映画のパンフレット

【映画】あ行 Feed

2016年2月28日 (日)

X-ミッション

010

【解 説】

パトリック・スウェイジ&キアヌ・リーブス主演、キャスリン・ビグロー監督による1991年の名作アクション「ハートブルー」をリメイクした作品
原題は「Point Break」

アスリートによる犯罪集団への潜入捜査を敢行するFBI捜査官の活躍を描く、クライムアクション。
サーフィンやスノーボード界などの有名アスリートがスタントマンとして出演。

CGを使用しない、トップアスリートたちの生身のスタントによって迫力のアクションシーンを創出している。
(上映時間 114分)

【ストーリー】

若きFBI捜査官ジョニー・ユタ(ルーク・ブレイシー)に、超一流アスリートチームに潜入せよとのミッションが下される。

600

エクストリーム(過激な要素を持った)・スポーツのカリスマである、ボーディ(エドガー・ラミレス)が率いるこの集団には、重大な疑惑がかけられていた。

900

その天才的なスポーツ・スキルを駆使し、前代未聞の方法で次々と犯罪に手を染めているというのだ。

400

自らも元アスリートであるユタは、ボーディに度胸と才能を認められ、チームに招き入れられることに成功する。

200

しかしながら、命を危険に晒しながら共に行動するうちに、ユタはボーディの究極の信念に心が奪われていく。

800

果たして、ユタはFBI捜査官として決定的な証拠を掴み、彼らを捕えることができるのか?

300

そして明かされる、彼らの本当の目的とは?

【感 想】

映画館で観ました。3D上映もありましたが、私は普通の2Dでした。
この映画は、「ハートブルー」という、キアヌ・リーブス主演の映画をリメイクした、サスペンス・アクション作品だと言う事ですが、CG(コンピュータ グラフィック)を一切使わないで、一流のアスリートやスタントマンによる実際の演技で作られているということです。

120

冒頭の、オートバイでオフロードをぶっ飛ばす、モトクロス競技でも見ることの出来ないような、道なき道を走行するシーンで、まず度肝を抜かれました。
カメラワークにも驚かされましたが、岩肌がむき出した雪山からのスノーボードでの滑降や、空中からの落下シーンなどは、CG無しだと思うと余計に迫力がありました。

ただし、ストーリーはとてもひどいです。
スポーツアクションを見せるためだけに、適当に辻褄を合わせているような感じで、意味不明のところがたくさんありましたが、それでも次々に登場するアクションに、最初から最後まで退屈することなく楽しめました。

でも、この映画のうたい文句は、「CGは一切使っていない」という事ですが、天候や海の荒れ、鉱山の爆破シーンやトラックが落ちていくシーンなどは、特殊効果が使われていたのではないかと思われます。
鉱山を爆破して、オートバイで崖を下って逃げていく所に、砕けた岩が次々に落ちていくのに一つもあたらないなんて、明らかにおかしいです。
おそらく、スポーツアクションのシーンのみ、CGなしで実際に誰かが演じていると言う事ではないでしょうか?

【キャスト】

150

ボーディ:エドガー・ラミレス
ジョニー・ユタ:ルーク・ブレイシー
サムサラ:テリーサ・パルマー
アンジェロ・パパス レイ・ウィンストン
クロウダー:トビアス・サンテルマン
FBI捜査官:デルロイ・リンドー

【スタッフ】

監督 エリクソン・コア
脚本 カート・ウィマー
撮影 エリクソン・コア 、 エリクソン・コア
視覚効果監修 ジョン・ネルソン 
衣装デザイン リジー・クリストル 
音楽 トム・ホルケンボルフ

2015年7月19日 (日)

アメリカン・スナイパー

【解 説】

Poster2アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。
アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のスナイパーであった彼が、イラク戦争で数々の戦果を挙げながらも心に傷を負っていくさまを見つめる。

メガホンを取るのは、『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッド。『世界にひとつのプレイブック』などのブラッドリー・クーパーが主演を務め、プロデューサーとしても名を連ねている。
過酷な戦場での実情や、故郷に残してきた家族への思いなど、ひとりの兵士の姿を通して、現代のアメリカが直面する問題を浮き彫りにする。
戦争とは何かを問うテーマに加え、壮絶な戦闘描写も見もの。

【ストーリー】

米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊し、イラク戦争に狙撃手として派遣されたクリス(ブラッドリー・クーパー)。

001

その任務は“どんなに過酷な状況でも仲間を必ず守ること”。
狙撃精度の高さで多くの仲間を救ったクリスは “レジェンド”の異名を轟かせるまでになる。

003

しかし、敵の間にもその腕前が知れ渡り、“悪魔”と恐れられるようになった彼の首には18万ドルの賞金が掛けられ、彼自身が標的となってしまう。

004

一方、家族はクリスの無事を願い続けていた。

006

家族との平穏な生活と、想像を絶する極限状況の戦地。

005

過酷なイラク遠征は4度。
愛する家族を国に残し、終わりのない戦争は幾度となく彼を戦場に向かわせる。

002

度重なる戦地への遠征は、クリスの心を序々に蝕んでゆく・・・。

【感 想】

最初のシーン・・・、アメリカ海兵隊の戦車が随伴歩兵と共に進撃していくその後方の建物の屋上で、スナイパーであるクリス・カイルがライフルを手に掃討作戦の様子をじっと見守っているところに、海兵隊の進路上に不審な親子を発見したカイルは、母親が子供に対戦車手榴弾を手渡すのを確認して、子供に照準を合わせ、まさしく引き金に指をかけるところで、銃声と共にカイルの子ども時代の話に画面が代わります。
隣に居た海兵隊員から、「間違ったら軍刑務所行きだぞ」と忠告されますが、その言葉に反応もせず、何のためらいも無く幼い子どもに銃口を向けているところは、少し寒気がしました。

アメリカ大使館爆破事件をテレビで見たカイルは、愛国心から海軍に志願しますが、その厳しい訓練の様子は、少し前に観た映画「セッション」の鬼コーチをふと思い出してしまいました(笑)
酒場で知り合った女性・タヤと結婚し、平和な日々を過ごして居たところ、「アメリカ同時多発テロ」をきっかけに戦争が始まり、カイルも戦地に向かうと言うことになります。

その後の展開は、2時間14分と言う長さを感じさせないほど、固唾をのみながら映画を観ていました。
戦争のシーンというと、先の戦争でのイメージが強いため、イラクでの戦闘状態の様子は、よく知りませんでしたが、目を覆うばかりの状況で、迫力のある映像に圧倒されてしまいました。

戦場から帰還した兵士たちが、PTSDで苦しむことが多いと言うことは良く聞く話ですが、まさに想像を絶するようなすさまじい戦闘シーンで、確かに正常な神経では、あの場所には居られないでしょうね。

四度目に帰還してきたカイルが、カウンセリングを受けているシーンで、
「戦地で160人以上も射殺したと言う事ですが、もしかして経験しなければ良かったと思った事は?」と、カウンセラーが質問しますが、
「悔やむのは、救えなかった仲間のこと」だと答えています。
最前線で戦っているときは、国や仲間を救う使命感と、自分が死と向かい合っているという恐怖感とで、平和ボケしている私たちには理解できない精神状態になるんでしょうね。
人間らしい心の持ち方が出来ない状況に長い間おかれてきたために、除隊後には原因不明の体調不良や精神疾患に悩まされるのかも知れません。

彼の妻・タヤが、戦地から帰国するたびに変わっていく夫の姿に苦しみ、人間らしさを取り戻してほしいと嘆願しますが、少しずつカイルとの溝が広がっていくのを感じているタヤの気持ちを思うと、何とも心が痛みます。

クリスが幼い頃、父親から「お前は羊たちを狼から守る番犬になれ」と教えられてきたことで、自分がアメリカを守るという責任感に満ち溢れ、戦場での活躍に繋がっていくのですが、除隊後、家族や友人と庭で遊んでいた時に、子どもとじゃれていた犬に突然襲いかかると言うのは、何とも象徴的なシーンでした。

また、最後の戦闘シーンで、爆弾らしき物を抱えた子どもに、「(爆弾を)捨てろ」とつぶやきながらライフルの照準を合わせ、引き金を引こうとする瞬間に、子どもがその爆弾らしき物を捨てて走って行くところで、カイルの顔がアップになりますが、ホッとしたような何とも言えない表情が印象に残りました。

この映画を観ていて一番思ったことは、近い将来、この状況の中に置かれてしまう日本人が出てくるのでは無いかという事です。
戦後70年たって、平和ボケしてしまっている私たちですが、戦争の状態とは、正常な神経では生きていけない世界なんだと言うことを再度認識しないといけないと思いますし、この映画のような場所に、日本の若者を派遣しようとするのは、何とも言いがたい恐怖を感じます。
そんな所に突き進んでいこうとしている戦争を知らない政治家たちにも、この映画を観て、考えて欲しいものです。

【キャスト】

012

クリス・カイル - ブラッドリー・クーパー
タヤ・カイル- シエナ・ミラ
コルトン・カイル - マックス・チャールズ
マーク・リー - ルーク・グライムス
ゴート=ウィンストン - カイル・ガルナー
マーテンス提督 - サム・ジェーガー
ライアン・“ビグルス”・ジョブ - ジェイク・マクドーマン
“D”/ダンドリッジ - コリー・ハードリクト
アル=オボーディ師 - ナヴィド・ネガーバン
スニードDIA捜査官 - エリック・クローズ
スクワール - エリック・ラディーン
トニー - レイ・ガイエゴス
ドーバー - ケヴィン・ラーチ
ギレスピー海軍大佐 - ブライアン・ハリセイ
ウェイン・カイル - ベン・リード
デビー・カイル - エリース・ロバートソン
ジェフ・カイル - キーア・オドネル
サラ - マーネット・パターソン
ロール教官 - レオナルド・ロバーツ
ムスタファ - サミー・シーク
虐殺者 - ミド・ハマダ

【スタッフ】

監督 クリント・イーストウッド
脚本 ジェイソン・ホール
原作 クリス・カイル『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』(原書房)
撮影 トム・スターン

=7月25日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part27)

143

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2015年5月 5日 (火)

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

513

【解 説】

『ラブ・アクチュアリー』などで知られる、ラブコメに定評のあるリチャード・カーティス監督の、監督引退作となるラブストーリー。
恋人や友人、家族と育む何げない日常の大切さを描く。

イギリス南西部に住む青年ティムは自分に自信がなく、ずっと恋人ができずにいた。
父親から、自分たちの一族の男子には、タイムトラベルが出来る能力がある事を告げられた青年が、恋人を見つけるためにタイムトラベルを重ね、人生における様々な事柄を学んでいく姿がつづられる。

『ハリー・ポッター』シリーズなどのアイルランド出身の新鋭、ドーナル・グリーソンが人間味あふれる主人公を熱演するほか、『きみに読む物語』などのレイチェル・マクアダムス、『ラブ・アクチュアリー』にも出演したビル・ナイらが共演。

【ストーリー】

イギリス南西部で、ティム(ドーナル・グリーソン)はちょっと風変わりな両親と妹、伯父ら家族とともに暮らしていた。

368

家族との仲は良好であるものの、自分になかなか自信が持てず、恋人ができないでいた。

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21歳の誕生日を迎えた日、ティムは父(ビル・ナイ)からある秘密を告げられる。
それは、一族に生まれた男子にはタイムトラベル能力が備わっているというものだった。

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はじめは冗談かと思い信じることができないでいたが、能力の使い方を覚えてからは、恋人を作るために繰り返しタイムトラベルをするようになる。

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弁護士を目指すティムはロンドンへ移住。そこで出会ったメアリー(レイチェル・マクアダムス)に恋をする。

698

しかし、タイムトラベルしたせいでメアリーと出会っていないことになってしまう。なんとか彼女の愛を得た後も、タイムトラベルを繰り返して人生の成功を掴もうとするティム。

321

やがて、どんなにタイムトラベルをしようと、誰にでも起こりうる不運や波乱を避けることはできないことを知り、本当の幸せに気付いていく・・・。

【感 想】

DVDで観ました。124分の映画でしたが、退屈しないで最後まで楽しめました。

638

タイムトラベラーものはこれまでも良くありましたが、過去が変わることで、現在の状況が変わってくる事の整合性といったものが、曖昧にされたまま進んでいくのには驚きました。
過去が変わっても、全くお構いなしです。というより、変えるためにタイムスリップしているような感じで、話が進んでいきます。
ティムが父から、過去限定のタイムトラベルが出来ると聞いてすぐに試してみますが、現在に帰ってくる方法を聞かないまま過去に行ってしまうのは、設定がちょっといい加減のような気がしました。

また、ちょっとした失敗や都合の悪い出来事があれば、何度も過去に戻ってやり直したり、修正したりしていますし、自分に関わることと言う限定があるとしても、他人の人生まで変えてしまうことが、当たり前のように描かれています。
タイムトラベルについては、よくわからない事だらけですが、これらについてはコメディだと言うことで、目をつぶって観ないといけないのでしょうね。

このように、突っ込みどころ満載の映画でしたが、とても楽しく観ることが出来ました。
この映画のように、失敗したりちょっとした失言をしても、過去に行ってやり直せるって良いですね。失敗が怖くなくなって、何にでも大胆になれそうですし、楽しかった日は、その日をもう一度繰り返すというのも良い考えです(笑)

