【解 説】
イギリスのロンドンで1985年にミュージカルとして初演されて以来、全世界42ヶ国で公演されたミュージカルの名作『レ・ミゼラブル』が、スクリーンに登場した。
監督は、『英国王のスピーチ』のトム・フーパー。
彼はミュージカル映画としては異例の、撮影現場でピアノ伴奏に合わせて歌うライブレコーディング方式を選んだ。
舞台のキャリアがある俳優たちを集め、俳優たちの高ぶった感情を、見事に映画として切り取ってみせている。
出演は「X-MEN」シリーズのヒュー・ジャックマン、「グラディエーター」のラッセル・クロウ、「プラダを着た悪魔」のアン・ハサウェイ。
ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイたちキャストらは、振り絞るような歌を披露し、観客の心を揺さぶってみせる。
原作は、19世紀のフランスを舞台にした、ヴィクトル・ユーゴーの名作小説「レ・ミゼラブル(邦題:ああ無情)」。
【あらすじ】
格差と貧困にあえぐ民衆が自由を求めて立ちあがろうとしていた19世紀のフランス。
ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、パンを盗んだ罪で19年間投獄され、仮釈放されたものの生活に行き詰まり、再び盗みを働く。
しかし、その罪を見逃し赦してくれた司教の慈悲に触れ、身も心も生まれ変わろうと決意。マドレーヌと名前を変え、工場主として成功を収め、市長の地位に上り詰めたバルジャンだったが、警官のジャベール(ラッセル・クロウ)は彼を執拗に追いかけてくるのだった。
そんな中、以前バルジャンの工場で働いていて、娘を養うため極貧生活を送るファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、バルジャンは彼女の幼い娘コゼットの未来を託される。
ところがある日、バルジャン逮捕の知らせを耳にした彼は、法廷で自分の正体を明かし再び追われることになり、ジャベールの追跡をかわしてパリへ逃亡。
コゼットに限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。だが、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発、バルジャンやコゼットも次第に激動の波に呑まれていく・・・・・・。
【感 想】
まず、スケールの大きさに驚きました。見応えがあります。時間もお金もかかっている様です。映画ならではの醍醐味です。こういうダイナミックな映画は、大きなスクリーンで観るに限りますね。
また、上映時間が158分(2時間58分)と、とても長い映画でしたが、なんとか退屈もせず、見ることが出来ました。
(カメラをズームインさせ、大写しにした)アップと(遠くから望遠で全体を映す)ロングを効果的に使っているので、舞台とは違い(といっても、もちろん舞台は観ていませんが・・・)迫力は満点でした。
俳優陣が良いです。演技もそうですが、歌も見事です。
撮影現場で、ピアノ伴奏に合わせ、俳優たちが実際に歌っている声をレコーディングして採用して居ると言うことですが、顔を大写しにされた状態でも、堂々と歌っています。
特に、ファンティーヌ役の「アン・ハサウェイ」と言う女優さんは、涙を流し、嗚咽しながらも、声がちゃんと出て、歌がしっかり歌えているのには、ちょっと驚きもし、感動すら覚えました。
また、自分の髪を売ってお金に換えるシーンでは、実際に自分の、綺麗な長い髪を切られて居るんですね。
この映画は、劇場ミュージカルの映画化です。
観る前に、セリフが全部歌で・・・と言うように聞いていたので、C・ドヌーヴの映画「シェルブールの雨傘」のような、歌で会話もするのかなと思っていました。もちろん、歌で会話をして居るシーンもありますが、相づちとか、短いセリフは普通に話していましたので、ちょっと「あれっ」と思いながら観ていました。オペラ風のミュージカルですね・・・。
歌うシーンは、自分のその時々の心情を告白するような内容が、朗々と歌われていますので、歌の部分でストーリーが展開するようなこともありません。
実際にその場で歌っていると言うことなので、歌っている顔をアップで撮ったまま歌われる場面が多く、ほとんど動きがありません。ゆっくり歩きながら・・・というシーンはありましたが、動きが無いのです。
ミュージカルと言えば、スクリーン狭しと歌って踊ってと言う映画をイメージしていたので、ちょっと面食らいました。
ここは意見が分かれるところだと思いますが、その時々の思いをしっかりと歌う間、画面が固定されてしまうし、結構長い時間歌われるので、ちょっと間延びするような感じがしました。
子役たちは、とても良かったです。
