映画のパンフレット

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2016年11月

2016年11月 3日 (木)

「虹を待つ彼女」逸木裕

【内 容】

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2020年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。

そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。
試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。
彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。
やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。
晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくがー。

【感 想】

第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品です。
表紙の絵が、何とも言えないほど良い感じです。裏表紙も良いですね。
ミステリと言うよりは、甘い恋愛小説をイメージさせる表紙になって居ますが、手に取られた方は、帯を取って、裏もしっかり見て欲しいと思います。

さて、本書ですが、いくつかのエピソードが書かれていますが、それがラストにどう繋がって行くのかがわからないまま終わってしまいました。
話としては面白いのですが、なにか取って付けたようなエピソードになって居ます。

また、舞台が2020年という、近未来に設定されていますが、数年後という近未来を話の舞台に設定する理由がイマイチわかりませんでした。
「現在(いま)」と言う事でも、全然違和感が無いような気がしました。

一つのエピソードとして、囲碁のプロと人工知能との対決という場面が登場します。
人工知能については、グーグルが開発した囲碁ソフトが韓国のプロ棋士に勝つなど、チェスや将棋の世界でも、人工知能がその道の最高峰の人間に勝利すると言う時代になってきました。
これからは逆に、人工知能を使ったトレーニングで、人間の能力を高めていくというような、共存の時代になっていくと思うのですが、それにしても、最新の人工知能に囲碁で勝てる棋士って、2020年にはホントに現れるのでしょうか?

本書では、この人工知能についての解説があり、中盤にサスペンス風の展開になり、最後には恋愛小説になってしまうという感じの流れです。
「横溝正史ミステリ大賞」を受賞したと言う冠を考えると、肩すかしを食いそうです。

いろんな人の書評を読むと、本書はそれなりに評判が良さそうですが、ミステリとしてはいろんな疑問点が残ってしまい、未消化の部分が多いような気がします。
まぁ、退屈しないで読めたのは良かったですが、人間と人工知能の恋愛物と考えれば良いのかも知れないですね。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年11月 2日 (水)

「パレードの明暗 座間味くんの推理」石持浅海

【内 容】

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警視庁の女性特別機動隊に所属し、羽田空港の保安検査場に勤務する南谷結月は、日々の仕事に不満を感じていた。
身体を張って国民を護るのが、警察官として最も崇高な使命だ。
なのにー。
そんな不満と視野の狭さに気付いた上官から、結月はある飲み会に同席するように言われる。行ってみた先に待っていたのは、雲の上の人である大迫警視長と、その友人の民間人・座間味(ざまみ)くんだった。
盟友・大迫警視長の語る事件の概要から、隠れた真相を暴き出す!
名探偵・座間味くんの推理を堪能できる傑作集!

【目 次】

「女性警察官の嗅覚」
「少女のために」
「パレードの明暗」
「アトリエのある家」
「お見合い大作戦」
「キルト地のバッグ」
「F1に乗ったレミング」

【感 想】

「座間味くん」が登場する短編集で、「心臓と左手」「玩具店の英雄」に続き、3冊目になります。
読む時間が、ぶつ切りになるので、このところ短編集が多くなっています(笑)

ちなみに、座間味くんと言うのは、「月の扉」(作者の2作目の長編)に登場する人物で、2003年に沖縄・那覇空港で起きたハイジャック事件に関わったと言う事で、本書の「女性警察官の嗅覚」によると、警視庁内では伝説の人物になって居るということです。

全話とも、その回で話題となる事件のプロローグから始まり、その後、南谷結月(みなみや ゆづき)巡査の視点での話しに移ります。
毎回、大迫警視長と民間人の座間味くんとの飲み会(食事会)の中で、その事件についての説明が大迫警視長より話なされると言う流れです。

話される事件は、すでに解決した事件なのですが、ちょっと見方を変えれば、こう言うような解釈が出来るのではという提案が、毎回座間味くんから出てきます。
それが真相なのかどうかはわかりませんが、座間味くんの解釈の方が、いかにも本当らしいので、読みながら思わず頷いてしまいます。

毎話、同じパターンで話が進んでいきますので、大変読みやすいですし、毎回違った料理が登場してくると言うのも良いですね。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

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