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舞台がイギリスと言うことで、ティムがロンドンに出てきて、会社に出勤するところには、アビー・ロードの横断歩道が登場しました。
ビートルズになった気分で横断歩道を横切る人たちに思わずニンマリしてしまいました(笑)

ティムとメアリーが最初に出会うレストランが、「暗闇レストラン」。
こんなのが実際にあるのだろうかと思いましたが、調べて観ると、ロンドンにあるんですね。視覚障害者のウェーターに付き添われて席に着き、まっ暗闇の中で食卓を囲むそうです。
ミステリアスですね(笑)
また、主人公一家が住んでいるコーンウィル地方の海岸線は、イギリスで一番長いということで、とても綺麗でしたし、ティムが列車を降りた駅は、良く耳にするパディントン駅です。
その他、イギリスの名所をいろいろ楽しめました。ロンドンの町並みがとても素敵です。一度行ってみたい・・・と、思ってしまいました(笑)

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一番印象に残ったところは、この映画では、とても効果的に音楽が使われていたところです。
最近の映画音楽って、エンドロールに突然流れてくると言うのが多いようですが、映画の途中に、時間が流れていくような感じで、主題歌「How Long Will I Love You」や「The Luckiest」が効果的に挿入され、素敵な感じで画面が過ぎていきます。映画を観終わっても、音楽が耳に残っているのは良いですね。主題歌や挿入歌を聴くと、映画のワン・シーンが脳裏によみがえってきます。

324

最後に、メアリーを演じていた「レイチェル・マクアダムス」、可愛いです。
最初の登場シーンでは、あまりイカさない(今は「イケてない」というのかな?)、ちょっと野暮ったい感じのする女性でしたが、映画が進んでくるにつれて、だんだん可愛く見えてくるから不思議です。
映画を観ていると、とても1978生まれ(映画の撮影当時、36歳とは驚きです)には見えませんでした。

あまり映画の内容には、触れませんでしたが、いろんな意味で楽しめたと言うことで良いのじゃ無いでしょうか・・・。

345

【キャスト】

111

ドーナル・グリーソン :ティム
レイチェル・マクアダムス :メアリー
ビル・ナイ :ティムの父親
トム・ホランダー :ハリー
マーゴット・ロビー :シャーロット
リディア・ウィルソン :キットカット
リンゼイ・ダンカン :ティムの母親
リチャード・コーデリー :ディムの伯父
ジョシュア・マクガイア :ローリー
ウィル・メリック :ジェイ
バネッサ・カービー :ジョアンナ
トム・ヒューズ :ジミー
キャサリン・ステッドマン :ティナ

【スタッフ】

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監督:リチャード・カーティス
製作:ティム・ビーバン
    エリック・フェルナー
    ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ
製作総指揮:リチャード・カーティス
        ライザ・チェイシン
        アメリア・グレンジャー
脚本:リチャード・カーティス
撮影:ジョン・ガレセリアン
美術:ジョン・ポール・ケリー
衣装:ベリティ・ホークス
編集:マーク・デイ
音楽:ニック・レアード=クロウズ

=5月10日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part24)

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2015年4月11日 (土)

インターステラー

【解 説】

Poster2

「ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督によるオリジナル作品。
世界的な飢饉や地球環境の変化によって人類の滅亡が迫る近未来を舞台に、家族や人類の未来を守るため、未知の宇宙へと旅立っていく元エンジニアの男の姿を描く。

主演は、「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。共演に『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』などのジェシカ・チャステイン、ノーラン作品常連のマイケル・ケインほか。
ノーラン監督の実弟ジョナサン・ノーランが脚本に参加。撮影は、「裏切りのサーカス」「her 世界でひとつの彼女」などを手がけて注目を集めているホイテ・バン・ホイテマが担当。

深遠なテーマをはらんだ物語に加え、最先端VFXで壮大かつリアルに創造された宇宙空間の描写にも圧倒される。

【あらすじ】

近未来。
地球規模の植物の枯死、異常気象により、人類は滅亡の危機に立たされていた。

001

元宇宙飛行士クーパーは、義父と15歳の息子トム、10歳の娘マーフとともにトウモロコシ農場を営んでいる。

002

マーフは、自分の部屋の本棚から本がひとりでに落ちる現象を幽霊のせいだと信じていたが、ある日クーパーは、それが何者かによる重力波を使った二進数のメッセージではないかと気が付く。

005

クーパーとマーフはメッセージを解読し、それが指し示している秘密施設にたどり着く。
そこでクーパーはかつての仕事仲間のブランド教授と再会し、大昔に無くなったNASAが秘密裡に復活し活動を続けていることを知らされる。

NASAは土星近傍のワームホールを通り抜けて、別の銀河に人類の新天地を求めるプロジェクト「ラザロ計画」を遂行していたのだった。

007

48年前に”彼ら”によって創造されたと考えられているワームホールを通過し、すでに三名の先駆者達が、入植が期待できる惑星から信号を送り返している。

004_2

教授は、第二の地球となり得る惑星を探すミッションに、パイロットとして参加するようクーパーを説得する。帰還できたとしてもそれがいつなのか不明なミッションに、マーフは激しく反対する。
二人は和解の機会を得られないまま、クーパーは出発の日を迎えてしまう。

008

クーパーはマーフに「必ず戻ってくる」とだけ言い残し、ブランド博士の娘のアメリアらとともに宇宙船エンデュランスに搭乗し地球を後にする。

【感 想】

010SFは、小説も映画もそれほど好きじゃ無いのですが、DVDで観ました。
169分(2時間49分)と言う、とても長い映画ですが、長さを感じさせない迫力がありました。

ところで、キャストの一覧を見ていると、そこに、「マイケル・ケイン」を発見しました。懐かしい名前です。
1972年に観た映画・「探偵スルース」では、ローレンス・オリビエ扮する老ミステリー作家に、いいように翻弄させられてしまう青年を演じていましたが、当たり前のことですが(43年も前の映画なので)、今では立派な老人になっていました(笑)

さて、映画ですが、地球には住めなくなってきたので、人類が移住できるような惑星を捜しに、宇宙へ旅立つと言う話です。
あらすじを読んだときは、「宇宙戦艦ヤマト」のような話だと思いましたが、そんなに軽く観ていられる映画じゃ無いと言うことがわかり、途中から本腰を入れてみました。

009

すでに、三名の先駆者達が、入植が期待できる惑星から信号を送り返しているので、そこを訪れて行くという事ですが、三ヶ所を回る間に、燃料が足りなくなり、最終的には、「宇宙船クルー」は地球に帰る事が出来なくなります。
ところが、地球ではクーパーの娘のマーフィが、「重力の謎」を解明し、すでに人類は地球を捨て、土星周辺にスペースを作って移住していたのですが・・・。

006

地球上で起こっている現状と、宇宙船内で行われていることが交互に出てきますが、当然のことながら、宇宙船内と地球上では時間のずれが起きてきます。

映画は、宇宙船内の時間を基準に描かれているので、地球上では早く時間が過ぎて行っています。
この辺は、映画を観ている人を、退屈させないように、上手く作られています。

そして、ラストの30分です。
一気にラストになだれ込む描き方は、見応えがあり、なかなか興味深いものでした。
ネタバレを書かないで(特にラスト部分の)感想を書くのは難しい映画なのですが、ラストは、マーフィーの独白に合わせてアメリアの映像が流れて終わっていきます。なにか、人類の今後の行く末を暗示させるような終わり方でした。

最後に、マーフィーの幼少期を演じていた女優・マッケンジー・フォイが良いですね。
ポスターにはマーフィー役として、ジェシカ・チャステインの名前が書かれていますが、幼少期のマッケンジー・フォイがメインのような気がします(笑)

【キャスト】

T0016840p[宇宙船クルー]
クーパー - マシュー・マコノヒー
アメリア・ブランド - アン・ハサウェイ
ロミリー - デヴィッド・ジャーシー
ドイル - ウェス・ベントリー
マン博士 - マット・デイモン

[地球の人物]
マーフィー(マーフ) - ジェシカ・チャステイン
マーフ(幼少期) - マッケンジー・フォイ
マーフ(老年期) - エレン・バースティン
ブランド教授 - マイケル・ケイン
トム - ケイシー・アフレック
トム(幼少期) - ティモシー・シャラメ
ドナルド - ジョン・リスゴー
ロイス - リーア・ケアンズ
ゲティ - トファー・グレイス
校長 - デヴィッド・オイェロウォ
ウィリアムズ - ウィリアム・ディヴェイン
管理者 - エリス・ガベル
ハンリー先生 - コレット・ウォルフ

【スタッフ】

監督・製作・脚本: クリストファー・ノーラン
製作: エマ・トーマス / リンダ・オブスト
脚本: ジョナサン・ノーラン
製作総指揮: キップ・ソーン / ジェイク・マイヤーズ / ジョーダン・ゴールドバーグ
撮影: ホイテ・ヴァン・ホイテマ
美術: ネイサン・クローリー
衣装: メアリー・ゾフレス
編集: リー・スミス
音楽: ハンス・ジマー
視覚効果監修: ポール・フランクリン

=4月18日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part20)

132

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117また、ブログランキングでも一位になりました。

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2015年3月19日 (木)

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

【解 説】

01

第二次世界大戦中に、ナチスドイツの暗号機エニグマの解読に取り組み、のちに同性間性行為のかどで訴追を受けたイギリスの暗号解読者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。
劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。
監督は『ヘッドハンター』などのモルテン・ティルドゥム。
チューリングを理解し、支える女性ジョーン・クラークにキーラ・ナイトレイをはじめ、『イノセント・ガーデン』などのマシュー・グード、『裏切りのサーカス』などのマーク・ストロングら実力派が共演。

第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。
原題は「The Imitation Game」。上映時間:115分

【あらすじ】

1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が開幕。
天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府の機密作戦に参加し、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に挑むことになる。

02

エニグマが“世界最強”と言われる理由は、その組み合わせの数にあった。
暗号のパターン数は、10人の人間が1日24時間働き続けても、全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるというのだ--!

05

暗号解読のために集められたのは、チェスの英国チャンピオンや言語学者など6人の天才たち。
チームは暗号文を分析するが、チューリングは一人勝手に奇妙なマシンを作り始める。子供の頃からずっと周囲から孤立してきたチューリングは、共同作業など、はなからするつもりもない。 

04

両者の溝が深まっていく中、チューリングを救ったのは、クロスワードパズルの天才ジョーン(キーラ・ナイトレイ)だった。

07

彼女はチューリングの純粋さを守りながら、固く閉ざされた心の扉を開いていく。

06

そして初めて仲間と心が通い合ったチューリングは、思わぬきっかけで遂にエニグマを解読する。

12

しかし、本当の戦いはここからだった。
解読した暗号を利用した極秘作戦が計画されるが、それはチューリングの人生はもちろん、仲間との絆さえも危険にさらすものだったのだ。

03

さらに自分に向けられるスパイ疑惑。
そしてチューリングが心の奥に隠し続け、ジョーンにすら明かせなかった、もう一つの大きな悲しい秘密。

13

あらゆる秘密と疑惑が幾重にも積み重なり、チューリングの人生は思わぬ方向へと突き進んでいくが--。

【感 想】

大阪市内へ行く用事があったので、何もしないでそのまま帰ってくるのは、電車代がもったいない・・・と言うことで、全く予備知識の無いまま、この映画を見ることになりました。
理由は、暗号機エニグマを解読した数学者の話と言うことだからです。

11

冒頭から、ちょっと自信過剰気味で、鼻持ちならない主人公が登場します。
1951年、数学者アラン・チューリング (ベネディクト・カンバーバッチ)の家が荒らされ、2人の警官が捜査に当たる所から始まります。不審に感じた刑事に取り調べを受けたチューリングは、政府暗号学校(ブレッチリー・パーク)で働いていた頃を回顧するという形で、それまで秘密にされてきた暗号解読の任務について話し出す・・・と言う設定です。

その話の途中に、1927年にアラン・チューリングが入学していた寄宿学校での様子をはじめ、クラスの友人に触発され、暗号に興味を持っていく過程や、その友人(男子)に恋心を抱いていくところが、何度かに分けて挿入されていきます。

1927年の話は、学生時代のことなのでその時代の事だとわかるのですが、1951年と1940年頃の話が、最初のうちはどちらがどっちなのか、どうもわかりづらかったです。
映画館も、以前でしたら、映画も入れ替え制じゃ無かったので、最初の10分ほどをもう一度観てから出てくると言うこともよくありましたが、今は入れ替え制なので、そういうことができないのは残念です。
DVDが発売されたら、冒頭の部分を再度しっかり見てみないといけないですね。

設定では、主人公は数学者と言うことですが、今で言うならば、電子工学の専門家といった感じです。
映画では、ナチスドイツの暗号機・エニグマで作られた暗号を、計算式を作って解くのじゃ無く、電子機器を作って解読すると言う新しい方法をアラン・チューリングが独自に考え出し、その機械を作って解読するまでの話と、解読してからの苦悩を描いています。

たとえば、暗号が解読できたとしても、そのことが相手側にわかってしまうと、せっかくわかった暗号解読の方法が無駄になってしまうので、別の方法で相手の作戦の情報が入ってきたことにして置くわけです。
暗号解読ができたと言うことは、ドイツ側だけでは無く、味方にも秘密事項としていなければいけないし、そのために、攻撃されるとわかっていても、わざと見捨てることで、暗号が解読されていないと、ドイツ側に思い込ませると言うことです。
どの作戦に援軍を送り、ドイツ側のどの攻撃を見捨てるか・・・と言うことを決めるのは、感情を持っている人間には難しいですね。