まず、コゼットの子ども時代を演じていた「イザベル・アレン」という女の子が気に入りました。
見事な歌いっぷりですし、演技も上手です。目がとても印象的でした。表情も良いですね。
これから、おそらくいろんな映画に出てくると思いますので、名前をインプットしておきましょう。
それにもう一人・・・。
家具などで封鎖していたバリケードの外に出て、撃たれて死んでしまう少年・ガブローシュを演じていたのは、「ダニエル・ハトルストーン」という少年です。どこにも名前が載っていないので、探すのに苦労しました。
ボーイソプラノの素敵な声に、ちょっと感激ですが、彼が射殺された事がきっかけとなって、銃撃戦に突入して行きます。
私は、子どもが死んでいく映画を観るのは、チョット苦手です。
子どもの死をテーマにした映画ならまだしも、エピソード的に入れて観客の涙を期待するような演出は、私は好きになれません。
このシーンが原作にあるのかどうかは知りませんが、幼気な子どもが、理不尽に殺されていくのを見せられると、可哀想だと思うのは当たり前です。
また、話の展開が、ちょっと雑いので、ストーリーをもう少し丁寧に作ってほしかったとも思いました。
仮出獄してきて、仕事を探そうとすると身分証明書の提示を求められ、見せると仮出獄だとばれてしまい断られてしまう・・・そういうことが繰り返され、寝る場所や食べるものにも困っていたら、司教が手をさしのべてくれます。
ところが、教会でお世話になったにもかかわらず、その教会の銀食器を盗んで逃走するところを捕まりますが、司教の一言で釈放され、悔い改めると言う気持ちになります。ここで、過去を捨て、身分を示す書類を破り捨ててしまうのです。
そして、その次のシーンが、9年後、市長になって、工場を経営していました。
職を得るのに、毎回身分証明書の提示を求められるシーンや、むげに断られるシーンを見せつけて置いて、どうして、身分を証明するものが無い人物が、たった9年で工場も経営でき、市長にまで成れるのでしょうか。
結局、ジャン・バルジャンが市長を務めている、その街に赴任してきた警官のジャベールに追われることになりまますが、死なせてしまったファンティーヌの娘・コゼットを助け出すために、3日間の猶予が欲しい・・・と言って、その場から逃げます。結局は、そのまま8年後に見つかるまで、逃げて隠れていたと言うことになりますが、それは無いでしょう・・・。
「3日間の猶予が欲しい・・・」と言って逃げたのなら、それを守らないと行けないですね。それと同じようなセリフが、ラストの所にも出てきます。
ジャン・バルジャンが、銃弾で傷ついたマリウスを抱えて、連れ出そうとしているところで、またもやジャベールに見つかってしまいます。
ところが、「1時間だけ時間が欲しい・・・」というジャン・バルジャンを、ジャベールは見逃してしまいます。
3日の約束を守らなかった者に、1時間待って欲しいって言われても、信用できるはずもありません。しかも、やはりその1時間の約束も反故にされているし・・・。
映画を観ながら、「メロスは、命をかけて約束を守ったぞ・・・」と思ってしまいましたって、なんのこっちゃ・・・(笑)
ジャベールは、ジャン・バルジャンを見逃した後、自己嫌悪に陥ってしまったのか、なぜか自殺してしまいます。
この辺の心情は、キリスト教とも関係していくることなのかも知れません。おそらく、キリスト教の事を理解していないと、よく分からない話になっているのでしょうが、少なくとも私は、「なんで死ぬの・・・?」と思いながら観ていました。
このところ、ちょっと悲しいシーンがあると、すぐに涙が流れてくる私ですが、この映画は、初めから終わりまで、まったく泣けませんでした。
振り返って考えてみると、ジャン・バルジャンをはじめ、登場人物に、感情移入出来なかったことが、泣けなかった最大の原因なのかも知れませんね・・・。
【キャスト】
ヒュー・ジャックマン・・ジャン・バルジャン
ラッセル・クロウ・・・ジャベール
アン・ハサウェイ・・・ファンティーヌ
アマンダ・セイフライド・・・コゼット
(幼少期:イザベル・アレン)
アーロン・トベイト・・・アンジョルラス
サマンサ・バークスエポニーヌ
ヘレナ・ボナム・カーター・・・マダム・テナルディエ
サシャ・バロン・コーエン・・・テナルディエ
エディ・レッドメイン・・・マリウス
ガブローシュ・・・ダニエル・ハトルストーン
【スタッフ】
監 督・・・トム・フーパー
原 作・・・ビクトル・ユーゴー
脚 本・・・ウィリアム・ニコルソン
アラン・ブーブリル
クロード=ミシェル・シェーンベルク
ハーバート・クレッツマー
作 詞・・・ハーバート・クレッツマー
作 曲・・・クロード=ミシェル・シェーンベルク
=2月2日追加=
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