映画のパンフレット

【映画】な行 Feed

2016年2月 8日 (月)

信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)

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【解 説】

2014年10月から12月に放送されて人気を博した、石井あゆみの漫画を基にしたテレビドラマの劇場版。

戦国時代にタイムスリップした上に、自分と瓜二つであった織田信長の代わりを務めることになった高校生の運命を追う。

『ルパン三世』などの小栗旬、『大奥』などの柴咲コウ、『S -最後の警官-』シリーズなどの向井理、『ミロクローゼ』などの山田孝之ら、テレビドラマ版のメンバーが一堂に会する。
監督もテレビ版を手がけた松山博昭が続投した。
迫力満点の合戦シーンに加え、武将たちの絆や思惑が交錯する熱いドラマも必見。

【あらすじ】

戦国時代にタイムスリップした歴史が苦手な高校生サブロー(小栗旬)は、自分と顔が酷似した織田信長(小栗旬)と遭遇する。

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武将の座を投げ出したいと考えていた彼と入れ替わったサブローは、知らず知らずのうちに史実の信長と同じ道を突き進んでいく。

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安土城を築き上げ、妻・帰蝶(柴咲コウ)から慕われ、恒興(向井理)をはじめとする家臣からの信頼が厚いサブロー。

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明智光秀を名乗って生きる信長は、そんな彼に嫉妬し、憎しみを抱くように。

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やがて信長は、本能寺で帰蝶との結婚式を挙げるサブローを亡き者にしようとするが・・・・・・。

【感 想】

2月7日に映画館で観ましたが、日曜日と言うこともあって、結構たくさん入っていました。

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映画の方は、安土城が完成したところから話が始まります。
サブローがタイムスリップして、信長と入れ替わり、妻の帰蝶と池田恒興にはニセモノと知られながらも、織田家の当主として領地を広げていく・・・という、テレビドラマでの話を踏まえたものとして話が進んでいきます。映画の冒頭のところで、その辺のあらすじが、テレビで見た画像で、簡単に紹介されますが、あまりにも簡単すぎて、おそらくテレビドラマを見ていない人には、役柄や細かな人間関係がよくわからなかったのではないでしょうか?

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今回のメインは、「本能寺の変」から「山﨑の戦い」になるので、光秀と秀吉に焦点が当てられた演出になって居ます(この辺の流れを書いてしまうと、ネタバレしてしまうので、省略して話を進めます)が、「史実の通り」(と言う言葉が、何度も映画に登場します)に話が進んでいくはずなのに、結構アバウトな流れになっており、ツッコミどころはたくさんあります・・・、と言うような野暮なことは言わないでおきましょう(笑)
でも、最後まで退屈しないで、それなりに楽しめました。

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全体の流れとしては、コメディタッチで作られていますが、帰蝶役の柴咲コウさんと羽柴秀吉役の山田孝之さんが登場すると、コメディじゃなくなってしまうところが良いですね。
特に、柴咲コウさんのツンデレぶりがなかなか素敵で、これほど演技が上手だとは思いませんでした。 
余談ですが、次回のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の主役、井伊直虎を演じられるそうですが、今から楽しみです。

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話は、「史実の通り」に進んでいき、信長が本能寺で死に、光秀が山﨑の戦いで敗れ殺されてしまうので、小栗旬さんが演じている織田信長と明智光秀は死んでしまうことになりますが、ツッコまれることを恐れない、ユニークなストーリーに仕上がっていますので、本能寺の事件以降は面白く観ることが出来ました。
最後に、今回は、サブローと帰蝶の絡みが多くて、「ツネちゃん」こと池田恒興役の向井理さんの登場シーンが、イマイチ少なかったのが残念でした。

【キャスト】

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小栗旬      サブロー/織田信長/明智光秀        
柴咲コウ     帰蝶    
向井理      池田恒興    
山田孝之     羽柴秀吉            
藤ヶ谷太輔     前田利家        
水原希子     市
濱田岳          徳川家康
古田新太       松永弾正久秀
高嶋政宏       柴田勝家
でんでん        沢彦
勝矢             蜂須賀小六
阪田マサノブ     丹羽長秀
阿部進之介      佐々成政
北村匠海         森長可