14

観る前は、暗号解読に取り組んだ数学者の話だと思っていましたが、解読した後の人間関係が面白い映画でした。
同性愛を告白し、婚約者とも別れ、戦後は暗号解読が秘密事項のため、その偉業が誰にも知られないまま、淫らな行為(同性愛)を犯したとして有罪となりますが、服役か化学的去勢(女性ホルモンの投与)のどちらかの選択を迫られ、仕事を続けるために後者を選ぶというところで話が終わります。

その後は、1954年に自殺したこと。1967年にイングランドでは同性愛が合法になったこと。2013年にエリザベス女王によってに恩赦されたと言うことなどが、テロップでの経過説明で話が続きますが、何か、尻切れトンボのような形で終わってしまったような感じです。せめて、自殺に追い込まれていくところぐらいまでは、映像化してほしかった気がします。
でも、見応えがある映画でした。

映画のストーリーとは、あまり関係が無いですが、この映画の中に、イングランドがドイツの空爆の被害に遭い、各地で壊滅状態の当時の映像が登場します。
その光景を、日本の戦時下の様子とダブらせながら観ていましたが、人々の様子からは、それほど緊迫した感じは見えませんでした。
当時の日本と同じ戦争状態にありながら、しかも、ドイツの空爆にあって青息吐息の状態の中でも、平然と日常生活を送っている様子が、国民性の違いなのか、とても不思議でした。
戦争中は、アメリカからどんどん物資が送られてきていたようで、生活に必要なものはそれなりにあったのでしょうね。
その上に、暗号まで解読しているのだから、ドイツが連合軍に勝てるわけが無かったのでしょう。

【キャスト】

012_2

ベネディクト・カンバーバッチ - アラン・チューリング
アレックス・ローサー - 若き日のチューリング
キーラ・ナイトレイ - ジョーン・クラーク
マシュー・グッド - ヒュー・アレグザンダー
マーク・ストロング - スチュワート・メンジーズ少将
チャールズ・ダンス - アラステア・デニストン中佐
アレン・リーチ - ジョン・ケアンクロス
マシュー・ビアード - ピーター・ヒルトン
ロリー・キニア - ノック刑事

【スタッフ】

監督: モルテン・ティルドゥム
原作: アンドリュー・ホッジス
脚本・製作総指揮: グラハム・ムーア
撮影監督: オスカル・ファウラ
編集: ウィリアム・ゴールデンバーグ

2014年7月21日 (月)

アナと雪の女王

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 【解 説】

第86回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞し、主題歌賞を受賞した「Let It Go」とともに興行でも歴代記録を塗り替える大ヒットを記録したディズニーアニメーション。

監督は「ターザン」「サーフズ・アップ」のクリス・バックと、「シュガー・ラッシュ」の脚本を手がけたジェニファー・リー。 ピクサー作品を除いたディズニーアニメとして、アカデミー長編アニメーション賞を受賞したのは本作が初となる。

日本語吹き替え版はアナに神田沙也加、エルサに松たか子。
オリジナル版エルサ役のブロードウェイ女優・イディナ・メンゼルが歌う「Let It Go」を、吹き替え版では松たか子が歌い、その歌声も好評を博した。

【あらすじ】

運命に引き裂かれた王家の美しい姉妹、エルサとアナ・・・。

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触れるものを凍らせる“禁断の力”を持つ姉エルサは、妹アナを傷つけることを恐れ、幼い頃から自分の世界に閉じこもって暮らしていた。

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美しく成長したエルサは新女王として戴冠式に臨むが、力を制御できずに真夏の王国を冬に変えてしまう。

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城から逃亡した彼女は、生まれて初めて禁断の力を思うがまま解き放ち、雪と氷を自由自在に操り、冬の王国を作り出す。

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愛する者を守るため本当の自分を隠して生きてきたエルサは、“雪の女王”となることで生きる喜びと自由を手に入れたのだ。

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一方、妹を守るために姉が払ってきた犠牲と愛の深さを知ったアナは・・・

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エルサと王国を救うため、山男のクリストフとその相棒のトナカイのスヴェン、“夏に憧れる雪だるま”のオラフと共に雪山の奥深くへと旅に出る。

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アナの思いは凍った心をとかし、凍った世界を救うことができるのか?

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そして、すべての鍵を握る“真実の愛”とは・・・?

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【感 想】

DVDで観ました。
この映画はまだ、ロードショー公開中なのに、もうDVDが出るんですね。3月に公開なので、わずか5ヶ月です。

まず、英語版で観て、次に日本語吹き替え版でも観ました。
歌の部分が日本語なのは、何か変です。訳詞が悪いのか、映画のイメージと合わないのか・・・。
YouTubeなどで、松たか子さんの歌う「Let It Go」を聞いていると、上手いなぁ・・・と感心していたのですが、それ以外の曲も、映画を観ながら聞くと、どうも画面とは合いません。
先に英語版を観たからなのかもしれませんが、やはり、英語版が良いですね。

映画を観るまでは、ストーリーなどは全く知らなかったのですが、ストーリーは、これまでのディズニーのアニメを逆手に取ったユニークなものでした。
これにはちょっと驚きましたが、話自体はそれほどたいしたものではありません。

映画を観ていて、一番気になったのは、「ハンス王子」の存在理由です。「クリストフ」と言う、もう一人のアナにとっての王子様が出てくるので、最後はどういう展開になっていくのだろうか・・・と思っていましたが、何か肩すかしを食ったような結末でした。
なぜか、キスをしていないのに、氷が溶けてしてしまいました。(笑)

でも、やはりディズニーアニメは凄いです。
画面がいつも動いています。静止画が全くありません。
また、雪の女王・エルサが、床を靴で踏み込むと、一面が氷で覆われていくシーンなどは、圧巻でした。思わず目を見張って観てしまいましたが、アニメを観ているような感じじゃありませんでした。

ボケーッとしていたら見逃してしまうようなところでも、きちんと気配りがされています。
目が行かないところや細かなところでも、画面が動いているのは、ディズニーアニメの醍醐味です。(その辺の細かなところをしっかり見たかったので、再度日本語吹き替え版で観ました)

ラストの、氷の広場でスケートをしているシーンで、スケートしている人や周りで見ている人の影が、氷に写っているのですが、その影が本物の様でした。きちんと、元の形になっています。氷にゆがみがあるところは、影もゆがんでいる・・・驚きました。

映画館では、一度しか観られないので、こんな細かいところまで見えないですが、映画って、何度も観ると、いろんな発見があって楽しいですね。

アナが、雪のモンスターに雪の塊を投げるシーンでは、左の手で雪の玉を投げているので、アナってサウスポー(左投げ)なのか・・・と思いましたが、ラストの方で男性をノックアウトするときは、右手を使っています。アナって、両方使えるんですね(笑)

日本語だと、どうしてもストーリーを追ってしまいがちになりますが、観ている内に、音楽の素晴らしさと、画面の美しさに酔いしれてしまいましたので、ストーリーは後回しになってしまいました。
最初に観たのが英語版だったのが良かったのかもしれません。

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【キャスト】

03アナ:クリステン・ベル/神田沙也加
エルサ(雪の女王):イディナ・メンゼル/松たか子
クリストフ:ジョナサン・グロフ/原慎一郎
オラフ:ジョシュ・ギャッド/ピエール瀧
ハンス:サンティノ・フォンタナ/津田英佑
ウェーゼルトン公爵:アラン・テュディック/多田野曜平
パビー:キーラン・ハインズ/安崎求

【スタッフ】

監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
脚本:ジェニファー・リー
製作:ピーター・デル・ヴェッチョ
製作総指揮:ジョン・ラセター
歌曲:ロバート・ロペス、クリステン・アンダーソン=ロペス
音楽:クリストフ・ベック
日本語版主題歌: May J.「Let It Go~ありのままで~(エンドソング)」

2014年6月22日 (日)

円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

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【解 説】

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大阪の団地で大家族と暮らすちょっぴり偏屈な小学3年生の少女のひと夏の成長を、ユーモラスに描いた感動作。

愛らしい笑顔と天才的な演技力で、国民的人気を誇る女優・芦田愛菜。
彼女が堂々映画初主演を果たす本作は、ちょっと風変わりなダークヒロイン・琴子(こっこ)の物語。
愛らしさはそのままに、時にはバリバリの関西弁で吠えるタフな小学三年生が、スクリーンを元気いっぱいに駆け回ります。
監督は、『世界の中心で、愛をさけぶ』など数々のヒット作を放ち続ける行定勲。
芦田とは初タッグながら、彼女の見たこともない弾けた一面を見事に引き出しました。
原作は、人気作家・西加奈子の同名小説。
「さくら」「きいろいゾウ」など多くの代表作を持つ、いま最も注目を浴びる作家の一人です。

小学三年生のこっこが生きる、半径数キロメートルの狭い世界には、たくさんの「なんで?」が詰まっています。
イライラしたり、大笑いしたり、ふか~いため息をついたり・・・。
この感覚、どこか懐かしくありませんか?
そう、この物語は、大人たちの心にこそ響く、大人のための物語なのです。
かつて小学三年生を経験したすべての大人たちへ。
この夏、忘れかけていた大切なモノをお届けします 。

キャッチコピーは「小学三年生を経験したすべての大人たちへ・・・」。

 【あらすじ】

小学3年生の渦原琴子=通称・こっこ(芦田愛菜)は、大阪の狭い団地に8人の大家族で暮らしています。
お父さん・寛太(八嶋智人)にお母さん・詩織(羽野晶紀)、おじいちゃん・石太(平幹二朗)におばあちゃん・紙子(いしだあゆみ)、そして三つ子のお姉ちゃん理子、眞子、朋美(青山美郷)。

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毎日でっかい円卓を囲んでワイワイとご飯を食べます。
末っ子のかわいいこっこがみんな大好き。
でもこっこは、絵に描いたような幸せな日々が疎ましくて仕方ありません。

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好奇心旺盛なこっこは、気になった言葉や初めて知ることなどを思いのままに“じゃぽにか(ジャポニカ自由帳)”に書き留めて、とても大事にしていましたが、そのノートを失くしてしまいます。

間もなく誕生日を迎える祖母へのプレゼントとしてベレー帽に表紙のグロテスクな蟻を刺繍しようと、こっそり朋美が拝借していたのでした。

こっこの一番の仲良しは、隣に住む吃音のクラスメイト・ぽっさん(伊藤秀優)。
こっこにとっては、人と違うことが一番「かっこええ!」こと。

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その憧れの眼差しは、ぽっさんを筆頭に、ある日突然、眼帯をしてきたクラスメイトの香田めぐみさんだったり、親がベトナムの“ボートピープル”だったゴックんだったり、実は“ざいにちかんこくじん(在日韓国人)”で、突然の不整脈で倒れた朴くんにまで向けられます。

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そんなこっこを、担任のジビキ(丸山隆平)はいつも優しく見守っていますが、少しだけ心配して、時々ぴしゃりと叱ります。

ある日、こっこはお母さん・詩織のお腹に新しい命が宿ったという報告を受けました。
家族はみんな大喜びですが、こっこは全然嬉しくありません。
悩むこっこに、ぽっさんは言いました。
「う、嬉しなかったら、よ、喜ばんでも、ええ」
ぽっさんはいつだって、こっこの味方。

そんな2人に、おじいちゃんの石太は英語の“イマジン(IMAGINE)”という言葉を教えます。
想像すること―相手がどう思うか、友達がどう思うか・・・。
それが“いまじん”。
2人の胸にこの言葉は深く刻まれてゆくのでした。

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待ちに待った夏休みが始まりました。
生き物を飼いたくて仕方のないこっこは、ぽっさんと一緒に学校で飼っているウサギの散歩をさせたり、夏休みの自由研究で蚊に腕の血を吸わせたり(!)と、それなりに忙しい日々を送っていました。

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ある日、ぽっさんは松山のおばあちゃんの家に、お墓参りに行くことになり、しばらく会えなくなる2人。
残ったこっこは一人っきりで、炎天下、腕の血を吸う蚊の採集を黙々と続けていました。
そんな彼女にこの夏、最大のピンチが訪れます・・・。

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【感 想】

ロードショー公開初日に、観に行ってきました。しかもその日の初回です。
こっこ役の芦田愛菜、いつもながら見事な演技ですね。怒った顔、笑った顔、泣いた顔・・・どれも可愛いです。
西加奈子さんの原作「円卓」を読んで映画化されるということを知り、上映される日を楽しみに待っていました。もちろん原作もすばらしかったですが、映画の方もたっぷり楽しめました。

主人公は、小学校の3年生の児童たちですが、大人のための映画です。
自分の小学3年生の頃を思い出しながら映画を観ていました。

映画の方は、原作には登場していた中学校の手芸部の部長が、映画には登場しないのはちょっと残念ですし、映画には登場はしていましたが、ベトナム難民の「ゴックん」のことについてはほとんど触れられていませんでした。
また、「ぽっさん」だけが、「こっこ」のことを「琴子」と呼んでいることの説明もありませんので、原作を読んでいるものにとっては理解できることが、映画だけじゃちょっと厳しいかな・・・と思うようなところもあります。

