊が2000円前後と、高くなった単行本を購入する以上は、せめてその価格分だけでも楽しみたいと思うのですが、一般読者が楽しめないような本が各誌のベストテンを占めているような気がして成りません。
この調子では、ますます本を購入して読む人が少なくなってしまいそうですし、私にしても、新刊での購入を見送って、文庫待ちにする本が増えそうです。
それにしても、単行本って、ホントに高く感じますね・・・。
私が選んだ、2014年度の「年間ベストテン・ミステリの部」はこちらを見てください。
=1月8日追加=
eoblog 「みんなのブログ 本」で・・・(Part71)
Blog記事ランキングおよびブログランキングで、「2015年度 『年間ベストテン・ミステリの部』」が、「本の部」の一位になりました。
たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。
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