映画のパンフレット

2016年11月 3日 (木)

「虹を待つ彼女」逸木裕

【内 容】

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2020年、人工知能と恋愛ができる人気アプリに携わる有能な研究者の工藤は、優秀さゆえに予想できてしまう自らの限界に虚しさを覚えていた。

そんな折、死者を人工知能化するプロジェクトに参加する。
試作品のモデルに選ばれたのは、カルト的な人気を持つ美貌のゲームクリエイター、水科晴。
彼女は六年前、自作した“ゾンビを撃ち殺す”オンラインゲームとドローンを連携させて渋谷を混乱に陥れ、最後には自らを標的にして自殺を遂げていた。
晴について調べるうち、彼女の人格に共鳴し、次第に惹かれていく工藤。
やがて彼女に“雨”と呼ばれる恋人がいたことを突き止めるが、何者からか「調査を止めなければ殺す」という脅迫を受ける。
晴の遺した未発表のゲームの中に彼女へと迫るヒントを見つけ、人工知能は完成に近づいていくがー。

【感 想】

第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品です。
表紙の絵が、何とも言えないほど良い感じです。裏表紙も良いですね。
ミステリと言うよりは、甘い恋愛小説をイメージさせる表紙になって居ますが、手に取られた方は、帯を取って、裏もしっかり見て欲しいと思います。

さて、本書ですが、いくつかのエピソードが書かれていますが、それがラストにどう繋がって行くのかがわからないまま終わってしまいました。
話としては面白いのですが、なにか取って付けたようなエピソードになって居ます。

また、舞台が2020年という、近未来に設定されていますが、数年後という近未来を話の舞台に設定する理由がイマイチわかりませんでした。
「現在(いま)」と言う事でも、全然違和感が無いような気がしました。

一つのエピソードとして、囲碁のプロと人工知能との対決という場面が登場します。
人工知能については、グーグルが開発した囲碁ソフトが韓国のプロ棋士に勝つなど、チェスや将棋の世界でも、人工知能がその道の最高峰の人間に勝利すると言う時代になってきました。
これからは逆に、人工知能を使ったトレーニングで、人間の能力を高めていくというような、共存の時代になっていくと思うのですが、それにしても、最新の人工知能に囲碁で勝てる棋士って、2020年にはホントに現れるのでしょうか?

本書では、この人工知能についての解説があり、中盤にサスペンス風の展開になり、最後には恋愛小説になってしまうという感じの流れです。
「横溝正史ミステリ大賞」を受賞したと言う冠を考えると、肩すかしを食いそうです。

いろんな人の書評を読むと、本書はそれなりに評判が良さそうですが、ミステリとしてはいろんな疑問点が残ってしまい、未消化の部分が多いような気がします。
まぁ、退屈しないで読めたのは良かったですが、人間と人工知能の恋愛物と考えれば良いのかも知れないですね。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年11月 2日 (水)

「パレードの明暗 座間味くんの推理」石持浅海

【内 容】

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警視庁の女性特別機動隊に所属し、羽田空港の保安検査場に勤務する南谷結月は、日々の仕事に不満を感じていた。
身体を張って国民を護るのが、警察官として最も崇高な使命だ。
なのにー。
そんな不満と視野の狭さに気付いた上官から、結月はある飲み会に同席するように言われる。行ってみた先に待っていたのは、雲の上の人である大迫警視長と、その友人の民間人・座間味(ざまみ)くんだった。
盟友・大迫警視長の語る事件の概要から、隠れた真相を暴き出す!
名探偵・座間味くんの推理を堪能できる傑作集!

【目 次】

「女性警察官の嗅覚」
「少女のために」
「パレードの明暗」
「アトリエのある家」
「お見合い大作戦」
「キルト地のバッグ」
「F1に乗ったレミング」

【感 想】

「座間味くん」が登場する短編集で、「心臓と左手」「玩具店の英雄」に続き、3冊目になります。
読む時間が、ぶつ切りになるので、このところ短編集が多くなっています(笑)

ちなみに、座間味くんと言うのは、「月の扉」(作者の2作目の長編)に登場する人物で、2003年に沖縄・那覇空港で起きたハイジャック事件に関わったと言う事で、本書の「女性警察官の嗅覚」によると、警視庁内では伝説の人物になって居るということです。

全話とも、その回で話題となる事件のプロローグから始まり、その後、南谷結月(みなみや ゆづき)巡査の視点での話しに移ります。
毎回、大迫警視長と民間人の座間味くんとの飲み会(食事会)の中で、その事件についての説明が大迫警視長より話なされると言う流れです。

話される事件は、すでに解決した事件なのですが、ちょっと見方を変えれば、こう言うような解釈が出来るのではという提案が、毎回座間味くんから出てきます。
それが真相なのかどうかはわかりませんが、座間味くんの解釈の方が、いかにも本当らしいので、読みながら思わず頷いてしまいます。

毎話、同じパターンで話が進んでいきますので、大変読みやすいですし、毎回違った料理が登場してくると言うのも良いですね。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年10月25日 (火)

「探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて」東川篤哉

【内 容】

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名探偵は小学生!?

就職先のスーパーを誤発注した大量のオイルサーディーンとともにクビになり、地元で「なんでも屋タチバナ」を始めた、俺、橘良太。

31歳、独身、趣味はナシ、特技は寝ること。
そんな平凡な三十男の俺にある日、子守り依頼が舞い込んだ。
報酬につられて出かけた豪邸で待ちかまえていたのは、ロリータ服の美少女。
わずか十歳にして自らを探偵と信じる無垢で無謀な少女、綾羅木有紗(あやらぎ ありさ)だった・・・。

「ねぇ、おじさん、あたしのこと、ナメてんじゃないの?」
なんでも屋の良太の前に現れた、探偵を名乗る十歳の美少女・有紗。
有紗に殺人鬼の濡れ衣を着せられた良太は、事件を一緒に調べることになって・・・・・・(第1話)。

天才探偵少女とヘタレ三十男の迷コンビが難事件に挑む、
東川篤哉、最新ユーモア・ミステリ!

【感 想】

全4話の連作短編集です。
神奈川県川崎市にある街・溝ノ口と、その周辺で起きる事件の話なので、関西在住の私としては、地図(路線図)とにらめっこしながら読みました(笑)

第1話「名探偵、溝ノ口に現る」
「なんでも屋タチバナ」を始めた、橘良太の視点で書かれています。
彼が絵の(全裸)モデルをして居る間に、その画家の父親が殺されていると言う事件に遭遇します。
第1話では、「なんでも屋」を始めたいきさつと、両親が共に名探偵という10歳の少女・アリサとの出会いが書かれていますが、両親同様、アリサもまた名探偵だったと言う話です。
アリサと橘良太の掛け合いも、楽しく読みました。

第2話「名探偵、南武線に迷う」
特に路線図とにらめっこをしながら読んだ話です。
「はじめてのお使い」に駆り出されたアリサが、父から頼まれた物を届けた相手が、駅前で起きた殺人事件の容疑者という話です。
電車の時間トリックが登場しますが、地元の者で無いとわからないのではと思われるトリックでした(笑)

第3話「名探偵、お屋敷で張り込む」
良太とアリサが監視している離れの部屋の中での事件で、誰も出入りはしていないと言う事で、密室殺人か・・・という騒ぎになります。
トリックとしては、良くある話なのですが、この連作短編の中では、良く出来ていると思います。

第4話「名探偵、球場で足跡を探す」
良太が町内会の野球に参加して、ヒンシュクをかってしまいますが、その後、再戦となった野球のグランドで起こった事件です。
大胆すぎるトリックは、少々いただけませんが、ルートを使ったややこしい計算が出てくるのには驚きました(笑)が、ちょっとおかしな計算でした。
作者は、野球については詳しくないのかも知れません。

新シリーズになりそうな連作短編集でした。久しぶりに楽しめました。
古典ミステリの事なども、チラリと登場してくるので、そういうことも知っていないとユーモアミステリは楽しめないようですね。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年10月14日 (金)

ハドソン川の奇跡

【解 説】

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2009年に起こり、奇跡的な生還劇として知られるUSエアウェイズ1549便不時着水事故、通称“ハドソン川の奇跡”と、その後の知られざる真実を映画化。

原題の“Sully”(サリー)とは、USエアウェイズ1549便の機長チェスリー・サレンバーガーのニックネーム。
監督のクリント・イーストウッドは本作の撮影のため、本物のエアバスを購入、さらに救助ボートも実際の救助に使用されたものを使い、オペレーターも同じスタッフを動員、救助隊やボランティア、警察官、ニュースキャスターやパイロットなど、救出に携わった当時の関係者を本人役で多数出演させ、事故を徹底的にリアルに再現した。
イーストウッド作品では初のIMAXカメラを使用して撮影されていて、ほぼ全編がARRI ALEXA 65で撮影された。
トム・ハンクスが「キャプテン」の役を演じるのは『プライベート・ライアン』のキャプテン(大尉)ジョン・H・ミラー、『キャプテン・フィリップス』のキャプテン(船長)リチャード・フィリップスに続いて3度目である。

【あらすじ】

2009年1月15日、USエアウェイズ1549便がニューヨーク・マンハッタンの上空850メートルを飛行中、バードストライクによって全エンジンが停止、コントロールを失う。

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機長のチェスリー・サレンバーガーは必死のコントロールと苦渋の決断の末、ハドソン川に機体を不時着させる。

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その結果、1人の犠牲者も出さず、この奇跡的な生還劇は“ハドソン川の奇跡”として全世界に報道された。

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物語は事故から数日たった所から始まる。

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サレンバーガーは世間から国民的英雄として賞賛されていたが、事故の影響で市街地への墜落という悪夢を見るようになっていた。

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そして、国家運輸安全委員会(NTSB)によって事故原因の調査が行われ、その過程でサレンバーガーの判断が適切であったかどうか、また、左エンジンは本当は動いていたのではないかという検証をされることとなり、彼はNTSBからこの一件について追及を受ける。

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その際告げられた情報によって自身の判断が正しかったのかという不安に苛まれ、今までの人生やあの日を回想する日々を送るようになる。

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そして、検証の最終段階でもある公聴会の日が訪れる。

【感 想】

本物のエアバスを購入したり、救助ボートも実際の救助に使用されたものを使ったり、オペレーターも同じスタッフを動員、救助隊やボランティア、警察官、ニュースキャスターやパイロットなど、救出に携わった当時の関係者を本人役で多数出演させる等々・・・という、手が混んだ制作に脱帽です。これだけでも、見応えがありました。すごい映画ですね。

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映画を観る前は・・・。
ハドソン川に機体を不時着させ、一人の犠牲者も出さなかったこの奇跡的な生還劇は「ハドソン川の奇跡」として全世界に報道され、国民的英雄になったサレンバーガー機長の話は知っていました。
その後、本当に不時着以外の選択肢はなかったのか?
それは乗客たちを命の危機にさらす無茶な判断ではなかったのか?と言った、“機長の究極の決断”に思わぬ疑惑が掛けられてしまい、英雄から一転、一夜にして容疑者になってしまいます。

その後、国家運輸安全委員会(NTSB)による事故原因の調査が始まり、容疑者として追い詰められますが、最終的には、機長の判断が正しかったのだ・・・と、この映画を観る前は、そんな内容の映画だと思って居ました。

でも、映画の邦題である「ハドソン川の奇跡」というタイトルに、惑わされていたのだとわかったのは、原題が“Sully”(サリー)だと知ったときです。
原題の“Sully”とは、USエアウェイズ1549便の機長チェスリー・サレンバーガーのニックネームです。
映画を観ていて、もう一つ間違っていたのは、事故原因の調査が始まり、機長の判断はどうだったのかという事が国家運輸安全委員会で問われていても、巷(ちまた)では、機長のサリーは、容疑者では無く、常に「英雄」だったということです。

