百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~
【解 説】
江戸風俗研究家で文筆家や漫画家としても活躍した、杉浦日向子の漫画代表作「百日紅」を、「カラフル」「河童のクゥと夏休み」の原恵一監督がアニメーション映画化。
江戸時代に当時の風俗をとらえ、庶民から愛された“浮世絵”。
浮世絵に生涯を捧げ、3万点を超える作品を発表した浮世絵師・葛飾北斎とその娘・お栄と、江戸に生きる人々との交流を描いた姿を、江戸の町の四季を通して描く。
アニメーション制作は、原監督作では初となるProduction I.Gが担当。
声優には、お栄役の杏、今作で声優初挑戦となる北斎役の松重豊ほか、濱田岳、高良健吾、美保純、筒井道隆、麻生久美子ら豪華俳優陣が集った。
【ストーリー】
百日紅(さるすべり)の花が咲く――お栄と北斎、仲間達のにぎやかな日々がはじまる。
江戸は下町の長屋に暮らす絵師の鉄蔵こと葛飾北斎とその娘、お栄。そして居候の善次郎。
3人は書き損じが散らかった部屋を気にも留めず、日夜創作活動に励んでいた。
そんな彼らのもとに鉄蔵のライバル歌川門下で若年ながら頭角を現す国直も出入りするようになる。
「親父と娘。筆二本、箸四本あればどう転んでも食っていける」と豪語するお栄ではあったが、なにかと気持ちが揺れ動く難しい時期を迎えていた。
公私ともに充実のときを迎える鉄蔵も盲目で病弱の末娘に悩み、若き日の縁者の死に遭遇。
駆け出し絵師として徐々に頭角を現す善治郎も、才気溢れるお栄や、年下ながら売れっ子絵師の国直に引け目を感じている。
国直も歌川一門の人間関係に窮屈さを感じ、自由闊達な鉄蔵門下に憧れを抱くも義理と人情の板挟みに遭っていた。
彼らが遭遇する事件を軸に、生き生きとした江戸庶民の生活が描かれる。
【感 想】
19日の火曜日に、大阪ステーションシネマで観ました。平日の昼間だというのに、結構入って居ました。
映画の原作は、杉浦日向子さんのマンガ「百日紅」で、江戸時代の浮世絵師・お栄(画号は応為)の目を通して、江戸の町の様子や庶民の暮らし、風俗や当時の世界観を描いた映画です。
お栄とその父・葛飾北斎を中心に物語が展開します。
原作者の杉浦日向子さんが2005年に46歳で亡くなってから、今年でちょうど10年になります。
作家・高橋克彦さんとの対談集やエッセイなどはよく読んでいましたし、NHKの「コメディーお江戸でござる」の最後の方で、寸劇の時代考証を語る杉浦さんが好きで、よく見ていました。
生きておられたら、当たり前ですが56歳ですね。
原作のマンガ・「百日紅」は(と言うより、杉浦さんのマンガは一冊も)読んでいませんが、1980年代に雑誌に連載されたこのマンガは、それぞれが独立した全30話の連作短編だと言うことです。
さて、本編ですが、原作の短編をいくつかつなげて一本の長編にした映画です。
観る前は、そう言うことだとは知らずに観たので、ぶつ切りのエピソードが並んでいるだけだったことに少し戸惑いましたが、江戸の風俗などがいくつか登場していて、それなりに楽しく観ました。
その一つに、お栄が「陰間茶屋」に行くエピソードがありますが、女性が陰間茶屋に行く事もあるというのは初めて知りました(笑)
初めて知ったと言えば、「放し鳥売り」と言った商売もあるんですね。
捕らえられた雀を、お金を払って逃がしてあげる・・・と言うだけのことです。なにか功徳があるんでしょう。
流れとしては、北斎の末娘で、お栄の妹・お猶(なお)のエピソードをラストに持ってきています。
この話だけ観ればいい話なのですが、それまでの両国橋や吉原の様子、火事場での火消しの仕事、妖怪騒ぎなど、江戸時代の庶民の暮らしぶりや、当時の世界観が良く出て居るのに対して、ちょっと違和感がありました。
この映画で一番気になったのは、やはり吹き替えです。
主要な人たちの声を、有名な俳優さんたちが行っていますが、端役の声をされている本職の声優さんってホントに上手いですね。
ところで、映画を観終わってから、いろいろな解説や感想が書かれた記事を読みました。
この時代に「おはしょり」があるのはおかしいと言うような着付けの事や、着物の色使い、櫛の位置がどうのこうのといった指摘がたくさんありました。
おそらく、杉浦日向子さんが生きていらっしゃったら、この映画の時代考証を、楽しく語られることでしょうね。
誰が書いた本の一節かは忘れましたが、「(作る側が)時代考証を気にして、テレビドラマを作るようになってから、テレビの時代劇が面白くなくなった」と、書いてありましたが、私も同感です。
なので、この映画はこれでいいのだと思っています。
「時代考証がいい加減だから、その映画(ドラマ)はダメだ」と言うことでは無く、映画を観た人たちが、観終わった後にその時代考証をネタにして話し合うのも、また楽しいのではないでしょうか(笑)
最後に・・・。
原作のタイトルが「百日紅」なので、この映画のタイトルもそうなんですが、「百日紅」の咲く頃から、次の年の「百日紅」の頃までの、一年間の話だと言うこと・・・ですか?
それとも原作に、(この映画には無い)百日紅のエピソードがあるのでしょうか?
原作を読んでみないとわからないですね・・・。
【キャスト(声)】
お栄 - 杏
葛飾北斎 - 松重豊
池田善次郎 - 濱田岳
歌川国直 - 高良健吾
こと - 美保純
お猶 - 清水詩音
岩窪初五郎 - 筒井道隆
小夜衣 - 麻生久美子
萬字堂 - 立川談春
吉弥 - 入野自由
茶屋の子供 - 矢島晶子
遣いの武士、放し鳥売り - 藤原啓治
【スタッフ】
原作 - 杉浦日向子
監督 - 原恵一
脚本 - 丸尾みほ
キャラクターデザイン - 板津匡覧
音楽 - 富貴晴美、辻陽
制作 - Production I.G
主題歌 - 椎名林檎 「最果てが見たい」
=5月25日追加=
eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part26)
Blog記事ランキングで、「百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~」が、「映画の部」の一位になりました。
たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。
最近のコメント