【スタッフ】

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監督 - 松山博昭
原作 - 石井あゆみ『信長協奏曲』(小学館刊)
脚本 - 西田征史、岡田道尚、宇山佳祐
音楽 - ☆Taku Takahashi
主題歌-Mr.Children
製作 - 石原隆、久保雅一
エグゼクティブ・プロデューサー - 臼井裕詞
プロデューサー - 稲葉直人、村瀬健、古郡真也
メイク - 佐々木精一
床山 - 泉水貴光
結髪 - 島田紗妃
配給 - 東宝
上映時間 126分

=2月14日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part29)

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Blog記事ランキングで、「信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)」が、「映画の部」の一位になりました。

たくさんの方に見ていただき、ありがとうございます。

2013年6月20日 (木)

二流小説家 シリアリスト

【解 説】1001

原作は、「このミステリーがすごい!2012年版(海外編)第一位」、「週刊文春ミステリーベスト10 2011年(海外部門)第一位」、「ミステリが読みたい!2012年版(海外篇)第一位」という、海外ミステリー部門として初の三冠達成に輝いた、デイヴィッド・ゴードン著「二流小説家」。
ミステリー史に輝く数々の名作──「羊たちの沈黙」「ミザリー」「ボーン・コレクター」「ダ・ヴィンチ・コード」・・・といった名だたる作品が成し得なかった三冠を獲得した話題作だ。(本の感想はこちらから→「二流小説家」)
さらに、デビュー作であるにもかかわらず、ミステリー&サスペンス小説の賞としてもっとも歴史と権威のあるアメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞ノミネートも手にした未曾有の傑作。

主人公は、売れない小説家・赤羽一兵。
連続殺人犯の死刑囚・呉井大悟から「告白本を書いて欲しい」という執筆依頼が舞い込むところから物語は始まる。

赤羽一兵を演じるのは、上川隆也。
1003_2 長年、舞台で培った確かな演技力のある俳優であり、近年は「遺留捜査」「火車」など数多くのドラマの主演を務める実力派だ。
そんな彼にとって、映画『二流小説家 シリアリスト』は満を持しての映画初主演作となる。
一方、呉井大悟を演じるのは武田真治。
何人もの女性の命を奪った殺人犯でありながらも、カリスマ的存在感と人を惹き付けてやまない魅力を呉井に吹き込んだ。
ミステリーの面白さはもちろん、上川隆也VS武田真治、この二人の演技対決も見どころと言えるだろう。
また、被害者遺族・千夏役に片瀬那奈、赤羽の捜査になにかと口出しする姪・亜衣役に小池里奈、呉井の弁護士・礼子役に高橋惠子、その助手・恵美役に平山あや、12年前と現在の捜査に絡む刑事・町田役に伊武雅刀といった豪華キャストたちが脇を固め、赤羽を取り囲む人物すべてが容疑者なのか?と、疑わずにはいられない深みのある演技をみせている。

【ストーリー】

赤羽一兵(上川隆也)、45歳。職業は小説家。
とは言っても、彼自身の名前で書いた本は一冊もなく、唯一10年前に書いた若い女性向けのライトノベル「恋するヴァンパイア」でさえも、男の名前では売れないという理由で、母の旧姓と写真を借りて出版している。

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現在は、アメリカ出張中の兄の家を間借りしながら、「男のゴールデン街」という雑誌にエロ小説を寄稿して生計を立てている、しがない中年の小説家だ。

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そんな彼の元にある日、東京拘置所にいる死刑囚・呉井大悟から手紙が届く。
呉井は自称・写真家ではあるが、モデル募集と称して集めた4人の女性を殺害した罪で、死刑判決が出ている男だ。
シリアル・フォト・キラーとして世間を賑わせた彼が、告白本を赤羽に執筆してほしいと言ってきた。何故・・・・・・。

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「一流になりたくないの?」という姪の亜衣(小池里奈)の言葉に背中を押され、呉井に会うために弁護士の前田礼子(高橋惠子)を訪ねる。

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礼子からは、死刑執行後であれば自由に出版していい、それまでは他言無用と冷たくあしらわれる。