でも、「こっこ」と「ぼっさん」の関係の部分に焦点を当てて、映画を作っていったのでしょうね。そういう意味では、よくわかる映画になっているのだと思います。
子どもの世界の話ですが、大人が観て感動する映画に、見事に仕上がっています。

地域に出没していた変質者が捕まったとき、ブランコを漕ぎながら、「こっこ」が一人の時に変質者に出会って、顔を踏みつけて来たと言う話を聞いた「ぼっさん」が、
「ひ、ひとりにして、す、すまんかった。」と、涙を流しながら語るシーンは、映画でも印象に残るシーンでした。
「ぼっさん」役の伊藤秀優も、なかなかの演技で、感心しました。

子ども時代を生きてきた大人だからこそ理解できる・・・そういう内容の映画でした。

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【キャスト】

01渦原 琴子 - 芦田愛菜
渦原 寛太 - 八嶋智人
渦原 詩織 - 羽野晶紀
渦原 理子、眞子、朋美 - 青山美郷
森上 - 入江甚儀
石太 - 平幹二朗
紙子 - いしだあゆみ
ぼっさん - 伊藤秀優
ぼっさんの兄 - 吉田晴登
朴くんの母 - 中村ゆり
朴 圭史 - 古谷聖太
香田 めぐみ - 草野瑠季
ゴックん - 野澤柊
幹 成海 - 内田彩花
ジビキ - 丸山隆平(関ジャニ∞)
石田先生 - 三浦誠己
竹田 富美枝 - 谷村美月
鼠人間 - 森山開次
野次馬 - 浜村淳
みどりのおじさん - 川藤幸三
リポーター - タージン

【スタッフ】

監 督 行定勲
原 作 西加奈子

2014年3月14日 (金)

偉大なる、しゅららぼん

【解 説】

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「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」などの人気作家、万城目学の小説を原作にした異色作。
琵琶湖周辺を舞台に、不思議な「力」を持つ一族の跡取り息子と、彼のお供をする分家の息子が、一族の崩壊につながる大事件に挑んでいく。

万城目原作の映画化作品に出演経験のある濱田岳と岡田将生がダブル主演を務め、主人公コンビを快演。
摩訶(まか)不思議な物語に加えて、深田恭子、貫地谷しほり、佐野史郎ら、奇怪なキャラクターにふんした豪華共演陣が繰り出す怪演も見もの。

= しゅららぼんとは・・・ =

映画や原作に含まれる「しゅららぼん」とは、日出涼介と棗広海(なつめひろみ)が、同時に「力」を使ったときに発する「音」です。

【あらすじ】

琵琶湖畔の街、石走(いわばしり)。
そこには、琵琶湖の神より賜りし摩訶不思議な力を、1300年にわたって代々守り伝える一族がいた。
その一族、日出家は、江戸時代から現存する石走城に居を構える、街の最高実力者。

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跡取りである高校生の淡十郎(濱田岳)は最強の「力」を持つとされ、崇められることが当たり前の人生を歩む生まれながらの殿様気質。

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そんな中、分家の涼介(岡田将生)が高校入学を機に、一族の掟に従い、「力」の修行のため本家へとやって来る。
街に着いた涼介は、街を牛耳る石出グループの力に驚く。

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居候として暮らし始めた涼介だが、淡十郎の姉であり、並外れた能力を持つ通称「グレート清子」(深田恭子)が、白い馬を乗り回す城内での暮らしや、源治郎の漕ぐ船での登校など戸惑う事ばかり。

そんな涼介に淡十郎は、自分とお揃いの赤い詰襟を着せ登校させる。
常人には理解不能の、淡十郎の言動に振り回される涼介。

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涼介と淡十郎が入学した高校には、もうひとつの「力」を持つ一族・棗家の長男の広海(渡辺大)がいた。

棗広海もまた不思議な力を持ち、日出家とは長年の宿敵関係にある棗一族の跡取りで、日出家と棗家は、1300年にわたりいがみ合ってきた永遠のライバルだった。

入学すると、日出淡十郎 は、校長速水義治 (村上弘明)の娘である速水沙月(大野いと)に恋をする。しかし、速水沙月は、同じクラスの棗広海に恋をしているという。
絡み合う両家の因縁。

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その淡十郎の失恋の腹いせが火種となり、街や歴史をも巻き込む大きな騒動へと発展する。
しかし、それは大事件のほんの序曲だった・・・。

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【感 想】

タイトルからして不思議系の作品ですが、摩訶不思議な世界観が持ち味の万城目学の同名小説の映画化で、ユニークな世界で繰り広げられる若者の成長物語です。

原作も楽しく読みましたので、映画館に足を運ぶことにしましたが、私が観た回のお客さんは、平日の12時からと言うこともあるのでしょうが、10人未満でした。
映画としては、イマイチわかりにくいタイトルなので、仕方がないのかも知れませんが、原作を読んでいる人だけが観ているような感じです。
ちなみに、原作の感想は、はこちらからどうぞ。→原作の感想へ

話は、琵琶湖の周辺に住む日出家と棗家が、不思議な「力」を持つ一族としていがみあっているという設定で、浮世離れした日出家の淡十郎、その姉で最強の力を持つグレート清子、涼介の師匠でマイペースの濤子(とうこ)、物忘れが激しい船頭の源次郎と、ちょっとユニークな登場人物が絡み合うと言う話で、面白く観てしまいました。

ストーリーは、原作とほぼ同じ内容ですが、淡十郎と清子が肥満体ではなく、淡十郎は低身長で、清子がサディスティックな毒舌家になっています。
また、涼介の「力」の師匠である濤子を演じていた貫地谷しほりが、なかなか良かったです。
原作を読んでいるからなのかも知れませんが、映画の方が、最後の落ちのところもスッキリとまとまっていて、分かりやすかったような気がします。

ただ、あり得ない設定なので何でもアリと言うことですが、それでも、彼らの持つ「力」が、何なのかがよく分からないし、ちょっとした矛盾点もあったのが気になります。

また、映画の中で、淡十郎と涼介が、何かゲームのようなものをしているシーンがありますが、あれが原作に出てきた「カロム」というゲームなのでしょうね。
聞くところによると、彦根市周辺では、カロムをするための四角い盤と偏平な円筒形の玉(パック)を、ほぼ一家に一台所有しており、知らない者はいないほど普及している・・・と言うことですが、真偽のほどは定かではありません。映画では何の説明も無かったのが残念です。

この映画は、淡十郎役の濱田岳と涼介役の岡田将生のダブル主演となっているようで、この二人の掛け合いがまた楽しいのですが、それにしても、濱田岳、岡田将生、渡辺大の三人が、高校一年生役というのは、ちょっと無理があるようです。

話が終わって、エンドロールで、「ももいろクローバーZ」の唄が流れましたが、とても違和感がありました。映画の雰囲気とはちょっと違いました。
エンドロールが流れている間に、数人が外へ出て行きましたが、エンドロールが終わった後に、淡十郎により、“しゅららぼん”の意味が明かされるシーンがあったので、やはり映画は最後の最後まで観ないといけないですね。

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【キャスト】

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日出淡十郎 - 濱田岳
日出涼介 - 岡田将生
日出清子 - 深田恭子
棗広海 - 渡辺大
藤宮濤子 - 貫地谷しほり
日出淡九郎 - 佐野史郎
棗永海 - 髙田延彦
日出洋介 - 田口浩正
速水沙月 - 大野いと
棗潮音 - 柏木ひなた(私立恵比寿中学)
葛西 - 小柳友
棗の母 - 森若香織(GO-BANG'S)00003
日出淡八郎 - 津川雅彦
源治郎 - 笹野高史
速水義治 - 村上弘明
通行人 - 浜村淳

【スタッフ】

原作 - 万城目学(集英社刊)
監督 - 水落豊
脚本 - ふじきみつ彦
主題歌 - ももいろクローバーZ「堂々平和宣言」

=3月17日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part14)

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Blog記事ランキングで、「偉大なる、しゅららぼん」が、「映画の部」の一位になりました。

たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

2013年12月25日 (水)

永遠の0

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【解 説】

零戦搭乗員の悲劇を描いた百田尚樹のベストセラーを『ALWAYS』シリーズなどの監督・山崎貴が映画化した戦争ドラマ。

祖父の歴史を調べる孫の視点から、“海軍一の臆病者”と呼ばれたパイロットの真実の姿を、現代と過去を交錯させながらつづっていく。

主人公の特攻隊員役に、『天地明察』『図書館戦争』などの岡田准一。
現代に生きる孫に三浦春馬がふんするほか、井上真央や夏八木勲など、若手からベテランまで多彩な俳優が共演する。

生と死を描く奥深い物語はもちろん、サザンオールスターズによる心にしみる主題歌にも注目。

【ストーリー】

2004年。佐伯健太郎(三浦春馬)司法試験に落ち失意の日々を過ごしていた。

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祖母・松乃が他界し葬儀に参列するが、そこで祖父・賢一郎(夏八木勲)とは血がつながっていないことを知る。

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血縁上の祖父は、松乃の最初の夫で、太平洋戦争時に零戦パイロットとして出撃、終戦間近に特攻隊員となり散った宮部久蔵(岡田准一)という人物だった。

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健太郎と姉の慶子(吹石一恵)は、久蔵がどんな人物だったか調べようと、彼のかつての戦友を訪ねてまわる。

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しかしその先々で、海軍一の臆病者といった手厳しい評判を聞く。

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類まれなる操縦センスを持ちあわせながらも、敵の駆逐よりも生還を第一に考えていた。
それは、久蔵が妻・松乃(井上真央)と娘・清子とかわした、家族の元に生きて戻るという約束があったためだった。

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それならなぜ久蔵は特攻の道を選んだのか。

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やがて久蔵の最期を知る人物に行き着き、健太郎は久蔵の懸命な思いを知る・・・・・・。

【感 想】

右傾化が進んで行く、そんな気配がするこの時期に、なぜゼロ戦をテーマにした映画が続くのか・・・と思いながらも、今や絶好調の「ひらパー兄さん」・岡田准一が主演だと言う事もあって、観に行きました。

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上映時間2時間24分の、少々長い映画でしたが、退屈せずに観る事が出来ました。
0戦の搭乗員である宮部久蔵が、ストイックな肉体づくりから、部下を特攻に送り出す事で精神的に病んでいき、崩れていく様子なども、岡田准一が上手く演じていました。
素晴らしい、迫真の演技です。

助演の方たちも、皆さん良いですね。また、エンドロールで流れた、サザンオールスターズの主題歌・「蛍」も素敵でした。
三浦春馬も、あまり期待をしていませんでしたが、なかなかの演技でした。背も高いし、ちょっと見直しました。

「お国のために・・・」と戦って死んでいった方の思いや、残された家族の気持ち、生きて帰って来られないと分かって出撃していく兵士とそれを見送る兵士たちの思いも、少しは分かるつもりなので、上映中は涙をそれとなく拭きながら観ていました。

しかし・・・です。007
この映画のどこに、反戦の思いや、人命の尊さを感じる事が出来るのでしょうか?
妻子の元に、是が非でも生きて帰りたいという宮部久蔵の思いと、それを果たせなかった彼の無念さは、充分に伝わってきますが、それだけなのでしょうか?
宮部久蔵の、「生きたい」と言う思いは、妻と我が子の幸せのためだけの思いなので、この映画のテーマは「家族愛」なのでしょうね・・・。

戦闘機の空中戦で、死んでいったのは日本兵だけじゃ無く、米軍機にも、同じ人間が乗っていたのです。私が小学生の頃、ちばてつやさんの漫画「紫電改のタカ」を読んで、そのことにハタと気がつきました。
この映画には、そういった哀悼の思いが感じられませんでしたし、命の尊さや反戦への強い意志・メッセージも伝わってきませんでした。

一番気になったシーンが、佐伯健太郎とその友人たちの合コンでの会話です。
「特攻って、自爆テロようなものだ・・・」という友人の発言に怒りを感じ、健太郎は席を立ちますが、特攻は自爆テロと同等の卑劣な行為で、全く意味の無いものだと思っています。
日本軍が行った、特攻という行為は、決して美化されてはいけないものだからです。
特攻で死んでいった方の思いと、それを命じた日本軍の行為は分けて考える必要があるし、別々に論じなければなりません。

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この映画の戦闘シーン、特に戦闘機による空中戦を観ていて、VFXの出来にも驚かされましたが、私には、ストーリーも含めて、映画を観ている間、子どもの頃に読んだ、漫画の実写版を観ているような感じになりました。
また、松乃のラストのセリフ、「刀を持ったやくざ風の男に助けてもらって、財布を置いて去って行った」って、ヒーロー物の漫画のワンシーンじゃないですか?