映画では、複葉機で飛行訓練をしている機長の、若い頃のエピソードも挿入されていますが、国家運輸安全委員会が開催され居る間の、機長の日常をしつこく描いています。
審議が続く間は、ホテル住まいとなり、眠れない夜は、一人でバーに出かけたり、時には副機長とランニング。
ビルの窓から外を見ていると、旅客機がビルに激突していく幻影が、何度も浮かんできます。
あの瞬間の自分の判断は、間違っていたのだろうか・・・。

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監督・クリント・イーストウッドが作りたかった映画は、あの事件の状況を伝えるだけの再現ドラマでは無く、機長チェスリー・サレンバーガー自身が、その時の判断は、本当に正しかったのかと、自問自答しながらの苦悩の日々を送っていたのだという、そこに焦点を当てた、人間を描いた映画を作りたかったのだと気がつきました。

観終わって、緊急事態の中、わずか数秒で飛行場への帰還を断念し、危険を伴うハドソン川への着水を決断しますが、水平な状態で着水するという高度な操作技術で、155名の乗客全員の命を救った(機長の)サリーに、拍手を送らずには居られませんでした。

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【キャスト】

チェスリー・"サリー"・サレンバーガー - トム・ハンクス
ジェフ・スカイルズ - アーロン・エッカート: USエアウェイズ1549便副機長
ローリー・サレンバーガー - ローラ・リニー: サリーの妻
チャールズ・ポーター - マイク・オマリー(英語版): 国家運輸安全委員会の調査員
ベン・エドワーズ - ジェイミー・シェリダン: 国家運輸安全委員会の調査員
エリザベス・デイヴィス - アンナ・ガン: 国家運輸安全委員会の調査員
マイク・クリアリー - ホルト・マッキャラニー: サリーの同僚
本人役 - ケイティ・クーリック: サリーにインタビューするニュースキャスター
クック大尉 - ジェフ・コーバー: 青年期のサリーの教官
シーラ・デイル - ジェーン・ガバート: 事故機 客室乗務員
ドナ・デント - アン・キューザック: 事故機 客室乗務員
ダイアン・ヒギンズ - ヴァレリー・マハフェイ: 事故機 乗客、ルシールの娘
ルシール・パルマー - デルフィ・ハリントン: 事故機 乗客、ダイアンの母
ジミー・ステファニク - マックス・アドラー: 事故機 乗客、ロブの甥
ジェフ・コロジェイ - サム・ハンティントン: 事故機 乗客、ロブの息子
ジム・ウィテカー - クーパー・ソーントン: 事故機 乗客
赤子を連れた乗客 - オータム・リーザー: 事故機 乗客
バリー・レオナルド - ジェフリー・ノードリング: 事故機 乗客
パトリック・ハーテン - パッチ・ダラー: 航空管制官
ピート - マイケル・ラパポート: バーテンダー
本人役 - ヴィンセント・ロンバーティ: 通勤フェリー船長11

【スタッフ】

監督 クリント・イーストウッド
脚本 トッド・コマーニキ
原作 チェスリー・サレンバーガー
撮影 トム・スターン
編集 ブル・マーリー
配給 ワーナー・ブラザース
上映時間 96分
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=10月16日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part32)

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Blogランキングで、「ハドソン川の奇跡」が、「映画の部」の一位になりました

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

2016年10月13日 (木)

「危険なビーナス」東野圭吾

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【内 容】

弟が失踪した。
彼の妻・楓(かえで)は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。

楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である夫の家族に近づく。
兄である伯朗(はくろう)は楓に頼まれ協力するが、時が経てばたつほど彼女に惹かれていく。

【感 想】

久々の東野圭吾さんの新作です。
前作の「人魚の眠る家」は、未だに、「つん読」状態です(笑)

ところで・・・、
上記の【内容】は、発行店のHPに本書の紹介として書かれていた文章なのですが、これを読んだとき、(主人公の)伯朗と、弟の妻・楓との間に、なにやら変な関係が出来てしまうのでは・・・と勘ぐってしまいますが、そういう話ではありませんでした。

ということで、ネタバレに気をつけながら、少しあらすじも書いてみたいと思います。

池田動物病院の院長代理・手島伯朗(てじま はくろう)の視点で話が進んでいきますので、とても読み易く、その気になれば一日で読めてしまいそうです。

伯朗の父は、彼が幼いころに亡くなっており、父の死後、母は、資産家の御曹司であり、医者の矢神康治という男性と再婚します。
その再婚相手との間に出来た子どもが、弟の“明人”で、ある日突然、「(伯朗の弟の)明人の妻だ」と名乗る女性・楓(かえで)が、伯郎のまえに登場することから話が始まります。

父・康治が危篤であると聞いた明人と楓は、アメリカのシアトルから日本に帰国しますが、帰国後すぐに明人が失踪したということで、(義兄の)伯郎に相談しに来た・・・と言う事です。

母の死後、伯郎は、矢神家の人たちや弟の明人とは疎遠状態になって居たので、明人が結婚していたことを知らされていなくても、違和感は感じなかったようです。
楓の話によると、明人は母の死に疑問を持っていて、矢神家には気をつけるようにと言って居たと言うことですが、伯郎は、楓から、明人の失踪について一緒に調べて欲しいと頼まれます。
父・康治の見舞いに行き、矢神家の遺産相続の話し合いの場に参加させられていくうちに、少しずつ矢神家と父・康治に関する驚くべき事実が次々と明らかになっていきます。

でも、弟・明人の「失踪のヒミツ」と言う事が、前半の焦点になっていたはずなのに、途中から、伯郎の母の死についての謎や、伯郎の父の死についての経過などが明らかになっていきますが、いったい何がこの話の焦点なのかがよくわからない流れになっていきます。

伯郎が、動物病院勤務なので、動物病院内での治療の様子や看護師との会話などが時々出てきますが、その部分が結構楽しかった割には、本筋の話はイマイチでした。
また、ラストのどんでん返しは、ちょっとズッコケる感じの結末でした。

でも、看護師の女性が指摘したように、「女性に惚れっぽい」伯郎の心境などは面白かったので、複雑な家庭環境を背景に持って来て、込み入った話にしなくても良かったのではないでしょうか。
私的には、伯郎の義妹・楓よりも、看護師の女性が魅力的だったので、この話にどう関わってくるのかと興味を持っていたのですが・・・。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年10月 9日 (日)

50万アクセスを越えました・・・

★★☆☆ 50万アクセス達成です ★★☆☆
      ~\(^-^)/バンザーイ./( )\モヒトツ\(^o^)/バンザーイ

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2016年10月8日の午後8時30分頃に、50万アクセスを越えました。
2011年6月1日に、このブログを始めてから 5年4ヶ月目です。

【経 過】

HP「雨降りだからミステリでも読もう・・・」の一部として、読んだ本の感想を書いたBlog「気まぐれ日記」を、2010年の6月1日から始めました。
2010年6月1日から2011年5月31日までの一年間のHPへの訪問者は、5000カウントを少し越えた数でした。

2011年の6月1日に、Blog「気まぐれ日記」の部分をこのeo-blogに移行しました。
当初は、HP「雨降りだからミステリでも読もう・・・」とBlog「気まぐれ日記」の2本立てでしたが、始めてから5ヶ月ほどで、Blogの方が10000カウントを越えたと言うこともあって、12月よりHPの方を閉鎖し、eo-blogに一本化して、Blogのタイトルを「雨降りだからミステリでも読もう・・・」としました。

移行後、    
   10000カウント・・・2011年6月1日~10月31日(152日)    
   20000カウント・・・          ~2012年1月4日(152日+65日=217日)    
   30000カウント・・・          ~2012年2月20日(217日+47日=264日)    40000カウント・・・          ~2012年4月4日(264日+44日=308日)    
   50000カウント・・・          ~2012年5月31日(308日+57日=365日) 
  100000カウント・・・           ~2013年1月19日(365日+233日=598日)
  200000カウント・・・          ~2013年12月20日(598日+335日=933日)
  300000カウント・・・          ~2014年10月25日(933日+309日=1242日)
    400000カウント・・・          ~2015年9月5日(1242日+315日=1557日)
    500000カウント・・・          ~2016年10月8日(1557日+399日=1956日)

=これまでに書いたBlog記事とコメントの数=

★ Blog記事の数・・・779本 この記事が、780本目です。
★ コメントの数・・・・1914件

1914件のコメントの数のうち、半分は私が書いた返信ですから、いただいたコメントは957件になります。

でも、このカウントが多いのか少ないのかは別にして、この5年5ヶ月で、たくさんの方にお越しいただいたなぁ・・・と驚いています。

このBlogをブックマークしていただいているのは、私を知っているほんの数人だけでしょうし、おそらく、95%以上の方が、通りすがりの方だと思います。

本当にたくさんの方にお越し頂き、あらためて感謝です。
特に今年は、私の周りでいろんな事があって、延べ六ヶ月ほど更新できない時期がありました。まだ、これまでのように、記事のUPが軌道に乗ったとは言えませんが、これまで通りに続けていきたいと思います。

今後とも、ヨロシクお願いしますm(_ _)m
ミステリを読まれて、自分の感想と照らし合わせるなり、購入の参考にしていただけると有り難いです。 

=10月12日追加=

eoblog 「みんなのブログ 本」で・・・(Part73)

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eoblogの記事ランキングで、「50万アクセスを越えました・・・」が、「本の部」の一位になりました。

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

2016年9月28日 (水)

「黒面の狐」三津田信三

【内 容】

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あの真っ暗闇の奥から、
何かが私を凝っと覗いている。
戦後まもない北九州の炭鉱で起きた、不可解な連続怪死事件。

主人公の物理波矢多(もとろい・はやた)は満洲の建国大学から日本に帰国し、足の向くままに北九州の炭鉱で炭坑夫となって働き始める。
そこで、同室の合里光範(あいざと・みのる)が落盤事故で坑道に取り残されたのを皮切りに、炭坑夫が次々と自室で注連縄で首を括るという、不気味な連続怪死事件に遭遇する。
その現場からはいつも、黒い狐の面をかぶった人影が立ち去るのが目撃され・・・。

現場に現れた黒面の狐は、人なのか、人にあらざるものなのか?炭鉱で働く屈強な男たちの心を、次第に疑いと恐怖が蝕んでいく。
真相を知るのはただ、ヤマの神と、黒面の狐のみ…?

細密な炭坑の描写の中から、じわじわと迫ってくる恐怖と連続する密室殺人の謎。
本格ミステリとホラーの魅力を併せ持った重厚な力作書下ろし長篇。

【感 想】

刀城言耶シリーズのような、ホラーとミステリの融合なのかと思いながら読んでいきましたが、本格ミステリでした。
主人公の物理波矢多(もとろい・はやた)が、探偵とワトソン役(物語の語り部)の両方を演じているので、推理の筋道がわかりやすく、一緒に謎解きを楽しめました。

戦後すぐの炭鉱を舞台にした話なのですが、戦中・戦後における、日本と朝鮮との関わりが、作者の視点で書かれおり、その点でも興味を持って読みました。
読まれる人によっては、作者の視点に異を唱える人も居るのではないかとは思いますが、私はほぼその通りだと思いながら読みました。

戦争中に、朝鮮人が日本の炭鉱という閉鎖的な場所で、どういう扱いをされていたのか、そしてそのことが、この本の舞台である炭鉱で起きた連続殺人に、どう繋がって行くのか・・・。
最後には、ちょっと驚きの結末が待って居て、息もつかせないまま読了しました。

最終章で、物理波矢多が犯人を指摘するところは、推理が二転三転するという、刀城言耶を主人公とするシリーズでよく見られるパターンと同じでしたので、それなりに楽しめました。
連続殺人が起こり、密室が登場し、もう一つ、良くミステリで登場するトリックが使われ、最後にはどんでん返しが・・・となれば、面白く無いはずがありません。

おそらく、私が毎年作っているベストテンの、今年度のベストスリーに入るだろうと思われる作品でした。

☆☆☆☆★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

ところで・・・、
刀城言耶シリーズが、2012年の「幽女の如き怨むもの」を最後に、4年も書かれていません。
刀城言耶も待ち遠しい所ですが、本書に登場する物理波矢多が、奇っ怪な事件(木霊殺人事件)に巻き込まれていたということが書かれていましたので、彼を主人公にした新しいシリーズが出来るのかも知れないですね。

2016年9月24日 (土)

「二歩前を歩く」石持浅海

【内 容】

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不可解な謎と論理のアクロバット。 石持ミステリーの真骨頂!!