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そして、助手の鳥谷恵美(平山あや)の案内で呉井と面会するが、赤羽の目の前に現れた呉井は、連続殺人事件を起こした死刑囚とは思えない、明るい感じの男だった。
呉井は、自分を慕っている熱狂的な信者である3名の女性を取材して、彼女たちと呉井との愛の物語、官能小説を書くことが告白本の出版の条件だと伝える。
呉井の出してきた条件に迷いながらも、「この告白本を書けば一流の小説家になれるかもしれない・・・」と、欲望に駆られた赤羽は、呉井大悟のためだけの官能小説の執筆を始める。

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呉井の信者を取材しては官能小説を書き、それと引き換えに呉井の過去を聞き出す赤羽。
事件は3人目の女性を訪ねたときに起きた──。頭部のない死体、そして死体に添えられた赤いバラの花。それは12年前に呉井が起こした事件そのものであり、世間は「呉井大悟の再来」と騒ぎ立てる。
刑務所にいる呉井に、今回の事件の犯行は不可能だ。ということは、呉井ではない何者かの犯行なのか?

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そして、警視庁捜査一課の警部・町田(伊武雅刀)は、新たな連続殺人事件の容疑者として、今回の第一発見者である赤羽にも疑いをかける。

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身の潔白を証明するために赤羽は、12年前の被害者のひとり、長谷川小春の妹・千夏(片瀬那奈)と共に12年前の事件を調べ始める。 

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呉井は、本当に殺人犯なのか・・・?
そもそも赤羽は、本当に事件とは無関係なのか・・・?

【感 想】

全くの予備知識無しで、映画館に行きました。
デイヴィッド・ゴードンの原作・「二流小説家」が好評だったと言うことは知っていましたが、翻訳物なので、もちろん読んでいません。
ポスターも、映画館に到着して初めて見ました。誰がデザインしたのかは知りませんが、映画を観る意欲をかき立てないポスターです。それとも私に見る目が無いのでしょうか・・・?

と言うことで、観る前からテンションがぐーんと下がった状態で、映画館に入りました。
でも、平日の朝一にしたら、結構な入りです。これは上川隆也の人気で入っているのでしょうか?それとも、武田真治でしょうか・・・?

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真犯人がわからないようにするためだと思いますが、犯人以外の登場人物も犯人らしく見せるために、いろいろ工夫されていましたが、 ちょっと無理のある設定もありました。
また、殺害についても、短い時間の間に、頭部を切断するという作業が手際よく出来るのか・・・と言った疑問点をはじめ、いくつか気になったところもありました。

117 主人公が、自分から危険なところに飛び込んでいったり、突然大きな音を出して観客を驚かすというのはB級のホラー映画に良くあるパターンですし、ストーリーにも突っ込みどころはたくさんありました。それでも、上映時間が115分の映画でしたが、退屈しないで最後まで観ることが出来ました。

それにしても、その人物が真犯人と断定されるまでは、紳士・淑女らしい上品な言葉遣いや所作をして居たのに、犯人と自ら認めてからは、一転して人が変わったように、口汚い言葉遣いや下品な態度を取ると言うのも、テレビのサスペンスドラマのようですね。

でも、武田真治が良いです。上手いです。
留置所での、武田真治と上川隆也の面会シーンは、圧巻でした。、ガラス越しの二人の掛け合いは、見事です。ちょっと魅入ってしまいました。
また、上川隆也の朴訥(ぼくとつ)としたような台詞回しが、あまり好きでは無かったのですが、このシーンでは、二人の立場をよく表しているような感じで、とても効果的でした。

この二人の掛け合いで、映画がぐーんと締まっている感じがしました。何度か登場する、面会室のシーンだけでも、観る価値はありました。映画を観終わったすぐの印象は、大変良かったです。

【キャスト】1002

赤羽一兵 - 上川隆也
呉井大悟 - 武田真治
長谷川千夏 - 片瀬那奈
鳥谷恵美 - 平山あや
小林亜衣 - 小池里奈
今野純子 - 黒谷友香
小林郁子 - 賀来千香子
後藤猛 - でんでん
レポーター - 長嶋一茂
鏑木裕子 - 戸田恵子
太田聖道 - 中村嘉葎雄
工藤三重子 - 佐々木すみ江
三島忠志 - 本田博太郎
町田邦夫 - 伊武雅刀
前田礼子 - 高橋惠子

【スタッフ】

監督 - 猪崎宣昭
脚本 - 尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭
原作 - デイヴィッド・ゴードン 『二流小説家』(訳:青木千鶴 / 早川書房)
音楽 - 川井憲次
主題歌 - 泉沙世子 「手紙」(キングレコード)
撮影 - 高田陽幸