最後に、エンドロールを何気に見ていたら、撮影協力の欄に防衛省と自衛隊・・・。
ちょっと考え込んでしまいました。

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【キャスト】

宮部久蔵 - 岡田准一(V6)
佐伯健太郎 - 三浦春馬
松乃 - 井上真央
佐伯慶子 - 吹石一恵
清子 - 風吹ジュン
  (幼少期:栗本有規) 
賢一郎 - 夏八木勲
井崎 - 橋爪功
  (青年期:濱田岳)
武田 - 山本學
  (青年期:三浦貴大)
景浦 - 田中泯
(青年期:新井浩文)
011_2大石 - 染谷将太 
長谷川 - 平幹二朗 
小山 - 上田竜也(KAT-TUN) 
山田 - 佐々木一平
伊藤 - 青木健
香川 - 遠藤雄弥 
寺西 - 栩原楽人

【スタッフ】

原作:百田尚樹『永遠の0』(太田出版)
監督・VFX:山崎貴 
脚本:山崎貴、林民夫
音楽:佐藤直紀
VFXプロダクション:白組
主題歌:「蛍」サザンオールスターズ

=12月30日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part13)

114 Blog記事ランキングで、「栄光の0」が、「映画の部」の一位になりました。

たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

090また、「映画の部」の「ブログランキング」でも一位になりました。これは、この一週間の「映画の記事」のカウント集計です。

たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

2013年1月26日 (土)

レ・ミゼラブル

016 【解 説】

イギリスのロンドンで1985年にミュージカルとして初演されて以来、全世界42ヶ国で公演されたミュージカルの名作『レ・ミゼラブル』が、スクリーンに登場した。

監督は、『英国王のスピーチ』のトム・フーパー。
彼はミュージカル映画としては異例の、撮影現場でピアノ伴奏に合わせて歌うライブレコーディング方式を選んだ。
舞台のキャリアがある俳優たちを集め、俳優たちの高ぶった感情を、見事に映画として切り取ってみせている。
出演は「X-MEN」シリーズのヒュー・ジャックマン、「グラディエーター」のラッセル・クロウ、「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ。

ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイたちキャストらは、振り絞るような歌を披露し、観客の心を揺さぶってみせる。

原作は、19世紀のフランスを舞台にした、ヴィクトル・ユーゴーの名作小説「レ・ミゼラブル(邦題:ああ無情)」。

   019

【あらすじ】

格差と貧困にあえぐ民衆が自由を求めて立ちあがろうとしていた19世紀のフランス。
ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、パンを盗んだ罪で19年間投獄され、仮釈放されたものの生活に行き詰まり、再び盗みを働く。

    002

しかし、その罪を見逃し赦してくれた司教の慈悲に触れ、身も心も生まれ変わろうと決意。マドレーヌと名前を変え、工場主として成功を収め、市長の地位に上り詰めたバルジャンだったが、警官のジャベール(ラッセル・クロウ)は彼を執拗に追いかけてくるのだった。

    004

そんな中、以前バルジャンの工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、バルジャンは彼女の幼い娘コゼットの未来を託される。

    003

ところがある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになり、ジャベールの追跡をかわしてパリへ逃亡。

    005

コゼットに限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。だが、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発、バルジャンやコゼットも次第に激動の波に呑まれていく・・・・・・。

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【感 想】

まず、スケールの大きさに驚きました。見応えがあります。時間もお金もかかっている様です。映画ならではの醍醐味です。こういうダイナミックな映画は、大きなスクリーンで観るに限りますね。
また、上映時間が158分(2時間58分)と、とても長い映画でしたが、なんとか退屈もせず、見ることが出来ました。

(カメラをズームインさせ、大写しにした)アップと(遠くから望遠で全体を映す)ロングを効果的に使っているので、舞台とは違い(といっても、もちろん舞台は観ていませんが・・・)迫力は満点でした。

008俳優陣が良いです。演技もそうですが、歌も見事です。
撮影現場で、ピアノ伴奏に合わせ、俳優たちが実際に歌っている声をレコーディングして採用して居ると言うことですが、顔を大写しにされた状態でも、堂々と歌っています。
特に、ファンティーヌ役の「アン・ハサウェイ」と言う女優さんは、涙を流し、嗚咽しながらも、声がちゃんと出て、歌がしっかり歌えているのには、ちょっと驚きもし、感動すら覚えました。
また、自分の髪を売ってお金に換えるシーンでは、実際に自分の、綺麗な長い髪を切られて居るんですね。

この映画は、劇場ミュージカルの映画化です。
観る前に、セリフが全部歌で・・・と言うように聞いていたので、C・ドヌーヴの映画「シェルブールの雨傘」のような、歌で会話もするのかなと思っていました。もちろん、歌で会話をして居るシーンもありますが、相づちとか、短いセリフは普通に話していましたので、ちょっと「あれっ」と思いながら観ていました。オペラ風のミュージカルですね・・・。
歌うシーンは、自分のその時々の心情を告白するような内容が、朗々と歌われていますので、歌の部分でストーリーが展開するようなこともありません。
実際にその場で歌っていると言うことなので、歌っている顔をアップで撮ったまま歌われる場面が多く、ほとんど動きがありません。ゆっくり歩きながら・・・というシーンはありましたが、動きが無いのです。
ミュージカルと言えば、スクリーン狭しと歌って踊ってと言う映画をイメージしていたので、ちょっと面食らいました。
ここは意見が分かれるところだと思いますが、その時々の思いをしっかりと歌う間、画面が固定されてしまうし、結構長い時間歌われるので、ちょっと間延びするような感じがしました。

007 子役たちは、とても良かったです。
まず、コゼットの子ども時代を演じていた「イザベル・アレン」という女の子が気に入りました。
見事な歌いっぷりですし、演技も上手です。目がとても印象的でした。表情も良いですね。
これから、おそらくいろんな映画に出てくると思いますので、名前をインプットしておきましょう。

それにもう一人・・・。
013 家具などで封鎖していたバリケードの外に出て、撃たれて死んでしまう少年・ガブローシュを演じていたのは、「ダニエル・ハトルストーン」という少年です。どこにも名前が載っていないので、探すのに苦労しました。
ボーイソプラノの素敵な声に、ちょっと感激ですが、彼が射殺された事がきっかけとなって、銃撃戦に突入して行きます。

私は、子どもが死んでいく映画を観るのは、チョット苦手です。
子どもの死をテーマにした映画ならまだしも、エピソード的に入れて観客の涙を期待するような演出は、私は好きになれません。
このシーンが原作にあるのかどうかは知りませんが、幼気な子どもが、理不尽に殺されていくのを見せられると、可哀想だと思うのは当たり前です。

また、話の展開が、ちょっと雑いので、ストーリーをもう少し丁寧に作ってほしかったとも思いました。
仮出獄してきて、仕事を探そうとすると身分証明書の提示を求められ、見せると仮出獄だとばれてしまい断られてしまう・・・そういうことが繰り返され、寝る場所や食べるものにも困っていたら、司教が手をさしのべてくれます。
ところが、教会でお世話になったにもかかわらず、その教会の銀食器を盗んで逃走するところを捕まりますが、司教の一言で釈放され、悔い改めると言う気持ちになります。ここで、過去を捨て、身分を示す書類を破り捨ててしまうのです。
そして、その次のシーンが、9年後、市長になって、工場を経営していました。
職を得るのに、毎回身分証明書の提示を求められるシーンや、むげに断られるシーンを見せつけて置いて、どうして、身分を証明するものが無い人物が、たった9年で工場も経営でき、市長にまで成れるのでしょうか。

010結局、ジャン・バルジャンが市長を務めている、その街に赴任してきた警官のジャベールに追われることになりまますが、死なせてしまったファンティーヌの娘・コゼットを助け出すために、3日間の猶予が欲しい・・・と言って、その場から逃げます。結局は、そのまま8年後に見つかるまで、逃げて隠れていたと言うことになりますが、それは無いでしょう・・・。
「3日間の猶予が欲しい・・・」と言って逃げたのなら、それを守らないと行けないですね。それと同じようなセリフが、ラストの所にも出てきます。
ジャン・バルジャンが、銃弾で傷ついたマリウスを抱えて、連れ出そうとしているところで、またもやジャベールに見つかってしまいます。
ところが、「1時間だけ時間が欲しい・・・」というジャン・バルジャンを、ジャベールは見逃してしまいます。
3日の約束を守らなかった者に、1時間待って欲しいって言われても、信用できるはずもありません。しかも、やはりその1時間の約束も反故にされているし・・・。
映画を観ながら、「メロスは、命をかけて約束を守ったぞ・・・」と思ってしまいましたって、なんのこっちゃ・・・(笑)

009ジャベールは、ジャン・バルジャンを見逃した後、自己嫌悪に陥ってしまったのか、なぜか自殺してしまいます。
この辺の心情は、キリスト教とも関係していくることなのかも知れません。おそらく、キリスト教の事を理解していないと、よく分からない話になっているのでしょうが、少なくとも私は、「なんで死ぬの・・・?」と思いながら観ていました。

このところ、ちょっと悲しいシーンがあると、すぐに涙が流れてくる私ですが、この映画は、初めから終わりまで、まったく泣けませんでした。
振り返って考えてみると、ジャン・バルジャンをはじめ、登場人物に、感情移入出来なかったことが、泣けなかった最大の原因なのかも知れませんね・・・。

    021

【キャスト】

02ヒュー・ジャックマン・・ジャン・バルジャン
ラッセル・クロウ・・・ジャベール
アン・ハサウェイ・・・ファンティーヌ
アマンダ・セイフライド・・・コゼット
(幼少期:イザベル・アレン)
アーロン・トベイト・・・アンジョルラス
サマンサ・バークスエポニーヌ
ヘレナ・ボナム・カーター・・・マダム・テナルディエ
サシャ・バロン・コーエン・・・テナルディエ
エディ・レッドメイン・・・マリウス
ガブローシュ・・・ダニエル・ハトルストーン

【スタッフ】

監 督・・・トム・フーパー
原 作・・・ビクトル・ユーゴー
脚 本・・・ウィリアム・ニコルソン
      アラン・ブーブリル
      クロード=ミシェル・シェーンベルク
      ハーバート・クレッツマー
作 詞・・・ハーバート・クレッツマー
作 曲・・・クロード=ミシェル・シェーンベルク

=2月2日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part7)

    0073

Blog記事ランキングで、「レ・ミゼラブル」が、「映画の部」の1位になりました。

たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

2013年1月 7日 (月)

アテルイ ~ 長編アニメーション ~

【制作意図】 000_2

8世紀、古代東北に展開した岩手、そして北の地の父祖たちは、その後の歴史の中にあまりにも不当な扱いを受けて参りました。
「蝦夷(えみし)」とさげすまれ、当時の大和朝廷より蝦夷征伐として、征伐の対象とさえされて参りました。
789年、大和朝廷より派遣された蝦夷征伐の大軍を見事に打ち破った蝦夷の族長・アテルイとその勇者たちは、「鬼」や「悪路王」として、その後の歴史の中に、その評価を逆転させられて参りました。
しかしながら、近年の歴史学の展開と新たな考古学の発見が、今私達に蝦夷の真の姿を示してくれています。
四季折々に、沢山の恵みをもたらした豊穣だった北の大地。
争いを求めず、広く大陸の異民族にさえ心をひらきながら、展開された交易による広い地域間交流。 そして豊かな自然を背景に、自然界と心交わせながら営まれた、精神生活の驚くほどの豊かさ。

北の大地は、決して云われていた様なものではなかったのです。
遠く縄文から受けつがれた、自然と共生する先進的な思想さえもちあわせていたのです。 そしてその北の大地を、親や子や同胞たちを、いわれなき侵略から守るために、敢然と戦いをいどみ、勝利を収めたアテルイとその勇士たちの姿を、生き生きと現代のスクリーンによみがえらせ、21世紀を生きる子どもたちの心に、故郷に対する誇りとして語ってゆきたい・・・と思ったのです。

   11110

【ストーリー】

物語は現代の岩手県水沢市から始まるー。

東京から転校してきた小学生の岡崎飛人は、初登校の日に学校に行かず、逃げ出してしまう。東京の学校でいじめにあった飛人は、新しい学校でもいじめられるのではないかと恐かったのだ。追ってくる両親から逃げようとした飛人は、足を滑らせ、雨で増水した北上川に転落して、意識を失ってしまう。

    001

そしてー
飛人が目覚めると、そこはうっそうとしたブナ林に囲まれた、見たこともない場所だった。飛人は今から1200前の昔の世界にタイムスリップしていたのだ。
 
林の中で大イノシシに襲われた飛人は、一人の精悍な若者に助けられる。それは、エミシの族長、アテルイだった。
行くあてのない飛人を、アテルイは自分の村へ連れて帰る。日高見川(昔の北上川)の近くのアテルイの村で、飛人は村の少女ララカの家族と一緒に暮らすことになった。そんな飛人に、村の大巫女アマババは「お前がここに来たのは意味がある」と謎の言葉をかける。

ララカや村の人々の親切に触れ、だんだんエミシの生活に溶け込み始めた飛人だったが、ララカに憧れる村の少年コムイの仲間たちは、飛人が大和の手先ではないかと疑いを持つ。

その頃、大和朝廷は東北地方の支配のために軍隊を送り、大和に従わないエミシの村々に焼き討ちをかけたり、収穫物の略奪や非道な行いをしていた。大勢のエミシの人々が殺され、仕方なく大和に従った者も“俘囚(ふしゅう)”として重い税や労役に苦しめられていたのだ。

    002

そんなある日、飛人とコムイは近くのエミシ村が大和兵の焼き討ちにあっているところに出くわす。あやうく兵士の剣にかかって斬られそうになったコムイを、飛人は身を挺して守り、それがきっかけで二人の間に友情が芽生えるのだった。