スリッパが勝手に歩く? 留守の間に風呂場の照明が点く?
現代科学では説明のつかない不思議な出来事。
幽霊のしわざか、はたまた超常現象か?

そこに隠れた法則を見つけ出したとき、意外な真相が浮かび上がる!
チャレンジ精神溢れる、六編のミステリー短編集。

【目 次】

「一歩ずつ進む」
「二歩前を歩く」
「四方八方」
「五カ月前から」
「ナナカマド」
「九尾の狐」

【感 想】

ある企業の研究者「小泉」が、同僚たちから相談を持ちかけられ、不可思議な出来事の謎に挑むという話です。

結局の所、すべての出来事が超常現象だと言う結論になるのですが、その結論に至るまでに、いろいろな調査や推理をしていく過程が、なかなかユニークです。
しかも、話が相談者の視点(一人称)で書かれているというのも、面白い所です。
「小泉」と相談しながら、一つずつ事件の可能性を狭めていき、その出来事が、犯人の居ない不思議な現象だと結論づけて行きます。

最後になって、その超常現象がなぜ起きるのかという話になり、あまり気持ちの良くない結論に繋がって行くので、イマイチ乗り切れないまま読みすすめましたが、最後の「九尾の狐」では、気持ちよくラストを迎えられ、ちょっとホッとした気分で読み終えました。

それにしても、実は超常現象で、今の科学では解明出来ないという話を、ミステリに仕上げていくという作者の手腕には驚きますね。
読みながら、超常現象なら何でもありだ・・・と思いながらも、妙に納得してしまうのは、さすがに上手いです。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月21日 (水)

「静かな炎天」若竹七海

【内 容】

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有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾。

苦境にあっても決してへこたれず、ユーモアを忘れない、史上最もタフな探偵の最新作。
〈甘いミステリ・フェア〉〈サマーホリデー・ミステリ・フェア〉〈風邪ミステリ・フェア〉〈学者ミステリ・フェア〉〈クリスマス・ミッドナイトパーティー〉など、各回を彩るユニークなミステリの薀蓄も楽しめます
好評の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」も収録。

【目 次】

「青い影 七月」
バスとダンプカーの衝突事故を目撃した晶は、事故で死んだ女性の母から娘のバッグがなくなっているという相談を受ける。晶は現場から立ち去った女の存在を思い出す

「静かな炎天 八月」
かつて息子をひき逃げで重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。晶に持ち込まれる依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く

「熱海ブライトン・ロック 九月」
35年前、熱海で行方不明になった作家・設楽創。その失踪の謎を特集したいという編集者から依頼を受けた晶は失踪直前の日記に頻繁に登場する5人の名前を渡される

「副島さんは言っている 十月」
元同僚の村木から突然電話がかかってきた。星野という女性について調べろという。星野は殺されており、容疑者と目される男が村木の入院する病院にたてこもっていた

「血の凶作 十一月」
ハードボイルド作家・角田港大の戸籍抄本を使っていた男がアパートの火事で死んだ。いったいこの男は何者なのか?

「聖夜プラス1 十二月」
クリスマスイブのオークション・イベントの目玉になる『深夜プラス1』初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日を描く

【感 想】

今や40代になった探偵・葉村晶のシリーズです。文春文庫では、第4弾と言う事ですが、「プレゼント」が中央公論社(1996年)から出版されて居るのを加えると、本書が第5弾になります。

前作・「さよならの手口」のような長編もいいですが、やはり短編が良いですね。
テンポが良く、話がドンドン進んでいき、最後に待って居るどんでん返し・・・。しかも、前半部分に登場する小さな謎が、最後にはキチンと解決されているところは、さすがに上手いです。

ほんの小さなきっかけから、大きな事件に巻き込まれていくと言う流れは、違和感が無く良く出来ていると思います。
特に、表題作の「静かな炎天」は、不自然で些細な出来事の積み重ねが、ある事件に繋がって行くというところは絶品でした。
毎回、何かの不運に見舞われてしまう葉村晶ですが、今回は、それ程大きな事故や怪我にも合わずに済みましたが、加齢による衰えは何とも仕方が無いですね。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月18日 (日)

「土漠(どばく)の花」月村了衛

【内 容】

0916

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。
その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、自衛官達の命を賭けた壮絶な撤退戦の幕があがった。。

圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。
最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。
なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?
最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。

男たちの絆と献身を描く超弩級エンターテインメント!
 第68回日本推理作家協会賞受賞作!

【感 想】

ほぼ一気読みでした。退屈すること無く、読み終えました。
でも、こういった内容の本は、ちょっと苦手です。読み終えて、ドッと疲れが出ました。
想像したとおりにエンドを迎えますが、気持ちの良い読後感はありません。

SFやホラーのように、あり得ない話をホントらしく書くのは面白いし、入り込んでしまうと、その世界に没頭してしまいます。
また、ドキュメントの場合なら、実際に起こった事件の中から、その中の人たちが、どのように考えてどのような行動を取ったのかと言うところを掘り下げて書かれていると、興味深い(私の好きな)話になりそうです。

本書の場合は、「ソマリア」と言う現存する場所で、「自衛隊」という、実際に存在する機関に属する人物たちが繰り広げる話のはずなのに、作り話の感が否めません。
それならば、A国に配属されたB国の軍隊の話として進めていく方が、面白いような気がしますし、読み手の勝手なイメージで、「ソマリア」と「自衛隊」として読み進める方が、読み手としては話のイメージが膨らみます。

最初から、ご都合主義的な話が並んでいるので、読みながら、ハラハラドキドキはするのですが、どうせこの中の何人か(おそらく主人公とあと数人)は生き残るのだろう・・・と、思いながら読み進めている私が居ます。
物語には熱中しますが、どこかで覚めた目でストーリーを追ってしまっています。
少し前に読んだ、「神子上典膳」には、大きなどんでん返しが待っていた事を考えると、予想通りになってしまった結果に、少々ですが、不満が残りました。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月17日 (土)

「問題物件」大倉崇裕

【内 容】

0915

大島不動産販売に入社した若宮恵美子は、前社長の遺児で難病に苦しむ大島雅弘の世話係となるも、突然異動を命じられる。
そこは現社長の高丸が、雅弘を追い落とそうと画策して新設した、クレーム対応専門部署だった。

途方に暮れる恵美子の前に、「探偵」を名乗る奇妙な男が現れて・・・。
前代未聞の名探偵・犬頭光太郎登場!!
居座り、自殺、ゴミ屋敷、ポルターガイストに失踪まで。
お部屋に関する問題を、人間離れした能力で華麗に無理矢理解決!破天荒極まりないミステリー!

【目 次】

「居座られた部屋」
「借りると必ず死ぬ部屋」
「ゴミだらけの部屋」
「騒がしい部屋」
「誰もいない部屋」

【感 想】

なんともハチャメチャな、連作短編集です。

「俺は犬だ!」と、声高に主張してしまっている探偵役は、亡き会社社長の御曹司・大島雅弘が大事にしている犬のぬいぐるみ「犬太」の化身らしいのですが、名探偵クラスの推理力を持つうえ、大勢のヤクザを一瞬で叩きのめす腕力だけでなく、超能力に近いパワーまで駆使するという、不思議な人(犬)です。

さらに、ワトソン役であるはずの主人公の女性・若宮恵美子は、後ろでオロオロしているだけなのに、不思議に話が進んでいきます。

トリックなどには、少々強引な感じは否めませんが、序盤の伏線はなかなか面白いし、その上、予想を覆すような真相が用意されており、ミステリとしても良く出来ていると思います。
また、短編の最後には、次の事件のあらましを紹介するなど、興味をそそるような構成になって居るのも良いですね。

ただ、パターンが決まってしまっているので、一気読みしているとちょっと中だるみがして来るのではと思いますが、私はちょっと気に入って居ます。
舞台を米国に移す予定の、第二弾に期待したいです。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月15日 (木)

「あきない世傳金と銀(源流篇)」高田郁

0908

【内 容】

物がさっぱり売れない享保期に、摂津の津門村に学者の子として生を受けた幸。
父から「商は詐なり」と教えられて育ったはずが、享保の大飢饉や家族との別離を経て、齢九つで大坂天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公へ出されることになる。

慣れない商家で「一生、鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら、番頭・治兵衛に才を認められ、徐々に商いに心を惹かれていく。
果たして、商いは詐なのか。あるいは、ひとが生涯を賭けて歩むべき道かー
大ベストセラー「みをつくし料理帖」の著者が贈る、商道を見据える新シリーズ、ついに開幕!

【感 想】

女性が学問を学ぶ機会が無かった時代に、学者を父に持ち、子どもの頃から学問に慣れ親しんできた「幸」ですが、9歳の頃に父と兄を相次いで失い、大坂の呉服商に奉公に出され、そこでの話しとなるのでしょうが、本書・第1話では、幸の奉公へ出されるまでの生い立ちから奉公に出されたいきさつや、奉公先でのちょっとした出来事で終わっています。

相変わらず丁寧な描写で、話のテンポも良いです。
読みながら、当時の様子が手に取るようにわかり、いつの間にか話しに引きこまれてしまいますし、幸の考え方の基本となる部分もよくわかります。

父の教えと、奉公先で出会った人々とのギャップに接して、そこから幸の物の見方や考えが変化する様子を、興味深く読みました。

今回の話しも、やはり「みをつくし料理帖」と同じように、健気に生きる少女が主人公として描かれています。
この先、幸が奉公先で、どのように成長していくのか、次作が楽しみになる第一作でした。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月14日 (水)

「ごはんぐるり」西加奈子

【内 容】

0913

カイロの卵かけごはんの記憶、「アメちゃん選び?」は大阪の遺伝子、ひとり寿司に挑戦、夢は男子校寮母・・・。
美味しオカしい食エッセイ。
直木賞作家・西加奈子はこんなものを食べてきた!