=6月22日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part11)

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Blog記事ランキングで、「二流小説家 シリアリスト」が、「映画の部」の一位になりました。

UPして、二日で一位です。早いです。有り難うございます。

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また、「映画の部」の「ブログランキング」でも一位になりました。これは、この一週間の「映画の記事」のカウント集計です。

たくさんの方にお越しいただき、感謝です。

2012年11月13日 (火)

のぼうの城

【解 説】 015

第29回城戸賞を受賞した和田竜のオリジナル脚本を、『ゼロの焦点』の犬童一心と、『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』の樋口真嗣が共同でメガホンをとり、映像化した。

舞台は武蔵国忍城(埼玉県行田市)。
天下統一を目指す豊臣秀吉方2万人の大軍を指揮した石田三成の水攻めに、わずか500人の兵で対抗する。

“のぼう様(でくのぼうの意)”と領民からも呼ばれたヒロイックな主人公を野村萬斎が熱演するほか、佐藤浩市、山口智充、成宮寛貴らが城を守る侍大将を演じる。

底知れぬ人気で人心を掌握した主人公の魅力や、豊臣・石田軍による水攻めシーンなど、見どころ満載の歴史大作。(本の感想はこちらから→「のぼうの城」和田竜

【あらすじ】

戦国末期。
天下統一を目前に控えた豊臣秀吉(市村正親)は、最後の敵、北条家に大軍を投じていた。周囲を湖で囲まれ“浮き城”の異名を持ち、人々が平穏に暮らす“忍城”に対し、秀吉は2万の軍勢で落とすよう、寵愛の家臣・石田三成(上地雄輔)に命じる。

    002

忍城のの侍たちに緊張が走る中、農民や子供たちと楽しそうに戯れる侍、成田長親(野村萬斎)がいた。
城主・成田氏長(西村雅彦)の従弟で、智も仁も勇もないが人気だけはある不思議な男。
領民からは“でくのぼう”を意味する“のぼう様”の愛称で呼ばれ、皆に慕われていた。

    003

そんな長親に密かに想いを寄せる城主の娘、甲斐姫(榮倉奈々)。長親の幼馴染で歴戦の強者、丹波(佐藤浩市)。その丹波をライバル視する豪傑・豪腕の和泉(山口智充)。戦の経験は無いが“軍略の天才”を自称する靭負(成宮寛貴)。

    009

緊迫する仲間たちを前に、長親は呑気なことを言って皆を唖然とさせるが、ある日、天下軍が遂に忍城を包囲する。

成田氏長は「秀吉軍とは一戦も交えずに速やかに開城せよ」との言葉を残し、長親に城を任せ、既に小田原に向かっていた。

    006

忍城の500人の軍勢では2万の大軍相手に戦っても勝ち目はない。やむなく開城することを決意する長親たちだったが、天下軍の威を借り、なめきった態度を取る長束正家(平岳大)と対面した長親は、一転戦うことを決意。

    005

長親のその強い決意に導かれるように、丹波をはじめとする武将たちや普段から長親を慕う百姓たちも立ち上がる。

    008

それは、戦によって名を挙げることに闘志を燃やす三成の思う壺であったが、秀吉に三成を支えるよう命を受けた盟友・大谷吉継(山田孝之)だけは、忍城軍のあり得ない士気の高さに警戒心を抱く。

    010

忍城軍は襲いくる大軍を前に、農民や老兵までが侍に劣らぬ活躍を見せ、地の利を生かし、騎馬鉄砲や火攻めなど多彩な戦術で天下軍を退けていく。

    011

想像を超える忍城軍の奮闘ぶりに三成は、城の周辺に巨大な人工の堤を築き、それを決壊させる“水攻め”を決断。

    012

濁流が流れ出し、領民たちは高台にある忍城本丸に必死に逃げ込む。このままでは本丸が沈むのも時間の問題。

だが、忍城軍が絶望に包まれる中、長親はただ一人で武器も持たずに小舟で三成が築いた堤へと向かっていくのだった・・・・・・。

   016

【感 想】

144分という、結構長い映画でしたが、途中で退屈することも無く楽しめました。
忍城への水攻めのシーン(最初に出てきた秀吉の水攻めのシーンは、イマイチだった事もあって)は、思ったよりも迫力がありました。コワイですね・・・。やはり家屋が水に呑み込まれ、押し流される場面を観ると、あの3.11の津波を思い出してしまいます。