しかし、アテルイ達の土地を奪おうとする大和軍は、789年(延暦8年)、遂に5万もの大軍で総攻撃をしかけてくる。アテルイの親友モレをはじめとする近隣の村々の族長達は、先祖代々暮らしてきたエミシの土地を、北の大地を守るために、アテルイとともに立ち上がる。

エミシの連合軍は巣伏山の頂きに集結し、総大将に選ばれたアテルイは、大和軍との壮絶な決戦に臨むのだったー。

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    005

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【感 想】

このアニメは、「シネマとうほく」という、東北地方で映画を制作している会社が、アテルイ没後1200年を祈念して制作した作品で、直接この会社から購入したDVDです。
残念ながら、このDVDのレンタル版はありませんので、見ていただくことは出来ません。

さて、私が、阿弖流為(アテルイ)を知ったのは、1990年頃に始まった、歴史を見直す運動の流れの中で、「江戸時代の農民」のことや「身分差別社会」の実態などを調べていく中で、古代の東北地方の実情にも興味を持ったことからです。

A08  A09

また、枚方市の片埜神社の旧社地(現在は牧野公園内)に存在する塚を、それぞれ阿弖流爲(アテルイ)と母禮(モレ)の胴塚・首塚とする説があるというのも、近くの事なので興味を持った一つの要因です。→枚方・牧野公園「阿弖流爲(アテルイ)と母禮(モレ)の墓」

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坂上田村麻呂が創建したと伝えられる京都の清水寺境内には、平安遷都1200年を記念して、1994年(平成6年)11月に「アテルイ・モレ顕彰碑」が建立されたと聞き、すぐさま見に行きました。→京都・清水寺の紅葉と「アテルイとモレの碑」

1999年には、私の好きな作家・高橋克彦さんの「火怨 北の燿星アテルイ」が出版された事もあって、ますます興味が深まって行きました。

    1

なお、1月11日から、「火怨・北の英雄 アテルイ伝」がNHK BSで放映されます。どんな内容になるかわかりませんが、紹介させていただきます。

         = NHK BS「火怨・北の英雄 アテルイ伝」について =

東北を平定しようと北へ攻め上る朝廷軍の襲撃に、命を捨てて一族の未来を救った古代東北の英雄・阿弖流為(アテルイ)の生涯を、空前のスケールで描く歴史冒険巨編。
かつて不屈の魂をもって東北を守った陸奥の英雄を描くことで、東北復興支援の一環とし、大震災後、復興に向けて誇り高く生きている『東北の人たちへの応援歌』を目指します。

原作は、高橋克彦さんの「火怨 北の耀星アテルイ」です。この本はオススメです。

BS時代劇  <BSプレミアム> 2013年1月11日~ 毎週金曜日 8時~ 全4回

                      再放送は、日曜日 午後6時45分~
  
HPはこちらから→「火怨・北の英雄 アテルイ伝

=1月10日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part6)

Blog記事ランキングで、「アテルイ ~ 長編アニメーション ~」が、「映画の部」の1位になりました。

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たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

=1月14日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part5)

「映画の部」の「ブログランキング」で一位になりました。

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これは、この一週間の「映画の記事」のカウント集計です。
映画の部では、「ブログランキング」の一位は、昨年の2月以来です。

2012年9月20日 (木)

ヴァンパイア

【解 説】 007_2

『Love Letter』『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』など、孤高なる美意識と世界観で観客を魅了する岩井俊二がカナダを舞台に全編英語で撮りおろした最新作、『ヴァンパイア』がついに公開!

本作は、病身の母親と暮らす高校教師サイモンが、あるwebサイトに集まる“死にたい少女たち”に血を求めて寄り添ううちに、しだいにピュアな愛に昇華してゆく“奇妙な純愛物語”で、昨今人気のヴァンパイア映画とは趣を異にするユニークな物語を生み出した。
ケヴィン・セガーズが好演する繊細で知的な青年の孤独と偏執が招く猟奇的な殺人は、他者と接する事に臆病な若者たちのぎごちない生き方を浮かび上がらせる。
全編英語のオリジナル脚本に挑み、蒼井優を除いて初顔合わせとなる海外の俳優たちを使いながら、ここで展開するのは懐かしさと同時に今という時代を感じさせる美しくも悲しいラブストーリーであり、隅から隅までとことん“岩井俊二ワールド”だ。

主人公のサイモンには『トランスアメリカ』のケヴィン・ゼガーズ、今やハリウッドで大注目『Silent Hill: Revelation 3D』のアデレイド・クレメンス、『ヤング・スーパーマン』のクリスティン・クルックなどフレッシュな顔ぶれに加え、『クジラの島の少女』のケイシャ・キャッスル=ヒューズ、『シーズ・オール・ザット』のレイチェル・リー・クック、『パルプ・フィクション』のアマンダ・プラマーという実力派も参加。
そして今や日本映画界に欠かせない岩井俊二が生み出したミューズ・蒼井優が、サイモンの行動に思わぬサプライズをもたらす重要な役割の留学生ミナ役で“岩井ワールド”を彩っている。

【あらすじ】

男はある場所で“ゼリーフィッシュ”と名乗る女(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)と待ち合わせた。
見知らぬ者同志、共に死のうとしている。
「最後の一日を最高の日にしたい」というゼリーフィッシュに、その男“プルート” (ケヴィン・ゼガーズ)は、穏やかに死ねるある特別な方法を試すことを提案する。
「血を抜こう」。

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この男、サイモン・ウィリアムズは高校の生物学教師で、家に帰ればアルツハイマーの母親ヘルガ(アマンダ・プラマー)との二人暮らし。

ある誤解がきっかけで警官と親しくなり、その妹ローラが彼らの静かな生活に闖入し、サイモンは苛立つ。

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学校では自殺を考える生徒ミナ(蒼井 優)に「死んではいけない」と説得する誠実な教師を演じているが、プライベートの彼は自殺サイトに接触して、血の提供者を探していた。

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自殺志願者の間では有名な存在で、“ブラッドスティーラー”または“ヴァンパイア”と呼ばれ恐れられているが、せっかく飲んだ血は後で吐いてしまうし、他の殺人犯が女性を狩る姿を見てパニックになる、気の弱い男でもある。

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ある日、サイモンは標的として選んだ“ラピスラズリ”という女性によって思いがけず集団自殺に巻き込まれる。
辛くも生き残った“レディバード”(アデレイド・クレメンス)という女性と迷いの森を脱出するが、その道中、自分がヴァンパイアであることを告白してしまう。

後日、レディバードはサイモンに血の提供を申し出る。
彼女はもう一度自殺したがっていた。

    002_2

そして同じ頃、教え子のミナも自殺を企て、サイモンにとって最も長い一日が始まる。

006_2 【感 想】

よく分からない話が次々出てくる不思議な映画です。
サイモンが本物のヴァンパイアなのか、ただ仲間内からそう呼ばれているだけなのか・・・それすら分かりませんでした。
輸血のため採血したヴァンパイア・サイモンが家に帰ると、待ち構えていた警察官に追われて逃げているうちに貧血になり、ついには警察に捕まってしまうって落ちは、最低ですね。

【キャスト】

ケヴィン・ゼガーズ 
アデレイド・クレメンス 
アマンダ・プラマー 
蒼井優 
アデレイド・クレメンス 
ケイシャ・キャッスル=ヒューズ 
アマンダ・プラマー 

2012年8月16日 (木)

アナザー Another

1111111【原 作】 

「十角館の殺人」(87)「暗黒館の殺人」(04)などの「館」シリーズや「緋色の囁き」(88)「黄昏の囁き」(93)などの「囁き」シリーズを生み出してきた、新本格ミステリー作家の旗手・綾辻行人。
その綾辻が、2009年に発表したのが本作「Another」。

それまでとは一線を画す作風で、地方の中学校を舞台にした謎めいた学園ホラーは新感覚ミステリーホラーとして脚光を浴び、同年度の「ミステリが読みたい!」第1位、「このミステリーがすごい!」第3位、「週刊文春ミステリーベスト10」第4位など、数々の権威ある書籍ランキングで高順位を獲得し、各方面から絶賛を集めました。

そして発表から3年。
いまだ熱狂的ファンを集める話題作がコミック化・アニメ化を経て、遂に待望の実写映画化を果たしました。

【解 説】

監督は、『オトシモノ』(06)『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』(08)など、デビュー以来娯楽感溢れる描写を追及している鬼才・古澤健。
黒沢清の下でその才能を開花させた新鋭が、初メジャー映画で更なる才能を爆発させています。
そして、転校早々不可解な事件に巻き込まれる主人公の少年・原恒一役には、デビュー以来立て続けに映画・ドラマの主演に抜擢されている逸材、山崎賢人。
本作でもフレッシュな演技を披露しながらも未来の大物感を漂わせています。

001物語の鍵を握る、眼帯をした謎の美少女・見崎鳴役には、映画『告白』(10)で鮮烈な印象を残した橋本愛。
その美しすぎるくらいの佇まいは、新たな女神の登場を予感させています。
そんな最注目株の若い二人が、美しき謎に満ちた前代未聞の学園ホラーに挑戦しています。他にも、ホラー映画初挑戦となる加藤あいや、数多くの映画ドラマに出演している袴田吉彦らも、謎めいた役で本作を彩っています。

そして、映画の最後を飾る主題歌は、ティーンを中心に絶大な人気を誇るディーバ・加藤ミリヤが、映画を観た興奮をそのまま自らの作詞作曲に反映させて書き下ろしました。
その仕上がりは、古澤監督をして「パズルのようなこの映画の、最後の大切なピース」と言わしめるほど、映画の1つの大事な要素となっています。

【ストーリー】

1998年春。15歳の榊原恒一(山崎賢人)は、父親が海外出張に行く期間中、叔母の三神怜子(加藤あい)がいる山間の地方都市・夜見山市でしばらく暮らすことになる。
転居早々、恒一は気胸の発作で倒れてしまい、病院に担ぎ込まれる。

      003

入院中のある日、病院のエレベーターで恒一は制服を着た眼帯の美少女と出会う。
その美しさに思わず見入ってしまうが、少女は不可解な言葉を残し、地下の霊安室へと消えてしまう・・・。                             

      004

病院から退院した恒一が夜見山北中学校の3年3組に登校すると、病院で出会った少女・見崎鳴(橋本愛)が教室にいた。

恒一は彼女が気にかかって仕方がなくなるが、彼女はクラス内で奇妙な扱いを受けていた。
クラスメート全員や担任の先生までもが、“まるで彼女など存在しないかのように”振舞っているのだ。
もしや彼女の姿は自分にしか見えていないのか?
彼女は幽霊なのか?

      009

恒一は不思議に思い、鳴に直接訊いてみようと追いかけるが、その都度見失ってしまう。
それでも何とか恒一は鳴に辿り着くのだが、その瞬間をクラスメートの1人に目撃されてしまう。
その直後、そのクラスメートが無残な事故で命を落としてしまう。

      005

「ルール破ったからだ…」
別のクラスメートがそう呟いた。

      006

その後、謎めいた図書室司書の千曳辰治(袴田吉彦)も現れ、3年3組の周りで次々と不吉な出来事が起こり、死者が増えていく。

      007

まるでクラスの中に死への扉を開いてしまったかのように・・・。
「気をつけて。もう始まってるかも知れない」

      002

ミサキメイは実在するのか?!
そして、ルールとは?!
3年3組に一体何が起ころうとしているのか?!