アルバイト先で初めてつくったまかない料理の肉じゃが、子どもの頃カイロで食べた卵かけごはんの特別さ、朝起きて最初にする珈琲儀式、大声で大好きって言えなくてごめん!たこ焼きーカイロ&大阪育ちの幸せな食オンチが「ごはん」にまつわる「キラキラ」を綴ったエッセイ。

短編「奴」と、敬愛する料理人・竹花いち子氏との対談を特別収録。

【目 次】

肉じゃがバター/カイロの卵かけごはん/アメちゃんのDNA/珈琲儀式/活字のごはん/舐める春/旅の悪食/日常の悪食/甘い恋/脱ビール、でもビール・・・など

【感 想】

料理や食事についてのエッセイ集です。本書が食に付いての初エッセイ集だと言うことです。
初エッセイとは、とても思えない出来で、作者ならではの目の付け所がユニークで、話の切り口が面白いです。
また、彼女のこだわりがよくわかり、一つ一つ納得させられてしまいます。
海外での生活が長い彼女ならではの見方から、日本の食事を再発見させてくれます。

特に興味深かったのは、「初デートの正解」から始まる、「何々の正解」のいくつかです。初デートで行く店は、どんな店が良いのか・・・と、相手のことを思いながら、あれこれ考えを巡らし、お店を決めるという話しなんですが、何が正解なのか・・・難しいですね。
初デートの時だけじゃ無く、私も日夜、「正解すぎる店」を探していると言う事もあって、特に興味を持って読んでしまいました(笑)

また、いろんな場面を想定して、ここでは何が正解なのかと、私も読みながらいろいろ思いを巡らし、ニヤニヤしながら読みました。

美食についてのウンチクも、気取った話しもありませんが、大阪人の視点が所々に垣間見られ、ちょっと親しみを感じるエッセイでした。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月13日 (火)

「崇徳院を追いかけて」鯨統一郎

【内 容】

0911

星城大学の研究者早乙女静香は、バー“スリーバレー”でライターの宮田六郎と知り合った。
歴史談義で角突き合わせるだけの関係だったが、どうしたわけか共に京都を旅する成り行きに・・・。

かねて興味を抱いていた崇徳院について調べようとするその矢先、宮田の知人である京都在住のジャーナリストが失踪。
さらに、静香を敵視していた歴史学者が遺体となって崇徳院ゆかりの白峯神宮で見つかるなど、二人と接点を持つ人物が奇禍に遭う。
そして知り合ったばかりの社長令嬢も・・・・・・。

被害者との接点に注目した警察は二人を追及しはじめる。
事件を解明すべく奔走する宮田と静香。歴史上の謎に通じるその真相とは?

【感 想】

「邪馬台国はどこですか?(1998年5月 創元推理文庫)」と、その続編となる「新・世界の七不思議(2005年2月 創元推理文庫)」では、顔を合わせる度に敵対していた二人が、「新・日本の七不思議(2011年4月 創元推理文庫)」では、いつの間にか、「静香」「ロック」と呼び合う仲に・・・。急に良い雰囲気になって居るのはどうしてなんだ・・・と思いながら読んでいました。

バー・「スリーバレー」で、歴史談義をする形で、歴史の謎を解明していくこれまでの連作短編とは違い、今回は長編だし、実際に現地で歴史調査をします。
その途中で、殺人事件に出くわし、その謎も同時に解決するという、どこかで読んだようなストーリー展開です。

本書は、時系列で言うと、「新・世界の七不思議」と「新・日本の七不思議」の間に位置する話になっています。なので、どういったいきさつで、宮田六郎と早乙女静香が近づいたのかと言うことがわかります。そういう意味では興味深い話でした。

さて、崇徳院の謎を追って、六郎と静香が京都向かう・・・と言う話なのですが、三大怨霊の一人と言われている崇徳院の謎の真相は、それなりでした。
その後、西行を崇める怪しい新興宗教教団の企みが、崇徳院と絡んでくるという流れになります。
題材としては面白かったですが、歴史の謎と現実の殺人事件の関係や、登場人物の出会いや関わりなどがやや強引にも感じました。
また、芝居じみた会話がたくさん出てくるので、笑ってしまう所も多かったです。
それなりには楽しく読めましたが、「邪馬台国はどこですか?」を読んだときのような、強烈は驚きはありませんでした。
タイトルが面白そうだからって、内容まで面白いとは限りませんね。

☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月12日 (月)

「神子上典膳」月村了衛

0501

【内 容】

戦国末期下野国、謀反により命を狙われた領主の娘・澪姫と幼き小姓を守るため、一人の男が一国を相手に血刀を振るう。
男の名は神子上典膳(みこがみ・てんぜん)。
伊東一刀斎より印可を受け、後に小野忠明と改名、柳生新陰流と並び徳川将軍家剣術指南役となったその人である。

山中の逃避行、多勢による包囲網、他国の裏切り、刑場での罠・・・・・・。
切れ目なく訪れる絶体絶命の危機に、一刀流奥義“無想剣”がうなりをあげる。
文庫化に際して、『一刀流無想剣 斬』を改題。

【感 想】

作者・月村了衛は、『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞受賞し、 『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)受賞されていますが、本屋さんへ行ったときに、文庫新刊の平台に重ねて積んであったのを見て、時代小説も書くのか・・・と、思わず手に取ってしまいました。

剣豪・伊東一刀斎の立ち会いの下、「一刀流」秘伝の継承をかけて、一刀斎の二人の弟子・小野善鬼と神子上典膳が決闘をしたと言う話しは、私でも知っている有名な逸話ですが、詳しく伝わっていないためか、いろんな人が想像力を膨らませ、小説に仕上げています。(例えば、高井忍「柳生十兵衛秘剣考 水月之抄」

典善は後に、小野忠明と改名し、徳川将軍家剣術指南役となった人なのですが、本書では、どうも私のイメージとは違う、泥臭い人間に描かれています。
何故、たまたま出会っただけの領主の娘・澪姫と幼き小姓を守ろうとするのか、傷を負っても、休む間もなく旅立とうとするのか・・・、神子上典膳の意味不明の行動が続き、ハラハラドキドキの連続で、読みやすくテンポも良いので、ページが進んでいきます。

そして・・・、最後にはやはり、大きなどんでん返しが待って居ました。剣豪を扱ったミステリだったと、最後にわかりました(笑)
ちょうど一年ほど前に、高井忍の短編「一刀流“夢想剣”」で、剣豪・伊東一刀斎にまつわる話を読んでいるだけに、少し驚かされてしまいました。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月11日 (日)

「コンビニ人間 」村田沙耶香

【内 容】

0821

第155回芥川賞受賞作!

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。

オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。

仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれるーー。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが・・・。

現代の実存を問い、正常と異常の境目がゆらぐ衝撃のリアリズム小説。

【感 想】

雑誌、文藝春秋を買って読みました。短い話と言うこともあって、ほぼ一気読みです。

高度成長時代にはたくさん居た「会社人間」が、「コンビニ」という企業に特化しただけの話かと思いましたが、実際にコンビニに働いている作者ならでの目の付け所がたくさん述べられていて、興味深く読みました。
コンビニの店員さんが、目と耳を駆使して周囲の状況をキャッチする所には感心させられましたし、その働く様子に、何か共感のようなものを感じながら読みました。

まず、主人公・古倉恵子の子どもの頃は、周囲の子どもとはちょっと替わった性格だったと言う事を紹介するようなエピソードが登場します。
でも、彼女の言動や行動は、常識にとらわれない合理的な考え方に基づく行動なのかも知れないのですが、なかなか普通の社会には受け入れられないと言う事が、徐々に本人にもわかってきます。
そこで出会ったのが、マニュアル通りに行動すれば普通の人間と認められる、コンビニでの仕事だったというわけです。

一人で働いて、生活をして、それなりに社会に役立っているハズなのに、人と関わりと持ってしまうと、自分の人生に口出しをされてしまうという煩わしさが、良く伝わって来ます。
それを解消するために、コンビニで働くことも出来ない、社会不適合者である男性・白羽と関わってしまうことで、ついには白羽を同居させてしまい、コンビニとは縁を切ってしまうと言う流れは、とても面白く読みました。

久々に、とても読みやすく、少しニヤニヤしながら読んだ、芥川賞受賞作でした。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月10日 (土)

「怪談のテープ起こし」三津田信三

【内 容】

0823

恐怖は全て、日常にひそむ。

「自殺する間際に、家族や友人や世間に向けて、カセットテープにメッセージを吹き込む人が、たまにいる。それを集めて原稿に起こせればと、俺は考えている」。

作家になる前の編集者時代、三津田信三は、ライターの吉柳から面白い企画を提案された。
ところが突然、吉柳は失踪し、三津田のもとに三人分のテープ起こし原稿が届く。

死ぬ間際の人間の声が聞こえるーー<死人のテープ起こし>。
自殺する者は何を語るのか。
老人の、夢とも現実ともつかぬ不気味な昔話の真相は。
怪女「黄雨女」とは一体・・・・・・。

怪談六篇と、ある編集者の顛末。
戦慄のテープ起こしがいま、始まる。

【目 次】

=序 章=
「死人のテープ起こし」
「留守番の夜」
=幕 間(一)=
「集まった四人」
「屍(しかばね)と寝るな」
=幕 間(二)=
「黄雨女(きうめ)」
「すれちがうもの」
=終 章=

【感 想】

短編の間に、「序章」「幕間(一)」「幕間(二)」「終章」と入って居ます。
ここでは、作者・三津田信三と、『怪談のテープ起こし』の連載を担当した女性編集者・時任美南海が登場します。

「自殺する間際に、家族や友人や世間に向けて、カセットテープにメッセージを吹き込む人が、たまにいる。それを集めて原稿に起こせればと・・・」と言う事で、三津田信三の手に渡った取材テープ。
その怪談話を収録した取材テープを三津田信三から借りた編集者の時任は、作者・三津田信三の執筆のヒントになるからとテープ起こしを始めます。
しかし、その彼女に、次第に異変が・・・。
この幕間(まくあい)がなかなかユニークで、良く出来ています。

一つ一つの短編も、それなりに面白いですが、作者と編集者との絡みを、短編の間に挟むことで、一つの長編を読んでいるような気分になりました。
また、この本に収められた6つの短編は、どれも作家・三津田信三が取材したり、自分で体験したりした話をもとに執筆されている(と言う事になっている)ので、この編集者との会話の部分は、ひょっとすると実話なのでは・・・といった感じを読者に与えるという効果もあります。

三津田信三のホラーの中には、それなりにミステリーとしても読み解ける話が多いのですが、今回は、全くオチのない話しになって居ます。(と言う事で、各短編の感想は、省略させて戴きます)
良く出来た話なので、興味深く読み進めることは出来ますが、読み終えた後は、なぜか背筋が寒くなってくる・・・、そんな話が詰まった短編集です。
オススメします。

☆☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月 9日 (金)

「貴船茶屋」の川床

8月30日に、京都・貴船へ川床料理を戴きに行ってきました。
家から貴船までは、第二京阪高速道路を使うと、約一時間で到着です。

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今回予約をしたのは、「貴船茶屋」さんです。
この店に決めたのは、「当日でもキャンセルが出来る」ということが一番の理由です。

せっかく貴船まで行ったのに、雨天のため旅館の部屋で食べるのは、ちょっと残念です。川床に上がれないと言うことが前もってわかればキャンセルをして、街中で食事をする方が良いですね。

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その上、団体客を取らないので、川床が小さく、どの席からでも、川に手や足が届きます。

少し早く着いたので、上から川床を撮らせていただきました。未だ提灯に明かりが灯っていません。
これまでは、京都市内のホテルの「宿泊パック」で、夕食に訪れたり、数人でお邪魔したので、比較的大きな川床があるお店でしたが、大きな川床で、真ん中の席では、情緒も何もありません。

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10時半の開店を待って、お店に入りましたが、私たちが最初のお客でした。
目の前に小さな岩が有り、滝のように流れてくる川の水を眺められる、素敵な席に案内されました。

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未だ誰も居ないので、席の周囲の写真を撮らせていただきました。私の席から見た、周囲の風景です

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手を伸ばすと、川に手や足が届きます。
見ただけでも涼しげな感じですが、実際に、川床に降りてくると、上着を羽織らないと寒いぐらいでした。