それにしても、野村萬斎はスゴイです。
田畑が一面湖のようになった所へ船を漕ぎ出し、小舟の上で田楽踊りをして居る所は、息を飲むように観ていました。小舟から落ちそうになりバランスを崩しながら(それも演技か・・・)も見事に踊っているのは、さすが名人芸です。主演の野村萬斎を観に行くだけでも、映画館に足を運ぶ価値はありそうです。

001しかも、その振り付けから歌詞まで、すべて野村萬斎が自身で作り上げたというから恐れ入ります。
船上での「のぼう様」の田楽踊りと、それに引きつけられたかのように石田陣営の足軽や農民たちが踊りだすシーンは圧巻でしたし、その「のぼう様」を鉄砲で狙わせている石田三成と大谷吉継の思いが交錯しているところは、とても見応えがありました。
また、正木丹波守利英を演じている佐藤浩市は、さすがに上手いですね。 

原作を読んでいるときに、劇画を読んでいるようだと感じたのは、会話文が軽いからなのですが、この映画を観ていても、時代劇風の言葉と、今、普通に話しているような、しかもぶっきらぼうな感じの言葉が混ざって使われているので、少し違和感がありました。

この映画は、秀吉が水攻めをしているシーンから始まります。「備中高松城の戦い」でのことだと思うのですが、何の説明もありません。しかもこのシーンは、水が流れていく様子が、箱庭を観ているようで、少し迫力に欠けました。
また、北条攻めの際に、秀吉が三成に大軍を預け、館林城と忍城の二つの支城を攻め落としてくるように指示するところで、「いつまでも佐吉(三成)を、三献茶の男と呼ばせてはならぬ・・・」言うセリフが入りますが、映画を観ている者にとっては、何を言っているのか分からない人も多かったのでは無いでしょうか。
このように、少し気になるところをあげていけば、キリが無いくらいにたくさん出てくますが、やはり榮倉奈々扮する甲斐姫がまったく魅力の無い女性になっているし、正木丹波守利英が、馬上で一騎打ちをするシーンや、山口智充の柴崎和泉守が、一人でたくさんの足軽を押し返すシーンなどは、まるで劇画のワンシーンを見ているかのようで、少しがっかりしました。

また、味方の武士や農民たちも多数戦死しているのに、最初の一戦に勝利したと言うだけで、城内で小躍りしている様子は、どうも納得がいきませんし、油をかけて敵の足軽を火だるまにし、爆発を起こしている場面は、普通に考えれば、凄まじい惨状のはずなのに、双方が平然としているのは、現実的ではありません。ゲーム感覚で合戦をやっているようで、生死を賭けて戦っている、悲壮感も何もありませんでした。

忍城よりも先に北条家の小田原城が落ちてしまい、戦いが終わって開城となってみれば、この忍城での攻城戦は、田畑をめちゃくちゃにされた上に、たくさんの人を(しかも非戦闘員の農民たちまでも)巻き添えにして殺してしまったことを考えると、「のぼう様」こと成田長親に何の策も無く、短慮な行動が引き起こした無意味な戦いだったということが分かります。

この映画の一番ダメなところは、時間の経過が分からない事です。
秀吉の高松城の水攻めから始まり、突然北条討伐の軍議になり、石田三成が軍勢2万人を引きつれ、忍城を取り囲みます。
最初の攻城戦で忍城を攻めあぐんだので、城の周りに堤を作り水攻めにし、秀吉から様子を見に来ると言う知らせが来たら、堤が壊されて水が引いていく・・・。水が引き終わり、さあ合戦の再開だと言うところで、(約3ヶ月の籠城戦のすえに)小田原城が落ちたとの知らせが来て、合戦が終了。えっ、いつの間に3ヶ月もたったの・・・と言う感じでした。
小舟の上で鉄砲に撃たれた「のぼう様」は、開城時にはすでに元気になっているという状態で、面白い場面だけが次々出てくるような映画でした。