     010_3

【感 想】

途中で寝ることもなく、なんとか退屈しないで観ることが出来ましたが、突っ込みどころがたくさんある映画でした。原作が良かっただけに、ちょっと残念です。
最初のシーンで、榊原恒一が夢の中で母親に出会うところがありますが、この中に見崎鳴が出てくることの説明や、二人が病院で初めて出会ったとき、見崎鳴が地下の霊安室へと消えてしまうところなどに、何の説明もありません。
こんな事柄を一つ一つ挙げていけば、キリが無いぐらいたくさんあります。

008_2 また、ホラー映画だと思って観に行くと期待が裏切られます。全然ホラーっぽくありません。被害者たちの死に方で、ちょっと目を覆うようなシーンがありますが、話の流れとしてはまったく怖くないのです。
ひとつ間違うと、教師まで巻き込んでイジメが起きている、陰湿な学園ドラマと言った感じの映画でしたが、主演の山崎賢人と橋本愛は、なかなか良い感じでした。

【キャスト】1111112

山崎賢人・・・榊原恒一
橋本愛・・・見崎鳴
袴田吉彦・・・千曳辰治
加藤あい・・・三神怜子  
今野真菜
正名僕蔵 
佐藤寛子  
つみきみほ 
銀粉蝶

【スタッフ】

原 作 - 綾辻行人「Another アナザー」
監 督 - 古澤健
脚 本 - 田中幸子、古澤健
音 楽 - 安川午朗
主題歌 - 加藤ミリヤ「楽園」

2012年5月11日 (金)

アンネの追憶

【解 説】007_2

アリソン・レスリー・ゴールド著『もうひとつの「アンネの日記」』を、モロッコ出身のアルベルト・ネグリン監督が脚色も兼ね、イタリアで映像化。
アンネ・フランクの幼馴染ハンナ・ピック=ホスラーが『アンネの日記』に記されなかった空白を明かす。
ハンナが語るアンネの思い出、そしてハンナが体験したナチス占領のつらい体験が描かれる。

世界で最も有名な15歳の少女、アンネ・フランクがナチスによるユダヤ人迫害の日々を綴った『アンネの日記』。
アウシュヴィッツ収容所でもパンよりも紙とペンを望んだというアンネが書きたくても書けなかった壮絶な真実を描いている。

未来への希望に溢れた毎日から一変して、隠れ家に身を潜める事を余儀なくされたアンネ。
自らの命が危ぶまれている時さえ親友のハネリを心配し、紙さえあれば自分の思いを書かずにはいられないのだった。

監督は、「タワーオブ・タイタンズ」のアルベルト・ネグリン。
出演は、「ココ・シャネル」のロザベル・ラウレンティ・セラーズ、「炎の戦線 エル・アラメイン」のエミリオ・ソルフリッツィ。

【あらすじ】

1935年、アムステルダム。小学生のユダヤ人少女アンネ・フランク(ロザベル・ラウレンティ・セラーズ)は、同じユダヤ系のハネリ・ホスラーと仲良しになる。

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2人はお互いの夢を語り合い、楽しい日々を過ごしていた。

しかしナチス・ドイツによるユダヤ人迫害は、日に日に厳しくなっていた。
13歳の誕生日、アンネはプレゼントされたサイン帳に日記を書き始める。

        001

それからひと月も経たずに、16歳の姉マルゴーに招集命令が届く。父オットー(エミリオ・ソルフリッツィ)は経営する会社の建物の隠れ家に、妻エーディトや娘たちと身を隠すことにする。

        002

会社の女性部下ミープは、彼らを匿い、必要なものを届ける役目を買って出る。隠れ家では、アンネと年が近いペーターの一家など、8人で暮らしていた。
ハネリが行方を探しに来るが、アンネはここにいると知らせることはできなかった。

1年後、ハネリが父や妹とともにナチスに捕えられたことを知り、隠れ家に誘わなかったことを後悔する。

アンネたちは、息をひそめる生活の中でラジオから戦争の経過を耳にしては
希望を持ち続け、アンネとペーターの間には幼い恋が芽生えていた。

ある日、隠れ家にゲシュタポがやってきて、必死で取りつくろうミープを押しやり隠れていた人々を見つけると、すぐに荷物をまとめるよう強制する。ゲシュタポがみんなを連れ去ったあと、ミープはひとりで床にばらまかれたアンネの日記を拾い集めるのだった。

        006

アンネたちは貨車に詰め込まれ、何日もかけてアウシュヴィッツ強制収容所に連れて行かれる。
荷物は没収され、男女別々に収容される。

        004

アンネはまだ15歳だったが、オットーの機転で大人たちと一緒になる。しかし父とは、これが最後となった……

【感 想】

この映画の原作が、アンネの親友だったハネリーが語った話をまとめたものということで、ハネリーの視点での話とアンネの父・オットーの視点での話、そして、アンネの収容所での様子を、証言を元に再現した話の、3つの視点から描かれています。

「アンネの日記」には書かれていない、誕生日のお祝いで日記帳をもらうシーンや、隠れ家が見つかり収容所へ移送され、そこでの生活なども書かれています。列車の中に詰め込まれた状態での移動や、アウシュビッツに着いて、老人や子ども、男と女に選別され、順番にガス室に送られるシーンは、何度観ても心が痛みます。また、アンネとハネリーが、収容所の堀の内と外で生きていることを確認し合うシーンがありましたが、実際にあのような偶然の出来事があったことを、この映画で初めて知りました。

005ただ、映画としては、アンネに焦点が当たっている分、少し中途半端な内容になってしまった感がします。
ハネリー一家の収容所での様子や、彼女の父の死なども描かれていますが、普通の服を着ていたり動き回ったりと、アンネたちの収容所での様子とは少し違っていましたが、説明も無いのでその違いがよく分かりませんでした。

それに、ドイツ人もオランダ人もみんな英語を話していると言うのも、ちょっと違和感がありました。

余談ですが・・・
私が「アンネの日記」を初めて読んだのは、小学校6年生の時でしたが、中学3年生の時、英語の教科書に「アンネの日記」が英文で紹介されていたのがきっかけで、再読しました。
「たとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを今でも私は信じています。」
英語の教科書に載っていた文の一部です。英文は忘れましたが、今も印象に残っています。

【スタッフ】008

監督 アルベルト・ネグリン   
原作 アリソン・レスリー・ゴールド 
音楽 エンニオ・モリコーネ

【キャスト】

ロザベル・ラウレンティ・セラーズ / アンネ・フランク
エミリオ・ソルフリッツィ / オットー・フランク
モーニ・オヴァディア / ラビ
スルディ・パンナ / ハネリ・ホスラー
メシシュ・ガシュパル
アレクサ・カプリエラン
サライ・クリスタ
スルディ・ミクロシュ
バコニェ・チラ

2012年4月 5日 (木)

アーティスト

05【解 説】

サイレントからトーキーへと移り変わるころのハリウッドを舞台に、スター俳優の葛藤と愛を美しいモノクロ映像でつづるサイレント映画。
フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がメガホンを取り、ヨーロッパのみならずアメリカの映画賞をも席巻。

芸術家(アーティスト)であることに誇りをもち、時代の変化の波に乗れずに凋落(ちょうらく)してしまうスターを演じるのは、『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』のジャン・デュジャルダン。
ほかに、ジョン・グッドマンなどのハリウッドの名脇役が出演。

サイレントの傑作の数々へのオマージュが、映画ファンの心をくすぐり、シンプルでロマンチックなラブストーリーも感動を誘う。

【作品紹介】

第84回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、監督賞など5部門を受賞。
フランス人監督とフランス人による主演、しかもモノクロでサイレント(無声映画)。
そんなハンディをものともしない受賞結果は、セリフや音響効果に頼らなくても、素晴らしい映画ができるという“証(あかし)”でもある。
サイレント映画が作品賞を受賞するのは、第1回アカデミー賞以来83年ぶり。
ストーリーはごくシンプルながら、感情を表情や動きで表現するサイレント映画の手法が、現代では逆に新鮮に見えるから不思議だ。
主演の2人が実に魅力的で、戦前のハリウッドスターを演じながらも、現代アメリカ人俳優には出せない味をよく出している

0001    0002

【あらすじ】

1927年、サイレント映画全盛のハリウッド。
大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、共演した愛犬とともに新作の舞台挨拶で拍手喝采を浴びていた。

          0009

熱狂する観客たちで映画館前は大混乱となり、若い女性ファンがジョージを突き飛ばしてしまう。
それでも優しく微笑むジョージに感激した彼女は、大胆にも憧れの大スターの頬にキス。
その瞬間を捉えた写真は、翌日の新聞の一面を飾る。

         0013

写真の彼女の名前はペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)、未来のスターを目指す新人女優だった。

         0014

映画会社キノグラフでオーディションを受けた彼女は、愛らしい笑顔とキュートなダンスで、ジョージ主演作のエキストラ役を獲得。

撮影後、楽屋を訪ねてきたペピーに、ジョージは“女優を目指すのなら、目立つ特徴がないと”と、アイライナーで唇の上にほくろを描く。その日を境に、ペピーの快進撃が始まる。踊り子、メイド、名前のある役、そして遂にヒロインに。

        0016 

1929年、セリフのあるトーキー映画が登場すると、過去の栄光に固執し、“サイレント映画こそ芸術”と主張するジョージは、キノグラフ社の社長(ジョン・グッドマン)と決別する。
しかし数か月後、自ら初監督と主演を務めたサイレント映画は大コケ。
心を閉ざしたジョージは、心配して訪ねてきたペピーすら追い返してしまう。

        0012   

それから1年。
今やペピーはトーキー映画の新進スターとして人気を獲得していた。
一方、妻に追い出されたジョージは、運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)すら雇えなくなり、オークションで想い出の品々を売り払う。

        0010

執事にその全てを買い取らせたペピーは、ジョージの孤独な背中に涙を流す。
酒に溺れるジョージは自分に絶望し、唯一の財産であるフィルムに放火。
愛犬の活躍で救出されたジョージの元へ駆けつけたのは、変わらぬ愛を抱くペピーだった。

        0011

“銀幕のスター”ジョージを復活させる名案を携えて……。

        0003

【感 想】

白黒の無声映画なので、画面に集中して観ていました。
音楽が効果的に使われており、白黒の濃淡を上手く使っているのに感心しました。いつもジョージの側にいる犬が何とも言えず可愛いし、表情や表現が豊かな映画なので、最後まで楽しく観ることが出来ました。
ペピーがジャックの上着の袖に手を通して演技するシーンや、階段を上手く使っているのも印象に残りました。
また、映写の光で出来たジョージの影が、勝手に動いて消えていくシーンにはちょっと驚きました。
でも、ホントにちょっとほくろをアクセントとしてつけるだけで、とてもチャーミングに見えるんですね・・・(笑)

0017最後のタップダンスは圧巻でした。その後がまた良いです。
タップダンスが終わり、本番という声がかかると、これまで無声だった映画に音声が入り、活気づいた様子が感じられ、とても印象に残るラストでした。余韻が良いですね。

近頃、CGを使ったシーンや3Dでの映像など、いろんな新しい手法を駆使して作られている映画が多くなりましたが、画面構成や俳優の表情、音楽と少しのセリフで、こんなに豊かな表現が出来るのは素晴らしいです。

【キャスト】

04ジャン・デュジャルダン・・・ジョージ・ヴァレンティン
ベレニス・ベジョ・・・ペピー・ミラー
アギー・・・ジャック(犬)
ジョン・グッドマン・・・アル・ジマー
ジェームズ・クロムウェル・・・クリフトン
ミッシー・パイル・・・コンスタンス
ペネロープ・アン・ミラー・・・ドリス

【スタッフ】

監督 ミシェル・アザナヴィシウス 
脚本 ミシェル・アザナヴィシウス 
製作 トマ・ラングマン 
撮影 ギヨーム・シフマン 
美術 ローレンス・ベネット 
音楽 ルドヴィック・ブールス 
衣裳デザイン マーク・ブリッジス   

2011年8月 7日 (日)

あしたのジョー

01_4  【作品解説】

日本漫画史上の傑作、高森朝雄・ちばてつや原作による同名ボクシング漫画を実写映画化。
主人公・矢吹丈が宿命のライバル・力石徹と出会い、やがてリング上で対決するまでを描く。
監督は「ICHI」の曽利文彦。
出演は「映画 クロサギ」の山下智久、「十三人の刺客」の伊勢谷友介、「ラブコメ」の香里奈、「SP 野望篇」の香川照之、「老人の恋 紙の力士」の勝矢など。

監督の曽利文彦は『ピンポン』でも漫画の映画化に挑んだが、本作ではCGを多用せず、オーソドックスな映像表現で直球勝負。
長い原作を映画用に絞り込むため、本作では主なキャラクターを丈と力石、そして段平と葉子の4人に設定。
丈にNEWSの山下智久、力石に伊勢谷友介が扮して“いま”の「あしたのジョー」を生み出し、より「宿命の対決」を強調している。

しかしなんと言っても、段平役の香川照之に目を奪われる。「立て、立つんだ。ジョ~!」の名セリフをはじめ、原作そのままの段平がのり移ったかのような魂を感じさせる。
力石の過酷な減量シーンをはじめ、原作の印象的な名シーンはちゃんとあるので、原作ファンも楽しめるだろう。

       001jpg

【ストーリー】

昭和40年代、東京の下町で殺伐とした生活を送る矢吹丈は、その天性の身のこなしから、元ボクサー・丹下段平にボクサーとしてのセンスを見出される。
007

ところが、問題を起こしたジョーは少年院へ。
002 

そこでジョーは、チャンピオンレベルの力を持つプロボクサー・力石徹と運命の出会いを果たし、ふたりは反目しながらも互いの力を認め、ライバルとして惹かれ合うようになっていく。
04

一足先に少年院を出た力石は、財閥の令嬢・白木葉子の支援による恵まれた環境のなか連戦連勝。圧倒的な強さでエリート街道をひた走る。
006

一方のジョーは、橋の下のオンボロジムで段平と二人三脚の特訓。野性むき出しで“クロスカウンターパンチ”を得意とする人気ボクサーとなる。
05

やがて力石は世界タイトルに手が届くところまで上り詰めるが、世界戦の前にジョーとの決着を望み、葉子を困惑させる。そしてジョーも、段平に力石戦実現を強く求めるのであった。
しかし、ふたりの間には、そのキャリア、実力の差もさることながら、ボクシングでは決定的となるウエイトの差もあった。対決を妨げる壁は、厚く、高かったが、認めあうふたりは命を削り、これを乗り越える。
003

そして、運命の日。場所はボクシングの聖地・後楽園ホール。ふたりは宿命のリングに上がる・・・・・・。

【感 想】

矢吹と西の出会いと、白木葉子の生い立ち以外は、ほぼ原作通りのストーリーなので、展開は予想できましたが、それでも、山下智久と伊勢谷友介と香川照之の三人の演技は、見応えがありました。
香川照之だけが特殊メークで、最初はちょっと滑稽な感じで違和感もありましたが、さすがに上手いです。ちょっと芝居がかったオーバーな台詞まわしにも慣れてしまい、いつのまにか特殊メークも意識しなくなりました。
しかし、ボクシングのシーンで、打撃を受けた時の顔はCGだと思いますが、せっかく生で迫力のある演技をしているのに、CGでゆがめられた顔を見ると、ちょっとしらけてしまいます。CGを使ったために、逆に凄みが無くなってしまったように感じます。