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熱いお茶とお手ふきを持ってこられ、メニューの相談です。
コース料理ですが、「当日決めていただいても良いですよ」と言う事でしたので、内容の説明を聞いてから決めるつもりでした。
他の店では、お昼も夜も同じ値段設定で、一万円からだとか、一万五千円からと言う店が多いのですが、この店は6500円(平日のみ)からです。

「先付・お刺身・炊き合わせ・鮎の塩焼き・天ぷら盛り合わせ・素麺・ご飯と赤だし・水菓子」の懐石料理のコースで6500円です。

これまでの経験から、5000円は川床の席料だと思って居るので、6500円だと、料理の内容は1500円程の料理でしょうね。
でも、初めての店なので、まずは一番安いコースをお願いしました。
今回は、この店の川床の様子がわかれば良いので、「料理が少なければ、街中で食べれば良いか・・・」というノリです。

この基本コースに、八寸(季節の前菜)・お吸い物(鱧)・酢の物などが加わると、9000円、10000円、12000円、150000円と上がっていくそうですが、もちろん、サービス料は付きません。

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まずは、「先付」と「お刺身」です。
ビールを一本頼みましたが、1000円でした。もちろん、私は運転がありますので、熱いお茶で十分です。

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続いて、「炊き合わせ」と「鮎の塩焼き」です。
蛸は柔らかく、美味しかったですし、鮎は、頭から丸かぶりしました。

一つずつ、旅館から道路を渡り、階段を降りて、川床まで運んでこられます。

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「天ぷら盛り合わせ」と「素麺」です。
私たちの食べるのが、あまりにも早いので、同時に運ばれてきました(笑)
アマゴは初めてですが、アマゴの天麩羅が思いのほか美味しく、川魚特有の臭みが一切ありません。
素麺は、極細なのにコシがあり、量も見た目よりたっぷりありました。

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最後に、ご飯と水菓子(水ようかんとグレープフルーツ)です。
全体に、少し少ないように感じますが、お昼だし、結構お腹は満たされました。

周りのお客さんとは、明らかに出されるスピードが違いましたが、おそらく、食べっぷりを見て、急いでいただいたのでしょうね。

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会計の時に、ふと川床の方の通りを見たら、こんな感じで女将さんが、食事の様子を見ながら合図されていました。

【貴船茶屋】

[住所] 京都市左京区鞍馬貴船町69
    (貴船神社上流 200m)

[TEL・予約] 075-741-2148

[営業時間]
10:30~20:30 (最終入店 18:00まで)

※ 川床は禁煙です。
※ カードは使えません、現金のみです。
※ 貴船口からの送迎は、二名からOKです。

2016年9月 8日 (木)

馬主席から観戦~京都競馬場~

4月の話で恐縮です。
初めて、京都競馬場に行ってきました。

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しかも、馬主席です。
馬主受付へ行くために、「シンザンゲート」より入場しました。

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入場門をくぐって、馬主受付へ向かいます。

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友人のご主人が馬主と言うことで、
「ぜひ一度連れていってください」とお願いしていた所、実現しました。

重賞レースなどがある日は、私のような競馬初心者が行くと足手まといになるだろうと、何も無いレースの日にお願いしました。

馬主受付で、馬主席章をいただき、ハンドスタンプを押して貰いました。
エレベーターで6階へ案内されます。

今日は馬主席と言う事なので、スーツにネクタイと言う出で立ちです。
少し暑いですが、6階へ行くと良く冷房が効いて、快適でした。

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6階の馬主席ゾーンからの眺めです。パドックが見えています。早い時間なので、人もまばらですね。

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馬主席に入ります。私たちは、H-85とH-86です。

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指定席に座ると、ゴールと大スクリーンがちょうど目の前に見えます。

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下に降りて、パドックを見学です。パドックにも、馬主ゾーンがありました。

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馬主ゾーンにだけ、屋根があって、日陰が出来ています。スーツにネクタイの私にはうれしい配慮です(笑)

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この騎手は、武幸四郎さん。
武豊さんの弟で、先日亡くなられた武邦彦さんのご子息です。
それにしても、目の前で見る馬は、綺麗です。

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お昼前になったので、馬主ゾーンの食堂で昼食。松花堂弁当1600円です

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昼食後の第4レースの決勝です。一団となってゴールになだれ込む馬って迫力ありますね。

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せっかく来たのだからと、第6レースの馬券を購入することにしました。
3連複の「軸1頭流し」です。
馬番で、2番、4番、6番、10番、11番の内、3頭が一位~三位に入れば良いという馬券です。
6通りの組み合わせを、200円ずつ買ったので、軍資金は1200円でした。

出走の瞬間は、大画面で観戦です。

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第6レースは、5馬身差で10番が勝ちました。

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ご覧のように、見事に、3連複2-4-10を的中させました。
200円馬券だったので、7570円×2=15140円の払い戻しでした。

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と言う事で、レースも終了し、各馬引き上げてきました。
この1レースのみ馬券を買いましたが、ビギナーズラックでしょうね。馬券購入は、これで終わりにしました。

もちろん、払戻金は、帰りの食事代の一部になりました。

2016年9月 7日 (水)

「QJKJQ 」佐藤究

【内 容】

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市野亜李亜(いちのありあ)は十七歳の女子高生。
猟奇殺人鬼の一家で育ち、彼女自身もスタッグナイフで人を刺し殺す。

猟奇殺人の秘密を共有しながら、一家はひっそりと暮らしていたが、ある日、亜李亜は部屋で惨殺された兄を発見する。
その直後に母も姿を消し、亜李亜は父と取り残される。

何が起こったのか探るうちに、亜李亜は自身の周りに違和感を覚え始めー。
亜李亜は残った父に疑いの目を向けるが、一家には更なる秘密があった。

「平成のドグラ・マグラ」「ものすごい衝撃を受けた」
選考委員たちにそう言わしめた、第62回江戸川乱歩賞受賞作。

【感 想】

2016年度・第62回の江戸川乱歩賞受賞作です。
内容を読むと、父、母、兄が猟奇殺人鬼という家庭で育った高校生の話と言うことで、買うのをしばらく躊躇して居ました。
あまり気分の良い内容じゃなさそうだし、現実と虚構が交錯すると言う、私の苦手な展開の話だからです。

冒頭から繰り広げられる残虐な殺し方の描写に、ちょっと吐き気を感じながらも、読み進める事が出来ました。と言うのも、何より、文章が上手いです。
十七歳の女子高生・市野亜李亜(いちのありあ)の視点で書かれているのですが、全く違和感が無く、話しに引きつけられていきます。

読みながら、疑問に思うところは多々ありましたが、最後にそれらがすべて納得できるような形で話が繋がって行き、新人とは思えない力量に、感心しながら読んでいきました。

ただ、読みながら感じていたのは、どこまでが現実で、どこからが虚構なのかがよくわからない事です。でも、読み終えた時には、ひょっとしたら、すべてが虚構だったのではないのかと言う気がしましたが、はたして・・・。

本書をミステリという枠に当てはめるのは、少々疑問な所もありますが、こういうミステリも有りなんでしょうね。
感想を書くにも、どこまで書くとネタバレになるのかわからないまま書き進めていきましたが、衝撃を受けた作品であるというのは間違いがありません。
あまりオススメは出来ませんが、私は途中で辞められず、時間を取って一気に読んでしまいました。

☆☆☆☆(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年9月 6日 (火)

「水族館の殺人」青崎有吾

【内 容】

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夏休み最中の8月4日、向坂香織たち風ヶ丘高校新聞部の面々は、取材で市内の穴場スポットである、丸美水族館に繰り出した。
館内を館長の案内で取材していると、B棟の巨大水槽の前で驚愕のシーンを目撃。
なんと、サメが飼育員と思われる男性に喰いついている! 

駆けつけた警察が関係者に事情聴取していくと、容疑者は11人にもおよぶことに。
しかもそれぞれに強固なアリバイが・・・。

袴田刑事は、仕方なく妹の柚乃へと連絡を取った。
あのアニメオタクの駄目人間・裏染天馬を呼び出してもらうために。

“若き平成のエラリー・クイーン”が、今度はアリバイ崩しに挑戦。

【感 想】

体育館の殺人」で、第22回鮎川哲也賞受賞した作者・青崎有吾の受賞第一作です。
受賞作が、私にとってはイマイチだったため、本書は「文庫本待ち」にして居ましたが、やっと文庫版が出版されましたので、早速購入しました。
裏染天馬が探偵役として登場し、高校一年生の卓球部員・袴田柚乃(はかまだゆの)がワトソン役として登場していることから、受賞作のシリーズ第二弾と言うところでしょう。

出版による内容解説には、「今度はアリバイ崩しに挑戦」とありますが、容疑者11人のアリバイは、殺人トリックを解明する事で、簡単に崩れてしまい、11人全員にアリバイが無いと言う状況で話が進んでいきます。

結局、探偵役である裏染天馬が、事件解決に乗り出し、事件発生当時の状況を細かく調べて、一人の犯人を絞り出していくと言う事になりますが、その部分だけ抜け出せば、それなりに興味深く読めました。

ただ、高校生が警察に協力して事件に関わっていくことの不自然さというものが、常につきまとってくるために、話に乗れない所もあります。

また本書は、本筋とは関係の無い人物やエピソードが出てきて、少し戸惑いました。
おそらく、今後もシリーズ化したいがために、新しい人物を本書で登場させ、次作へと話を広げようとして居るのだと思いますが、取って付けたような話なので、(それなりに面白くは読みましたが)読後に違和感が残りました。

事件発生から、アリバイトリックの解明の部分は、あまりにもあっけなかったのですが、犯人を特定してく所は読み応えがありましたし、その犯人の動機とされるもの(あくまでも探偵・裏染天馬の想像)は、とてもユニークで、それなりに納得させられてしまいました。

でも、次作も、文庫待ちにしたいと思います。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年6月 8日 (水)

探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海

【解 説】

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脳科学者でもあり、和製シャーロック・ホームズとも称される名探偵・御手洗(みたらい)潔(きよし)が登場するミステリの映画化。

名探偵・御手洗潔は、日本を代表する本格ミステリーの巨匠・島田荘司が、1981年に発表したデビュー作『占星術殺人事件』で初登場し、「御手洗潔シリーズ」は、総部数550万部を更新し続けている、大人気シリーズである。

その49作目の『星籠の海』(講談社刊)は、上下巻866ページからなる大冊。その面白さを損なうことなく、映画オリジナルのキャラクターも投入して、大胆な脚本化を施した映画が本作・『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』である。

監督は「相棒」シリーズの和泉聖治。
主人公の御手洗潔に玉木宏が扮し、映画オリジナルキャラクターで、ヒロインとなる小川みゆき役で広瀬アリスが共演している。

【あらすじ】

物語は、瀬戸内海・愛媛県の小さな島に、身元不明の死体が半年間で6体流れ着くという難事件で幕を開ける。この事件に興味を持ち、御手洗はさっそく現地に飛ぶ。

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福山で捨てられた死体が、瀬戸内の複雑な海流で、この入江に流れ着いたことを突き止めた御手洗は、福山へ移動する。

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すると、外国人女性の変死体や、口と目を縫い合わされた居比夫婦が赤子を殺され滝つぼで発見されるなど、奇妙な事件が立て続けに発生する。

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一方、福山市立大学准教授の滝沢加奈子は、近年発見された福山藩主・阿部正弘に関する新資料の古文書に記されていた「星籠(せいろ)」について調べ始めた頃から、身の回りで不穏な出来事が起こるようになった。

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ある日、帰宅途中の加奈子が東南アジア系外国人集団に襲われた事がきっかけで、御手洗たちは「星籠」の謎までも追う事となっていく。

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御手洗の超人的な推理により、一見何の関連もないように見えるこれらの出来事が複雑に絡み合っており、次第にその奥に潜む容疑者が浮かび上がってくる。

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果たして時計仕掛けの海を舞台に起きた3つの事件の真相と、幕末の歴史に隠された「星籠」の謎とは?