    013

最後に、総大将の石田三成が大谷吉継、長束正家と共に、開城された忍城に入っていきますが、大谷吉継、長束正家の堂々とした歩き方に較べ、上地雄輔扮する三成の歩き方は、学芸会で胸を張って行進している小学生のようで、思わず笑ってしまいました。

オマケです。
この映画は、日本語字幕付きで観ました。これから観られる方は、日本語字幕付きをオススメします。
人物の名前や地名などが出てくるので、話し言葉だけでは理解しがたい単語がでてくるのではないかと思い、字幕付きを選びました。
「三献茶の男」という言葉が分かったのも、字幕のおかげです。
ちなみに、「三献茶」というのは、三成と秀吉の出会いで語られる、三成の有名な逸話です。

【スタッフ】

014監督 犬童一心、樋口真嗣 
特撮監督 尾上克郎 
脚本 和田竜   
音楽 上野耕路 
主題歌 エレファントカシマシ 
VFXスーパーバイザー 辻野南、佐藤敦紀 
VFXプロデューサー 大屋哲男 

【キャスト】

成田長親・・・野村萬斎 
甲斐姫・・・榮倉奈々 
酒巻靭負・・・成宮寛貴 
柴崎和泉守・・・山口智充 
石田三成・・・上地雄輔 
大谷吉継・・・山田孝之 
長束正家・・・平岳大 
成田氏長・・・西村雅彦 
成田泰季・・・平泉成 
和尚・・・夏八木勲 
北条氏政・・・中原丈雄 
珠・・・鈴木保奈美 
たへえ・・・前田吟 
かぞう・・・中尾明慶 
ちよ・・・尾野真千子 
ちどり・・・芦田愛菜 
豊臣秀吉・・・市村正親 
正木丹波守利英・・・佐藤浩市 

=11月19日追加=

eoblog 「みんなのブログ 映画」で・・・(Part5)

Blog記事ランキングで、「のぼうの城」が、「映画の部」で1位になりました。
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「映画の部」での1位は久しぶりです。たくさんの方にお越し戴き、感謝です。

2012年7月15日 (日)

ナイル殺人事件

【解 説】  02

ナイル河をさかのぼる豪華遊覧船で起きた連続殺人事件を描くミステリー。
原作はアガサ・クリスティのミステリ『ナイルに死す』。

美貌と聡明さを兼ね備えた上、つい最近莫大な遺産を相続したリネット・リッジウェイは、親友ジャクリーンの婚約者と突然婚約をし、人目を避けてエジプトへハネムーンに旅立った。
しかし豪華客船カルナーク号には、彼女に何らかの利害関係や遺恨、ないし敵意を抱いている者たちが勢揃いしていた……。

壮大なエジプトの景色を背景に、物語中バラバラになっていた様々な謎が最後には全て一本の線で結ばれるという、クリスティ推理劇の醍醐味が存分に堪能出来る推理映画の傑作。

【あらすじ】

つい最近莫大な遺産を相続した美貌と聡明さを兼ねそなえたアメリカ娘のリネット(ロイス・チャイルズ)は、親友ジヤクリーン(ミア・ファロー)から失業中の婚約者サイモン(サイモン・マッコーキンデール)を助けで欲しいという相談をうけ、早速サイモンと会った。

リネットがこのサイモンと突然婚約を発表したのはそれから間もなくだった。
しかし、この2人の結婚は思わぬ波紋をまきちらすことになる。
豪華客船カルナーク号でエジプトヘハネムーンに旅立った2人にその影響は徐々に現れはじめた。
なんと船の中にはジャクリーンが乗っていたのだ。     

さらにリネットの叔父で財産管理を委ねていたアンドリュー(ジョージ・ケネディ)、リネットを自作の小説のモデルにしてからかっている作家のサロメ(アンジェラ・ランズベリー)、そしてその娘でリネットに劣等感をもつロザリー(オリヴィア・ハッセー)、リネットの真珠のネックレスに目をつけているバン・スカイラー(ベティ・デイヴィス)、リネットにいかさま師呼ばわりされた医師ベスナー(ジャック・ウォーデン)、リネットに結婚を破談されたと思い込んでいるメイドのルイーズ(ジェーン・バーキン)、父親がリネットの祖父に破産させられた過去を持つ看護婦のミス・バウアーズ(マギー・スミス)、ブルジョア階級を軽蔑している学生ファーガスソ(ジョン・フィンチ)らが、それぞれの思惑を秘めて乗っていた。