03_2山下智久と伊勢谷友介は、実際に10Kgほど絞ってこの撮影に臨んだそうですが、すばらしい体を作って来たのは見事です。あの力石の減量シーンも、見応えがありました。また、減量後の伊勢谷友介の体には、驚かされましたし、ボクシングのトレーニングシーンは大変だったと思います。二人とも、すごいですね。役者根性を感じます。撮影も結構ハードだったでしょうに、あれだけ絞っての演技は、悲壮感さえ感じました。途中から、見入ってしまいました。面白かっったです。

【スタッフ】

監督: 曽利文彦
原作: 高森朝雄 / ちばてつや

【キャスト】

矢吹丈・・・・・・山下智久 09
力石徹・・・・・・伊勢谷友介
白木葉子・・・・・・香里奈
丹下段平・・・・・・香川照之
西寛一・・・・・・勝矢
ウルフ金串・・・・・・虎牙光揮
サチ・・・・・・畠山彩奈
食堂の親父・・・・・・モロ師岡
食堂の女将・・・・・・西田尚美
安藤洋司・・・・・・杉本哲太
花村マリ・・・・・・倍賞美津子
白木幹之介・・・・・・津川雅彦

2011年6月30日 (木)

阿弥陀堂だより

2002年度の作品です。
時間をかけて、丁寧に作られている映画って、良いですね。
01

【解 説】

11_2主人公夫婦を演じるのは、『雨あがる』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した寺尾聰 と、『女殺油地獄』以来実に9年ぶりの映画出演となった樋口可南子。

撮影現場でも息がぴったりだった二人は、お互いを支えあって生きてきた夫婦を自然体で演じきっている。また、91歳の大女優、北林谷栄も、死者を守る阿弥陀堂に生活する老婆を、時には可笑しく、時には切なく、熱演している。
さらに、黒澤組を支えてきた俳優陣である、香川京子、井川比佐志、吉岡秀隆や、ベテラン田村高廣、さらに映画初出演ながら難役に挑んだ小西真奈美などがしっかりと脇を固めている。
原作は、平成元年に「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞を受賞した南木佳士の同名小説「阿弥陀堂だより」。今も長野県で医師をしながら、すばらしい作品を発表しつづけている。
音楽を、『大河の一滴』やNHKのドキュメンタリー番組などを手掛ける加古隆が担当。若い女性を中心に大ヒットを記録したヒーリング・ミュージックCD「イマージュ」への楽曲提供などで現代人の心を癒しつづける彼の音楽が、映画により深い感動を産み出している。ほかに、『雨あがる』で日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した上田正治、最優秀美術賞を受賞した村木与四郎、『八月の狂詩曲』で最優秀録音賞受賞の紅谷愃一、『カンゾー先生』で最優秀照明賞を受賞した山川英明、衣装アドバイザーに黒澤和子と素晴らしい匠が結集している。

【あらすじ】

東京で暮らす熟年の夫婦、孝夫と美智子。
孝夫は新人賞を受賞するも、それ以降なかなか日の目を見ない売れない小説家。
医師として大学病院で働いていた美智子は、ある時、パニック障害という心の病にかかってしまう。
02

東京での生活に疲れた二人が、孝夫の実家のある長野県に戻ってきたところから映画は始まる。
二人は大自然の中で暮し始め、様々な悩みを抱えた人々とのふれあいによって、徐々に自分自身を、そして生きる喜びを取り戻していく。

1

山里の美しい村に帰った二人は、96歳の老婆おうめを訪ねる。
彼女は、阿弥陀堂という、村の死者が祭られたお堂に暮らしていた。
06

何度かおうめのところに通ううちに孝夫は、喋ることが出来ない難病を抱える少女、小百合に出会う。彼女は村の広報誌に「阿弥陀堂だより」というコラムを連載していた。それは、おうめが日々思ったことを小百合が書きとめ、まとめているものであった。

〈阿弥陀堂だより〉
目先のことにとらわれるなと世間では言われていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに目先のことばかり考えていたら知らぬ間に九十六歳になっていました。目先しか見えなかったので、よそ見をして心配事を増やさなかったのがよかったのでしょうか。それが長寿のひけつかも知れません。

それまで無医村であったこの村で、美智子は診療所を開く。おうめや小百合、そして村の人々の診察を通して、医者としての自信と責任を取り戻してくる。

04

一方孝夫は、中学校の時の恩師、幸田重長がガンに冒されながらも死期を潔く迎えようとしていることを知る。幸田老人と彼に寄り添う妻のヨネの生きる姿に、深い感銘を受ける孝夫。

〈阿弥陀堂だより〉
畑にはなんでも植えてあります。ナス、キュウリ、トマト、カボチャ、スイカ、……。そのとき体が欲しがるものを好きなように食べてきました。質素なものばかり食べていたのが長寿につながったのだとしたら、それはお金がなかったからできたのです。貧乏はありがたいことです。

二人は村の人々とふれあい、自然に抱かれて暮らしていくうちに、いつしか生きる喜びを取り戻していくのであった。

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そんな時、小百合の病状が悪化していることが判明する。すぐに手術をしなければ命が危ないという事態に、彼女の手術担当医として再びメスを握ることを決意した美智子は、町の総合病院の若き医師・中村と協力して、無事、手術に成功する。
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秋、幸田が静かに息を引き取った。
冬が過ぎ、再び春がやって来る。今やすっかり病を克服した美智子のお腹の中では、孝夫との間に出来た新しい命が息づいていた10   

〈阿弥陀堂だより〉
雪が降ると山と里の境がなくなり、どこも白一色になります。山の奥にある御先祖様たちの住むあの世と、里のこの世の境がなくなって、どちらがどちらだか分からなくなるのが冬です。
春、夏、秋、冬。はっきりしていた山と里との境が少しずつ消えてゆき、一年がめぐります。人の一生とおなじなのだと、この歳にしてしみじみ気がつきました。

【感 想】03

自然に囲まれて暮らしていく人々の息づかいが聞こえてくるような映画でした。 鳥の声や小川のせせらぎ、風の音・・・それに、四季それぞれの風景。
観ている間、映画って本当に素敵だなぁ・・・と思わせてくれる気持ちの良い時間を過ごしました。
05殺伐とした東京から、長野県の山里に移り住むことになった医師、美智子の視点から描かれているシーンが多いので、その感動が直に伝わってくるようです。

おうめ婆さんが語る一言一言にも、いちいち頷きながら観ていました。
「わしゃあこの歳まで生きて来ると、いい話だけを聞きてえであります。たいていのせつねえ話は聞き飽きたもんでありますからなあ」
「金出して本買って、せつねえ話を読まされるじゃあたまらねえでありましょうや。うれしくなりたくって金を払うじゃあありますまいか」
まったくその通りです。

小百合の手術が成功し、声を取り戻した元気な姿を見た時、おうめ婆さんが小躍りして喜んだように、さわやかな気持ちになりました。
観終わって、良い気分になれる映画って、ホント良いですね。

12_3  【キャスト】

上田孝夫・・・寺尾聰
上田美智子・・・樋口可南子
おうめ婆さん・・・北林谷栄
幸田重長・・・田村高廣
幸田ヨネ・・・香川京子
助役・・・井川比佐志
中村医師・・・吉岡秀隆 
小百合・・・小西真奈美 

【スタッフ】
監督 小泉堯史 
脚色 小泉堯史 
原作 南木佳士 
撮影 上田正治 

2011年6月18日 (土)

大奥

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A0008__4 【解 説】

原作は、よしながふみの同名人気コミック。
2009年度手塚治虫文化賞大賞、第56回小学館漫画大賞を受賞。

謎の疫病により男の人口が激減し、全ての重要な仕事を女が占め、男が体を売るという男の園となった「大奥」を舞台に、野望、悲哀、嫉妬、策略、愛の濃厚なドラマが繰り広げられる。

【キャッチコピー】
将軍は女、仕えるは美しき男たち三千人  
待ち受けるのは愛か死か

1人の女将軍に3000人の美しき男たちが仕える大奥。
男女の役割が逆転したユニークな世界を描き、人気を博した同名コミックを実写映画化。

A0002_【ストーリー】

江戸時代、男だけを襲う謎の疫病により、男性の人口が激減した日本では、全ての要職を女性が担い、数少ない男の価値は子種を残すことのみであった。

そんな男女逆転した世にあって、水野祐之進(二宮和也)はもはや芸事と化した剣術に打ち込み、武士としての道を追い求めていた。
だが彼は、困窮した旗本である家を救うため、大奥にあがることを決意。

それは互いに恋心を抱きながらも、身分違いの叶わぬ恋の相手である大問屋の娘、お信(堀北真希)への想いを断ち切るためでもあった。

意気揚々と月代を剃り上げ、髷を結い大奥にあがった水野は、これまで見たこともない程の数多の美男が集められている大奥に驚愕する。
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徳川の血を絶やさぬため一人の女将軍のもと、3000人の美男が集められたといわれる女人禁制の男の園。そこでは将軍の寵愛を求めて、日夜、才色兼ね備えた男たちの熾烈な競争が繰り広げられていた。
不条理な世界で、容赦なく様々な嫌がらせの洗礼を浴びせられる新入りの水野であったが、持ち前の度胸と、良き理解者である古参の先輩格、杉下(阿部サダヲ)の助言で窮地を切り抜けていく。

A0012__2

幼少で逝去した家継に代わり、紀州より第八代将軍徳川吉宗(柴咲コウ)が迎えられた。
策謀の果てに将軍の座を掴んだ吉宗は、武芸を好み、一人で馬を走らせる様な男勝りな面もありながら、不況の世を憂い、質素倹約を旨に果敢に政治の、そして大奥の抜本的改革に挑む知性に富んだ女性であった。
A0005_ 吉宗初の大奥へのお目見えとなる“総触れ”を控えたある日、水野は大奥総取締、藤波(佐々木蔵之介)から、将軍の“お手つき”として寵愛を受ける可能性のある御中臈の位への昇進を告げられる。

“総触れ”の日、美男揃いの大奥の中から、更に選ばれし者たちが色とりどりの裃で着飾り、御鈴廊下を埋め尽くす中、水野もそこに加わった。
そして鈴の音が鳴り、今まさに将軍吉宗が姿を現そうとしていた・・・・・・。

【感 想】

面白い映画でした。十分楽しめました。
原作をほぼ忠実に映像化しているところが良いですね。
映画に原作がある場合、忠実に再現するか、まったく別の解釈で映像化する方が良い場合が多いです。その辺を曖昧に仕立てると、作品自体が中途半端なものになってしまいます。
この映画には、原作のエピソードを省略して、オリジナルのエピソードもいくつか入っています。
A0010_七代将軍が死去し、吉宗が八代と決まった次のシーンが、馬に乗って疾走している吉宗の大写しでしたが、これじゃまるで、「暴れん坊将軍」じゃないですか・・・。これはちょっと余計なカットだなぁって思っていたら、次の場面では、町人の装束で江戸市中を散策しているシーンもありました。やっぱり「暴れん坊将軍」でした。というより、女性だから「琴姫七変化」かな・・・(笑)←古い話ですみません。
それともう一つ、鶴岡役の大倉忠義が切腹する時に介錯をしますが、城内の庭での切腹は無いでしょう。

役者さんたちですが、柴咲コウは目力(めじから)がいいので、様にはなっていましたが、時代劇の台詞回しはちょっといただけません。玉木宏、佐々木蔵之介など、良い役者さんが脇を固めていますが、佐々木蔵之介はさすがにうまいです。でも、映画では初めて見る堀北真希が、とても上手なのには驚きました。
月代(さかやき)姿の二宮和也は、周りに身長の高い俳優さんがでているので、ちょっと貧相でした。でも、堀北真希とのツーショットは雰囲気が良いですし、町人の格好はよく似合っています。最初のところで、堀北真希の切れた鼻緒を直してあげるシーンがありましたが、直している手元がまったく映っていませんでした。手際が悪かったのでしょうか・・・?

最後のお寺の境内で、二人が抱き合って終わりか・・・と思っていましたが、最後の最後になって、意外なオリジナルシーンがあり、ちょっと驚きましたが、このエピソードは吉宗が実際に行ったことであり、一連の流れの中で違和感もなく、とても良かったです。佐々木蔵之介と玉木宏の顔の表情の良いですね。

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スタッフA0007_
監督:金子文紀
脚本:高橋ナツコ

キャスト
水野祐之進:二宮和也
徳川吉宗:柴咲コウ
お信:堀北真希
鶴岡:大倉忠義
垣添:中村蒼
松島:玉木宏(特別出演)
水野頼宣:倍賞美津子
水野の父:竹脇無我
加納久通:和久井映見
杉下:阿部サダヲ
藤波:佐々木蔵之介
瀬川:細田よしひこ
白河:竹財輝之助
柏木:松島庄汰
副島:ムロツヨシ
山元:崎本大海
石塚:三上真史
三郎左:金子ノブアキ
水野志乃:白羽ゆり
三田村:田上晃吉
八重:宍戸美和公
御伽坊主:浅野和之
大岡忠相(越前):板谷由夏
間部詮房:菊川怜
村瀬の声:大滝秀治
 

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