【映画に登場する三つの事件】

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【感 想】

TVドラマ「天才探偵ミタライ~難解事件ファイル」で、玉木宏さんが「御手洗潔(みたらいきよし)」役として登場しました。

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本での私のイメージ(デビュー作「占星術殺人事件」で感じた変人・奇人)とは、ちょっと違いますが、なかなか素敵な御手洗潔を演じていました。
「御手洗潔シリーズ」では、ワトソン役として、「石岡和己」と言う人物が必ず登場しますが、テレビではKinKi Kidsの堂本光一君でした。
ところが今回は、どういった事情なのか(詮索はしないでおきましょう)、石岡和己は登場せず、助手として、広瀬アリスさん演じる、小川みゆきという女性がキャスティングされています。

この女性のキャラが、なぜが気に入りません。いわゆる「ウザイ」のです。最初から最後まで、これが一番気になっていました。
ちなみに、石岡和己は映画の中では、電話の声のみで登場しますが、エンドロールを観ると、その声は堂本光一君じゃありませんでした。

さて、話としては、いくつかの事件が、幕末の歴史に隠された「星籠(せいろ)」の謎に繋がって行くという流れなんですが、原作の前半部分を大幅にカットして、瀬戸内海での出来事を中心に話が進められているので、そのために話の展開のテンポも良く、わかりやすいストーリーになって居ました。

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映画の中で、いくつかの謎が提供されますが、これまでのミステリ映画と比べてしまうと、ちょっと違うところがあります。
というのは、これまでの多くの探偵たちは、次から次へと起こる事件を後から追いかけていき、犯行が全部終わってしまってから犯人を指摘する・・・と言った展開ですが、この映画の御手洗潔は、起こった事件を観察して、先回りして次の事件を未然に防ぎ、犯人を待ち受けるといった事をします。

つまり、謎めいた事件は提示されますが、提示された時点で、御手洗潔にとっては、謎ではなくなって居ると言う事です。
そのために、ミステリというよりは(原作でも感じた事ですが)、サスペンス物を観ているようでした。

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しかしながら、複数の事件が一つに繋がり、また戦国時代の水軍の話から、幕末のペリー来航に繋がる歴史ロマンも楽しめたのは、原作の持つ面白さを生かしながら、映画として上手くまとめられたのではないでしょうか?
でも、猛スピードのオートバイで転んだのに、あれだけの怪我しか無かったのかとか、人の家に鍵も無いのにどうして侵入できたのかとか、犯人が犯行の露見する方向になぜ逃げるの・・・と言ったツッコミどころはたくさんありますが、それなりに退屈しないで観ることが出来ました。

ただ、ラストの崖っぷちのシーンは、テレビの二時間ドラマじゃ無いので、辞めて欲しかったですが・・・(笑)

【キャスト】

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玉木宏/御手洗潔
広瀬アリス/小川みゆき
石田ひかり/滝沢加奈子
要潤/小坂井准一
谷村美月/辰見洋子
小倉久寛/黒田優作
吉田栄作/槙田邦彦
寺脇康文/夏島健二
神尾佑/居比修三
今野麻美/居比篤子
螢雪次朗/富永幸平
金児憲史/北王子
品川徹/怱那鷹光
片桐竜次/春山誠治
渡辺邦斗/三橋博之
寺井文孝/須藤淳平

【スタッフ】

監督/和泉聖治
原作/島田荘司
脚本/中西健二、長谷川康夫
音楽/岩代太郎

=6月11日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part31)

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Blog記事ランキングで、「探偵ミタライの事件簿 星籠(せいろ)の海」が、「映画の部」の一位になりました

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

2016年6月 2日 (木)

「安達ヶ原の鬼密室」歌野晶午

【内 容】

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太平洋戦争末期、疎開先から逃げ出した梶原兵吾少年は、一人の老婆が留守を預かる不思議な屋敷で宿を借りることに。
その夜、二階の窓には恐ろしい“鬼”の姿が…。
やがて、虎の像にくわえられた死体が見つかり、屋敷に逗留していた者は次々に異様な死を遂げたー(「安達ヶ原の鬼密室」)。

いくつもの謎と物語が交差する、著者ならではの仕掛け満載、興奮必至の傑作ミステリー!

【目 次】

「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」
「The Ripper with Edouard-メキシコ湾岸の切り裂き魔」
「安達ヶ原の鬼密室」
「The Ripper with Edouard-五つ数えろ!」
「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん(つづき)」

【感 想】

新書で出版されたとき購入しようと思って居ましたが、ちょっと立ち読みしてみれば、何か変な感じの話だなと言うことで、その時はスルーしましたが、またまた文庫になったのが本屋さんの平台に積んであったので、手に取ってみました。

購入する前は長編だと思って居ましたが、三つの全く違う話が並んでいます。
何かの関連があるのかと思いながら読んでいましたが、全く別の話のようです。ネタバレになるかも知れませんが、使われているトリックが同じだと言うことのみが共通項です。

でも、「安達ヶ原の鬼密室」以外の話は、全く面白くありませんでした。なぜこういう構成にしたのか、よくわかりません。「安達ヶ原の鬼密室」だけをもう少し引き延ばせば、読者の評価も上がったのでは無いでしょうか?
これから読もうとされる方は、前の2話は飛ばしてしまって、「安達ヶ原の鬼密室」を先に読まれることをオススメします。

と言う事で、「安達ヶ原の鬼密室」ですが、終戦間際に、少年が体験したという事件が語られます。
ところが、事実関係の記述が曖昧な上に、現在(50年後)ではその少年は記憶障害となっており、事実関係を確認する手立てがないというなかで、当時起こった事件の謎を解いていくと言う不可解な事件です。
ただ、話としてはそれなりに面白かったのですが、つまらない全2作を読まされている事もあって、イマイチ乗れませんでした。
トリックも、あまりにも現実的ではありませんので、あまりオススメできる内容ではありませんが、実験的な試みは、面白いのかも知れません。

☆☆★★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年6月 1日 (水)

殿、利息でござる!

【解 説】

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「武士の家計簿」で知られる歴史家・磯田道史による評伝「無私の日本人」に収録されている一編「穀田屋十三郎」を映画化。

物語の舞台となる仙台出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦が、仙台藩の第7代藩主・伊達重村役で映画に初出演を果たした。
「白ゆき姫殺人事件」「ゴールデンスランバー」の中村義洋監督がメガホンをとり、時代劇に本格初挑戦。

江戸時代中期の仙台藩吉岡宿が舞台の実話で、年貢の取り立てや労役で疲弊した宿場町を救うため、藩に金を貸して毎年の利息を地域の住民に配る「宿場救済計画」に尽力する人々の姿を描く。

町の行く末を案じる主人公を、時代劇では初主演となる阿部サダヲほか、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、松田龍平という実力派が出演している。
上映時間 129分

【あらすじ】

江戸中期、財政の逼迫(ひっぱく)した仙台藩が領民へ重税を課したことで、破産や夜逃げが続出していた。

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寂れ果てた小さな宿場町の吉岡宿でも、年貢の取り立てや労役で人々が困窮し、造り酒屋を営む穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は、町の行く末を案じていた。

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そんなある日、十三郎は、町一番の知恵者である茶師・菅原屋篤平治(瑛太) から、藩に大金を貸し付けて、毎年の利息を住民に配るという、宿場復興のための秘策を打ち明けられる。

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計画が明るみになれば打ち首は免れないが、それでも十三郎と仲間たちは、町を守るために私財を投げ打ち、計画を進める。

【背 景】

=吉岡宿の様子=

吉岡宿の人たちは、藩から伝馬役(てんまやく)と言う使命を負っていたそうです。
仙台藩の物資をとなりの宿場から受け取り、次の宿場に運ぶという役目です。
ところが、吉岡宿は仙台藩の直轄領では無かったので、藩からの助成金は全くなく、それらすべての運営と経費の負担は、宿場の住民が負うと言う事になって居たようです。
通常の重い税以外に、労役などで持ち出す額が多かったので、重税に耐えかねて町を出る住民が増えるばかりだったということです。

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=仙台藩では・・・=

「従四位の下」の官位を欲しいがために、江戸の老中らに多額の賄賂(5万両)を送ったり、幕府の工事(20万両)を自ら買って出る藩主に頭を痛めており、藩自体がどうしようも無い金欠に陥っていました。

藩の財政担当である出入司(しゅつにゅうつかさ)からは、「農民から、搾り取れるだけ、搾り取れ」との指令が出るほどに、困窮していたようです。

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【感 想】

原作が、歴史学者・磯田道史さんだと言うことと、スケートの羽生結弦君が、お殿様役で登場するというので、楽しみに観に行きましたが、事前に、内容については、全く知りませんでした。
タイトルから受けるイメージからは、『お殿様にお金を貸して、利息を取り立てるのに苦労した話』かと思って居ましたが、財政が逼迫(ひっぱく)した藩にお金を貸し、利息を取るために、その元手となるお金を集める算段の話でした。

この映画では、ナレーションで、時代の背景や仙台藩と吉岡宿の様子が詳しく説明されていましたので、すんなりと話に入ることが出来たのは良かったです。
吉岡宿の住民の間には、肝煎(きもいり)と呼ばれる庄屋のような存在があり、またその上には大肝煎(おおきもいり)と言った世襲制の役職もあるので、農民の間にも身分制がキチンと引かれていたことが理解できました。
農民では、大肝煎だけが雨の日に傘を射しても良いという、理不尽な事が当たり前に受け居られていた時代なんですね。

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映画では、1000両(現在の価値で三億円)という金額を、足かけ八年をかけて用意をする住民たちの様子を中心に据え、それを藩に貸し付けるために、大肝煎や吉岡宿を担当する代官が奮闘する様子などが語られます。
特に、お金を工面するのに奔走した9人と、それを取り巻く人々の様子が、しっかり描かれているのに感心しました。

一人一人の特徴を上手く引き出して、それぞれが印象に残る人物に描かれており、俳優さんたちも見事に演じています。
少ないセリフの人物にも、印象に残るセリフを語らせているのは、脚本家の上手いところです。

また、吉岡宿の住民からの借り入れを受け入れる、代官や藩の財政担当の苦悩ぶりが、良く伝わってきます。
一度は、吉岡宿からの嘆願を却下しますが、再度の嘆願の際に代官から、お金を集める住民たちの苦労を聞かされた出入司が、借金を受け入れを許可する所は、とても興味深いです。

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ところで、ミステリなどを読んでいると、良い人だと思われていた人が、実は悪人だったりすることが良くあります。
ミステリでは、犯人が最初からそれらしい人物だったら、すぐにわかってしまうので、仮面をかぶった人物を描いていきますが、現実に、良い人を演じる事はそれ程難しくはなさそうです。

ところがその逆に、話の発端では悪人だと思われていた人物が、本当は心の優しい人だったと言う事が、後になってわかるという話は、芝居などでは、人情話として良くあります。
以前、藤山寛美さんの松竹新喜劇でも、その手法がよく使われ、笑いの中に泣きを織り込んだ芝居に仕上げているのを見た記憶があります。
でも、現実問題として、本当は良い人なのに、周りの人たちから悪人に見られると言う事は、まず無いですね。
一人二人はだませても、世間をだますことは難しいのかも知れません。

閑話休題。

吉岡宿の大肝煎に依頼された代官より、「住民たちが、苦心して集めた1000両分の銭・五千貫文を借りて欲しい」との嘆願書が出ますが、出入司は即、却下との判断を下す・・・とここまで書きました。
もっとも、私が藩の財政担当者だとしても、却下するのは当たり前のことです。
25万両の借金があるのに、1000両ほどを借り入れられたとしても、焼け石に水ではないでしょうか?