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偶然、この船に乗り合わせていた私立探偵ポアロ(ピーター・ユスチノフ)は、早速リネットにジャクリーンを遠ざけてほしいと頼まれるが、ポアロは丁重に断わるのだった。
ある朝、リネットが死体となって発見された。
凶器はピストルでの血文字が残され、証拠はジャクリーンにことごとく不利だったが、彼女にはアリバイがあった。

ポアロは旧友レイス大佐(デイヴィッド・ニーヴン)の協力を得て捜査を開始した。
多くの人間が動機をもつており、それぞれがピストルを手に入れリネットを撃ち殺すことができる状況だった。
そして、ポアロの推理が真相に迫り、重大な事実と鍵が判明してきた頃、ルイーズが殺され、続いてサロメも殺された。
ポアロは乗客を一室に集めこの殺人事件の謎をみなの前で解明していった。

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【感 想】

TSUTAYAのDVDレンタルを覗きに行ったら、ふと目にとまったので思わず借りてきました。
原作を読んだのは学生の頃でしたが、映画が公開された時には就職もしていたので、映画館に足を運ぶことは出来ませんでした。
それにしても豪華なキャストです。顔なじみの俳優がたくさん出ているのもワクワクします。

ポワロ役の俳優は、「オリエント急行殺人事件」で好演して居たアルバート・フィニーがとても印象に残っているので、大柄のピーター・ユスティノフはどうなんだろうと思いながら見ましたが、なかなか似合っていました。

映画の方は、ナイル河をさかのぼる豪華客船と、ピラミッドなどのエジプトの風景が何とも言えず素敵でした。のんびりとナイル河クルーズも良いなぁ・・・、一度ピラミッドに登ってみたいなぁ・・・などと思いながら見ていました。
原作を読んでいるので、結末は分かっているのですが、どのように伏線を張っているのか、興味を持ちながら見ていましたが、それよりも、豪華な俳優陣の名演技と、エジプトの名所の風景にうっとり観入ってしまいました。
そういう意味では楽しめた映画でした。 

【キャスト(役名)】 04

ピーター・ユスティノフ (Hercule Poirot)
ジェーン・バーキン (Louise Bourget)
ロイス・チャイルズ (Linnet Ridgeway)
ベティ・デイヴィス (Mrs. Van Schuyler)
ミア・ファロー (Jacqueline de Bellefort)
ジョン・フィンチ (Mr. Ferguson)
ジョージ・ケネディ (Andrew Pennington)
アンジェラ・ランズベリー (Mrs. Salome Otterbourne)
サイモン・マッコーキンデル (Simon Doyle)
デイヴィッド・ニーヴン (Colonel Race)
マギー・スミス (Miss Bowers)
ジャック・ウォーデン (Dr. Bessner)

【スタッフ】

監督: John Guillermin ジョン・ギラーミン
原作: Agatha Christie アガサ・クリスティ
脚本: Anthony Shaffer アンソニー・シェーファー
撮影: Jack Cardiff ジャック・カーディフ
音楽: Nino Rota ニーノ・ロータ
美術: Peter Murton ピーター・マートン
衣装(デザイン): Anthony Powell アンソニー・パウエル

2011年6月27日 (月)

ノルウェイの森

この映画の原作を読んだのは、1990年頃だから、もう20年以上も前になります。
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ある人から勧められて読んだのですが、主人公のワタナベに感情移入出来なかったこともあって、読後感はよくありませんでした。
でも周辺の人物は、彼らの背景が丁寧に書かれていましたので、結構楽しめました。
とりわけ、小林緑やレイコさんは、とても魅力的でしたし、永沢さんや突撃隊はユニークな人物だなと思っていました。

【解 説】Nnm_ma1_large_2

1987年に刊行された村上春樹の同名ベストセラー小説を「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」のトラン・アン・ユン監督が映画化。