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ところが、再度の嘆願で、代官より金銭を集める住民たちの苦労を聞いた出入司は、小判にて1000両献上せよとの許可を出します。
小判にするには、寛永通宝であと八百貫文足りない事になりますが、それでも、住民からの借財を受け入れたと言う事です。
しかしながら、残りの八百貫文も、四苦八苦しながらもなんとかかき集め、小判で1000両を作り、藩に貸し付けることになります。

この辺から、ちょっと訳がわからなくなってきました。
なぜ、藩の財政担当者・出入司は、1000両ほどの借財を受け入れたのでしょうか?
しかも、利息の他に、9人に褒美として、出入司の私邸にて賞金(全部で20両ほど)まで与えると言うでは無いですか。

褒美を受け取る場面では、出入司が直接、賞金を渡していますが、人数が一人足りません。
「あと一人はどうした。」
「目が悪いので、歩いて来られませんでした」
「ならば、馬か籠で来れば良いでは無いか」
「子どもの頃より『人は、馬の背に乗ってはならぬ。人は、人の背で担ぐ籠に乗ってはならぬ』との、父の教えを守って居ります」
「この藩で、一番籠に乗っているお方はどなただと心得て居るのじゃ?」

答えはもちろん「お殿様」と言う事なのでしょうが、この場でそういうことを言えば、即打ち首かも知れません。
でも、恐縮して黙って頭を下げていると、苦虫を潰したような顔で、出入司が去って行きます。
今で言えば、不敬罪にあたるような発言なのでしょうが、この件については一切のお咎めも無く、賞金もそのまま持ち帰り、吉岡宿の住民に分け与えたと言う事です。

ますます、私の頭が混乱してきました。
映画の作りがいい加減なのか、何かウラがあるのか・・・と、考えながら見ていましたが、その次のシーンで、突然、羽生君扮するお殿様の登場です。

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造り酒屋の家に皆が集まっているところへ、突然、仙台藩の藩主・伊達重村がやってきました。
藩主の耳に、節約の末に金銭を集めたと言う事が聞こえたのか、
「予も、皆を見習って、倹約をせねばのう・・・」
筆を取り、半紙3枚に「春風」「寒月」「霜夜」と書き
「酒銘にせよ」
そう言って帰って行きます。
「今日は、馬も籠も使わぬ。歩いて帰る」
ゲスト出演の羽生君ですが、重要な役柄ですね。
このシーンで、藩の財政担当者・出入司の、あの苦虫を潰したような顔を思い出し、一人納得です。

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権力に流され、長いものに巻かれるのが日本人だとすれば、自分の欲を捨て、他人のために何かをなしたいと思うのも日本人です。
江戸中期に、町の存続を図るため、無私の想いを貫いた農民たちの姿を描いた話しですが、この映画の主役・穀田屋十三郎は、遺言で、
「誇ることをせず、何の栄誉も受けとらず、子孫には、先祖が偉いことをしたと言ってはならない」と、戒めたということです。

このため、これまで子孫は多くを語らず、この吉岡宿の出来事は、後世に広く語り継がれることもなかったと、ナレーションで語られ、映画は幕を閉じました。

エンドロールでは、RCサクセションの「上を向いて歩こう」が流れてきました。この映画にぴったりの音楽です。
忌野清志郎さんの懐かしい歌声を聞きながら、最後までゆったりと座ってエンドロールを眺めて居ました。

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【キャスト】

穀田屋十三郎(阿部サダヲ)/造り酒屋
菅原屋篤平治(瑛太) /茶師
浅野屋甚内(妻夫木聡) /造り酒屋、質屋 十三郎とは兄弟
とき(竹内結子)/煮売り屋
千坂仲内(千葉雄大)/大肝煎
きよ(草笛光子)/十三郎、甚内の母
先代・浅野屋甚内(山崎努 )/十三郎、甚内の父
加代(岩田華怜)/穀田屋十三郎の子
穀田屋音右衛門(重岡大毅)/穀田屋十三郎の子
なつ(山本舞香)/菅原屋篤平治の妻

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遠藤幾右衛門(寺脇康文) /肝煎
穀田屋十兵衛(きたろう) /味噌屋 十三郎の叔父。
早坂屋新四郎(橋本一郎)/雑穀屋
穀田屋善八(中本賢) /小間物屋
遠藤寿内(西村雅彦) /両替屋

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伊達重村(羽生結弦)/仙台藩 第7代藩主
萱場杢(松田龍平)/出入司、藩の財政担当
橋本権右衛門(堀部圭亮)/代官

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【スタッフ】

監督 中村義洋
原作 磯田道史
脚本 中村義洋 鈴木謙一
製作総指揮 大角正 両角晃一
プロデューサー池田史嗣 三好英明 鎌田恒幹
撮影 沖村志宏
主題歌 RCサクセション
ナレーション 濱田岳

=6月7日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part30)

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Blog記事ランキングで、「殿、利息でござる!」が、「映画の部」の一位になりました。

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

2016年5月16日 (月)

「屋上の道化たち」島田荘司

【内 容】

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まったく自殺する気がないのに、その銀行ビルの屋上に上がった男女は次々と飛びおりて、死んでしまう。
いったい、なぜ?
行ってはいけない屋上とは?

「屋上の呪い」をめぐる、あまりにも不可思議な謎を解き明かせるのは、名探偵・御手洗潔しかいない!

「読者への挑戦」も組み込まれた、御手洗潔シリーズ50作目にあたる書き下ろし傑作長編!

強烈な謎と鮮烈な解決!
本格ミステリーの醍醐味、ここにあり!

【感 想】

御手洗潔シリーズ50作目と言う事で、早速購入しました。
ちなみに、これまでの50冊は、全部初版で持っています。
特に、「占星術殺人事件」の初版(1981年)を持っているというのは、ちょっと自慢です(笑)
なお、初版第一刷のみ、登場人物の名前が、御手洗清(潔)と石岡一美(和己)になって居ます。

このところの島田荘司のミステリは、大層なトリックと見せかけて、実はそうでも無かった・・・というのが多く、少しずっこけ美味でしたが、本作は久々の御手洗潔の登場と言うことで、期待して読みました。

内容を一言で言えば、「自殺するはずのない人たちが、次々に飛び降りる屋上の謎」と言うことなのでしょうが、話がだらだらしすぎて、長編にする必要があったのだろうかと思えてしまいます。
謎解きだけなら、中編で十分です。余計な部分が多すぎて、ちょっと中だるみもしました。

また、大阪の女性が登場しますが、変な大阪弁ですね。私は大阪に住んでいますが、あのような大阪弁を使う女性に会ったことがありません。
時代が違うのかとも思ったりしましたが、時代設定は1991年1月で、舞台は神奈川県T見市と言う事です。
別に大阪弁を使う女性を登場させなくっても良いような展開ですが、終始気になって仕方がありませんでした。
また、変なラーメン屋のおじさんの話なんて、どうでも良い感じです。

それでも、260ページを過ぎたあたりからやっと、御手洗潔と石岡和己の掛け合いも登場し、それ以降は読む速度も早まりましたが、何かドタバタ喜劇の裏側を読んでいるような感じで、今回もずっこけながら読み終えました。

余談です。
読後に知ったことですが、作者の島田荘司さんが、NHKの朝ドラ・「あさが来た」を欠かさず見ていたそうです。
それで本作に最初に登場する女性が大阪出身で、神奈川に行っても大阪弁を話すと言う事は、もしかして朝ドラの影響なのでしょうか?
なので、登場する女性が、今はもう使わなったような、昔の大阪弁を使っているのかも知れないですね(笑)

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年3月 2日 (水)

「安楽探偵」小林泰三

【内 容】

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街いちばんの名探偵の元には、奇妙な依頼人ばかりがやって来る。
熱狂的ファンの中年男に、執拗に真似をされる恐怖を語る人気アイドル。(「アイドルストーカー」)
何者かに太る薬を盛られていると訴えるダイエットマニアの女。(「ダイエット」)
事務所から一歩も出ないものぐさな探偵の推理とは?

全編に仕掛けられた巧妙な罠と黒い笑い。奇才が放つ連作ミステリー。

【目 次】

「アイドルストーカー」
「消去法」
「ダイエット」
「食材」
「命の軽さ
「モリアーティ」

【感 想】

文庫オリジナルの連作短編集です。
4作はWeb文庫で発表されたものですが、最後の2話は、文庫書き下ろしです。

各編とも、ちょっっと変わった依頼が探偵事務所に持ち込まれますが、現場にも行かずに、たちどころに依頼された事柄を解決してしまうという、いわゆる「安楽椅子探偵」ものの話です。
でも、最初の2編は、その謎がほとんどの読者に読めてしまう程度の話です。
ちょっと面白かったのが、第3話の「ダイエット」ですが、何度読み返しても名探偵の出した答えにならないのです。突然のどんでん返しに唖然となってしまいました。

その後の話しも、ちょっと不可解な話だなと思いながら読み進めましたが、やはり最終話に連作短編全体にかかわるオチが用意されていました。
連作短編と言うよりは、6つの章に別れた長編と考えて読む方が良いのではと思います。
最初の2話のつまらない結末に、途中で投げ出してしまいそうでしたが、投げ出さずに良かった・・・というところでした。

☆☆☆★★(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年3月 1日 (火)

「鴨川食堂いつもの」柏井壽

【内 容】

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京都発!心もお腹も温まります。
板前の父と探偵の娘はお迎えする、看板のない食堂へようこそ。
京都・東本願寺近くで鴨川流、こいし親娘が営む食堂では、思い出の「味」を捜してくれるという。

食にA級もB級もありまへんけど、人間にも一流も三流もありまへん。みな同じです。
父と一緒に食べた料亭のかけ蕎麦、娘が結婚前に作ってくれたカレーライス、初恋の相手との思い出が詰まった焼きそば、裏切ってしまった女性の実家で出された餃子、親友の母がふるまってくれたオムライス、空腹に耐えきれず手を出してしまったコロッケ。

食が呼び覚ます温かな記憶にふれ、依頼人は明日への一歩を踏み出してゆく。
連続ドラマ化記念、シリーズ初の文庫書き下ろし!

【目 次】

第一話 かけ蕎麦
親にとって、子どもは幾つになっても子ども。

第二話 カレーライス
人間に、一流も三流もありまへん。

第三話 焼きそば
食捜しはするけど、人捜しはせえへん。

第四話 餃子
罪を許された日の、まかない料理。

第五話 オムライス
好物だったのに、見ると吐き気がしてしまう。

第六話 コロッケ
過ちを認めるのに、遅いも早いもありまへん。

【感 想】

NHKでドラマ化されると言うことで、書き下ろされた6話をまとめたものです。
三冊で、18話を一気読みしました。
同じパターンの話が続くと、なかなか読む方もしんどくなりますので、時間をおいて、読めば良かったとちょっと後悔しています。

テレビの方は、次も見たい・・・と思わせてくれるような演出と、実際のお料理が目に出来るので良いですね。
原作では、料理名がズラリと並んでいるだけでは、どんなものなのか想像できないので困りました。

また、テレビの冒頭に出てくる、忽那汐里さんの京都弁のナレーションが何とも言えず良いですね。

『京都・東本願寺そばにある鴨川食堂には、暖簾も、看板もありません。
「思い出の食、捜します」という一行広告だけを頼りに、ようけだどりつかはります。
はて、今日の迷い人は、どなたさんですやろなぁ・・・』

ちなみに、
第1話   母の肉じゃが
第2話   別れた夫のトンカツ
第3話   祖父と食べたナポリタン
第4話   妻の鍋焼きうどん
第5話   おじいちゃんのハンバーグ
第6話   初恋のビーフシチュー
第7話   父親の海苔弁
最終話   金曜日のチャーハン

いずれにせよ、原作がたくさんあるので、テレビの続編を期待しています。

☆☆☆(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年2月29日 (月)

「鴨川食堂おかわり」柏井壽

【内 容】

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忘れられない、でも二度と味わうことのできない一皿。
京都・東本願寺近くにひっそりと佇む食堂では、そんな記憶の中の味を再現するという。
確執がある父のレシピを知りたいシングルマザー、恋人に過去を告白するため、子供時代の焼飯を捜すモデル、故郷に帰る決意を固めようと、かつて味わった天丼を求める一発屋と呼ばれた歌い手…。

元警察官で料理人の鴨川流、娘のこいし、トラ猫のひるねのもてなしは、人生に迷える人々の背中をやさしく押し出す。
心もお腹も温まる、美味しいミステリー、第二弾!