自殺した親友の恋人と、大学の同窓生との間で揺れ動く青年の姿を描く。

出演は「誰かが私にキスをした」の松山ケンイチ、「ナイト・トーキョー・デイ」の菊地凛子、「おにいちゃんのハナビ」の高良健吾、「君へのメロディー」の霧島れいかなど。

【あらすじ】

008 高校時代に親友・キズキ(高良健吾)を自殺で喪ったワタナベ(松山ケンイチ)は、誰も知っている人間がいないところで新しい生活を始めるために東京の大学に行く。
そこでワタナベは読み漁っていた本の余白と同じような空っぽな日々を送るが、ある日偶然直子(菊地凛子)と再会する。直子はキズキの恋人だった。
キズキはワタナベにとって唯一の友だったので、高校時代にはワタナベと直子も一緒によく遊んでいた。

それからワタナベと直子はお互いに大切なものを喪った者同士付き合いを深めていき、ワタナベは透き通った目を持つ直子に魅かれていく。

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そして、直子の二十歳の誕生日に二人は夜を共にする。
ところが、ワタナベの想いが深まれば深まるほど直子の方の喪失感はより深く大きなものになっていき、直子は結局京都の療養所に入院することになる。

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そんな折にワタナベは大学で、春を迎えて世界に飛び出したばかりの小動物のように瑞々しい女の子・緑(水原希子)と出会う。
直子と会いたくても会えないワタナベは、直子とは対照的な緑と会うようになっていき、あるとき緑の自宅での食事に招かれて唇を重ねる。それはやさしく穏やかで、何処へいくあてもない口づけだった。

その後、直子から手紙が届き、ワタナベは直子に会いに行けることになる。そこで、ワタナベは直子の部屋の同居人・レイコ(霧島れいか)のギターによるビートルズの「ノルウェイの森」を聴くことになる。それは、直子が大好きな曲だった。

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「この曲を聴くと深い森の中で迷っているような気分になるの。 どうしてだかわからないけど。一人ぼっちで、寒くて、暗くて、誰も助けに来てくれなくて…。 でも、本当に一番好きな曲なのよ。」
「ノルウェイの森」を聴くといつも泣いてしまう直子は、「ワタナベがいれば大丈夫」と言っていたのだが…。

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【感 想】

小説に、ほぼ忠実に作られています。
豊かな自然に囲まれた中で、ワタナベと直子の二人の時間がゆっくり流れていき、とても素敵でした。映像の良さが十分楽しめる映画でした。
この映画は、映画館で観ると、もっと良かったのかも知れません。
やはり映画は映画館に行かないとダメですね。

でも、話がワタナベと直子のことが中心になってしまい、きれいな風景もゆったりと撮られているので、周辺の登場人物はちょっといい加減な描き方になっています。
小説では、素敵な感じの女性だと思って居た小林緑は、もひとつイヤな女だし、突撃隊は、何が何だかわからないし、矢沢さんは自己中の男だし、ハツミさんは影が薄いし、レイコさんに至っては、ヘンなおばさんです。

Nnm_ma6_large 小林緑がワタナベに惹かれていく要因として、ワタナベが、彼女の父の看病を献身的にする場面が小説にはあるのですが、そこが全くなかったので、わかりにくくなっています。
映画は、三人の高校時代の頃から始まり、ワタナベの視点以外のシーンもあったので、小説のように回想では無いのかと思っていました。ところが、ハツミさんのその後の事が、ワタナベの声のナレーションで入っていたので、この映画も回想だとわかりましたが、ちょっと変な感じでした。

それでも、周辺の人たちの背景を省略し、ワタナベと直子に焦点が当たっているため、ワタナベの気持ちが揺れ動いているのがよくわかりました。そういう意味では、小説を読んでいない人には、面白い映画だったのでは無いでしょうか?

松山ケンイチの演技は、イマイチしっくり来ませんでした。菊地凛子の高校生時代は、ちょっと無理がありましたが、良い感じです。また、小林緑役の水原希子は、原作のイメージとは違っていましたが、ちょっと小悪魔的なところもあり、良かったです。

【キャスト 】
ワタナベ - 松山ケンイチNnm_ma2_large 
直子 - 菊地凛子
小林緑 - 水原希子
キズキ - 高良健吾
永沢さん - 玉山鉄二
レイコさん - 霧島れいか
突撃隊 - 柄本時生
ハツミ さん- 初音映莉子
大学教授 - 糸井重里
レコード店店長 - 細野晴臣
阿美寮門番 - 高橋幸宏

【スタッフ 】
原作 - 村上春樹『ノルウェイの森』(講談社刊)
監督・脚本 - トラン・アン・ユン

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