【目 次】

第一話 海苔弁 
料理下手な父親が覚えた、たった一つの手料理。
近体大の北野恭介は、水泳界のホープだ。彼は中一の夏から中三の卒業まで、父親に毎日同じ弁当を持たされたという。

第二話 ハンバーグ 
息子の大好きなハンバーグが許せない母親の後悔。
食ジャーナリストの竹田佳奈は、息子の一番好きな食べ物が、実家のハンバーグであることが気に入らない。

第三話 クリスマスケーキ 
息子を交通事故で亡くした夫婦のけじめ。
和菓子屋『香甘堂』を営む坂本正幸夫妻は、六年前に一人息子を亡くした。過去に踏ん切りをつける決心をしたが…。

第四話 焼飯 
知られたくない、でも忘れられない過去がある。
白崎初子は、鴨川こいしと大学の同級生。初子は、大企業の御曹司からプロポーズを受けているという。

第五話 中華そば 
引き継がれたものは、夢を追い続ける心。
小野寺勝司は大学時代、バンド練習を北大路橋の下で行っていたが、そこにはいつも同じ屋台が出ていた。

第六話 天丼 
迷わん人生てなもん、どこにもありまへん。
「北のひとつ星」という大ヒット曲の歌い手藤川景子は帰郷を決意したが、その前にかつてご馳走してもらった天丼を食べたいという。

【感 想】

本書の第一作目を読んで、すぐさま本屋さんに行き、二作目(本書)と三作目をまとめて買ってきました。
設定が面白いし、雰囲気も良いのですが、話の膨らみがありません。
「起・承・転・結」と話が進んでいくものと思って読んでいますが、「転」にあたる話がありません。
そのせいなのか、薄っぺらな話しになってしまっています。
読み終えて、「ああ、良い話だったなぁ・・・」で終わってしまう感じです。なかなか感想が書きづらい内容になっています。

ところで、NHKのBSプレミアムでドラマ「鴨川食堂」が放送されていますが、「転」の部分を上手くプラスして、膨らみのある話しにしています。
2月28日が最終回で、ちょっと辛気くさい話が展開するのが気に入りませんし、変な京都弁を使っているのを我慢すれば面白いドラマです。
第1話から今日の最終回まで、全話見てしまいました。

☆☆☆(50点満点で、☆…10点 ★…2点です)

2016年2月28日 (日)

X-ミッション

010

【解 説】

パトリック・スウェイジ&キアヌ・リーブス主演、キャスリン・ビグロー監督による1991年の名作アクション「ハートブルー」をリメイクした作品
原題は「Point Break」

アスリートによる犯罪集団への潜入捜査を敢行するFBI捜査官の活躍を描く、クライムアクション。
サーフィンやスノーボード界などの有名アスリートがスタントマンとして出演。

CGを使用しない、トップアスリートたちの生身のスタントによって迫力のアクションシーンを創出している。
(上映時間 114分)

【ストーリー】

若きFBI捜査官ジョニー・ユタ(ルーク・ブレイシー)に、超一流アスリートチームに潜入せよとのミッションが下される。

600

エクストリーム(過激な要素を持った)・スポーツのカリスマである、ボーディ(エドガー・ラミレス)が率いるこの集団には、重大な疑惑がかけられていた。

900

その天才的なスポーツ・スキルを駆使し、前代未聞の方法で次々と犯罪に手を染めているというのだ。

400

自らも元アスリートであるユタは、ボーディに度胸と才能を認められ、チームに招き入れられることに成功する。

200

しかしながら、命を危険に晒しながら共に行動するうちに、ユタはボーディの究極の信念に心が奪われていく。

800

果たして、ユタはFBI捜査官として決定的な証拠を掴み、彼らを捕えることができるのか?

300

そして明かされる、彼らの本当の目的とは?

【感 想】

映画館で観ました。3D上映もありましたが、私は普通の2Dでした。
この映画は、「ハートブルー」という、キアヌ・リーブス主演の映画をリメイクした、サスペンス・アクション作品だと言う事ですが、CG(コンピュータ グラフィック)を一切使わないで、一流のアスリートやスタントマンによる実際の演技で作られているということです。

120

冒頭の、オートバイでオフロードをぶっ飛ばす、モトクロス競技でも見ることの出来ないような、道なき道を走行するシーンで、まず度肝を抜かれました。
カメラワークにも驚かされましたが、岩肌がむき出した雪山からのスノーボードでの滑降や、空中からの落下シーンなどは、CG無しだと思うと余計に迫力がありました。

ただし、ストーリーはとてもひどいです。
スポーツアクションを見せるためだけに、適当に辻褄を合わせているような感じで、意味不明のところがたくさんありましたが、それでも次々に登場するアクションに、最初から最後まで退屈することなく楽しめました。

でも、この映画のうたい文句は、「CGは一切使っていない」という事ですが、天候や海の荒れ、鉱山の爆破シーンやトラックが落ちていくシーンなどは、特殊効果が使われていたのではないかと思われます。
鉱山を爆破して、オートバイで崖を下って逃げていく所に、砕けた岩が次々に落ちていくのに一つもあたらないなんて、明らかにおかしいです。
おそらく、スポーツアクションのシーンのみ、CGなしで実際に誰かが演じていると言う事ではないでしょうか?

【キャスト】

150

ボーディ:エドガー・ラミレス
ジョニー・ユタ:ルーク・ブレイシー
サムサラ:テリーサ・パルマー
アンジェロ・パパス レイ・ウィンストン
クロウダー:トビアス・サンテルマン
FBI捜査官:デルロイ・リンドー

【スタッフ】

監督 エリクソン・コア
脚本 カート・ウィマー
撮影 エリクソン・コア 、 エリクソン・コア
視覚効果監修 ジョン・ネルソン 
衣装デザイン リジー・クリストル 
音楽 トム・ホルケンボルフ

2016年2月 8日 (月)

信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)

006

【解 説】

2014年10月から12月に放送されて人気を博した、石井あゆみの漫画を基にしたテレビドラマの劇場版。

戦国時代にタイムスリップした上に、自分と瓜二つであった織田信長の代わりを務めることになった高校生の運命を追う。

『ルパン三世』などの小栗旬、『大奥』などの柴咲コウ、『S -最後の警官-』シリーズなどの向井理、『ミロクローゼ』などの山田孝之ら、テレビドラマ版のメンバーが一堂に会する。
監督もテレビ版を手がけた松山博昭が続投した。
迫力満点の合戦シーンに加え、武将たちの絆や思惑が交錯する熱いドラマも必見。

【あらすじ】

戦国時代にタイムスリップした歴史が苦手な高校生サブロー(小栗旬)は、自分と顔が酷似した織田信長(小栗旬)と遭遇する。

010

武将の座を投げ出したいと考えていた彼と入れ替わったサブローは、知らず知らずのうちに史実の信長と同じ道を突き進んでいく。

014

安土城を築き上げ、妻・帰蝶(柴咲コウ)から慕われ、恒興(向井理)をはじめとする家臣からの信頼が厚いサブロー。

018

明智光秀を名乗って生きる信長は、そんな彼に嫉妬し、憎しみを抱くように。

015

やがて信長は、本能寺で帰蝶との結婚式を挙げるサブローを亡き者にしようとするが・・・・・・。

【感 想】

2月7日に映画館で観ましたが、日曜日と言うこともあって、結構たくさん入っていました。

012

映画の方は、安土城が完成したところから話が始まります。
サブローがタイムスリップして、信長と入れ替わり、妻の帰蝶と池田恒興にはニセモノと知られながらも、織田家の当主として領地を広げていく・・・という、テレビドラマでの話を踏まえたものとして話が進んでいきます。映画の冒頭のところで、その辺のあらすじが、テレビで見た画像で、簡単に紹介されますが、あまりにも簡単すぎて、おそらくテレビドラマを見ていない人には、役柄や細かな人間関係がよくわからなかったのではないでしょうか?

016

今回のメインは、「本能寺の変」から「山﨑の戦い」になるので、光秀と秀吉に焦点が当てられた演出になって居ます(この辺の流れを書いてしまうと、ネタバレしてしまうので、省略して話を進めます)が、「史実の通り」(と言う言葉が、何度も映画に登場します)に話が進んでいくはずなのに、結構アバウトな流れになっており、ツッコミどころはたくさんあります・・・、と言うような野暮なことは言わないでおきましょう(笑)
でも、最後まで退屈しないで、それなりに楽しめました。

013

全体の流れとしては、コメディタッチで作られていますが、帰蝶役の柴咲コウさんと羽柴秀吉役の山田孝之さんが登場すると、コメディじゃなくなってしまうところが良いですね。
特に、柴咲コウさんのツンデレぶりがなかなか素敵で、これほど演技が上手だとは思いませんでした。 
余談ですが、次回のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の主役、井伊直虎を演じられるそうですが、今から楽しみです。

020

話は、「史実の通り」に進んでいき、信長が本能寺で死に、光秀が山﨑の戦いで敗れ殺されてしまうので、小栗旬さんが演じている織田信長と明智光秀は死んでしまうことになりますが、ツッコまれることを恐れない、ユニークなストーリーに仕上がっていますので、本能寺の事件以降は面白く観ることが出来ました。
最後に、今回は、サブローと帰蝶の絡みが多くて、「ツネちゃん」こと池田恒興役の向井理さんの登場シーンが、イマイチ少なかったのが残念でした。

【キャスト】

002

小栗旬      サブロー/織田信長/明智光秀        
柴咲コウ     帰蝶    
向井理      池田恒興    
山田孝之     羽柴秀吉            
藤ヶ谷太輔     前田利家        
水原希子     市
濱田岳          徳川家康
古田新太       松永弾正久秀
高嶋政宏       柴田勝家
でんでん        沢彦
勝矢             蜂須賀小六
阪田マサノブ     丹羽長秀
阿部進之介      佐々成政
北村匠海         森長可

【スタッフ】

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監督 - 松山博昭
原作 - 石井あゆみ『信長協奏曲』(小学館刊)
脚本 - 西田征史、岡田道尚、宇山佳祐
音楽 - ☆Taku Takahashi
主題歌-Mr.Children
製作 - 石原隆、久保雅一
エグゼクティブ・プロデューサー - 臼井裕詞
プロデューサー - 稲葉直人、村瀬健、古郡真也
メイク - 佐々木精一
床山 - 泉水貴光
結髪 - 島田紗妃
配給 - 東宝
上映時間 126分

=2月14日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part29)

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Blog記事ランキングで、「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」が、「映画の部」の一位になりました。

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

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